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「2022新焼酎、どれが人気?どれがおいしい?」鹿児島の酒屋で、今年の新酒について聞いてきました!

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「2022新焼酎、どれが人気?どれがおいしい?」鹿児島の酒屋で、今年の新酒について聞いてきました!

Text & Photo : Marina Takajo(SHOCHU NEXT)

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焼酎、特に芋焼酎に日本酒と同じく“新酒(新焼酎)’’があることが、じわじわと定着してきましたよね。芋の収穫時期を終えた毎年9月あたりから冬にかけて、芋焼酎の新酒が登場するのを心待ちにする人も増えてきました。今年はかなりおいしい銘柄が揃っている! 焼酎好きたちのそんな噂を聞いたら、いてもたってもいれません。芋焼酎の本場・鹿児島市内で、地元に愛される2軒の酒屋へ出かけてきました。


1軒目は、老舗酒店による新店舗「コセド酒店 中央駅店」

焼酎の豊富な品揃えと深い知識に加え、「酒屋が選ぶ焼酎大賞」の実行委員を務めるなど、焼酎の普及活動の中心的な存在でもある「コセド酒店」。本店、市街中心部にある天文館店に引き続いて、2022年6月に、新幹線最南端の駅・鹿児島中央駅近くに新店をオープンしました。昔からある商店街の中に誕生したガラス張りの店。コンパクトながら、棚の中をちらっと見るだけでも欲しい焼酎ばかり。おお! と唸りたくなるさすがの品揃えです。さらに売り場の奥にはカウンターが設置されていて、店内外で焼酎メインの角打ちが楽しめます。立地もあって旅行者にもうれしい一店です。専務取締役の米盛茂樹さんにお話を伺います。

中央駅店は女性スタッフが中心で明るく元気な挨拶と接客がうれしい! 女性1人でも気軽に入れる雰囲気。

−さっそくですが、今年の新酒の売れ行きはいかがですか?

「まだ全ての新酒が出揃ったわけではありませんが、今年はここ2年ほどのコロナ禍の影響をはね返すかのように、新酒の売れ行きがとてもスピーディな印象です。コロナ禍前の頃の同月の売り上げを比較してみても、焼酎自体の売り上げは全体的に好調。じわじわと焼酎の人気が高まりつつあるのを感じています!

当店では9月半ばに小牧醸造〈2022年新酒 伊勢吉どん〉を皮切りに、新酒の発売がスタートしました。その後各蔵元から入荷していますが、新酒はもともと数が少ないこともあって、11月下旬の時点ですでに売り切れ続出という状況でした。購買層も老若男女さまざま。お店に来られたタイミングで、店内にあった新酒を手に取ってくださる方や、角打ちでおすすめして初めて新酒を飲み、そのままお買い上げいただいた若い方もいましたね。コアな焼酎ファンの方だけでなく、新酒の存在が徐々にみなさんの間で知れ渡ってきているのかもしれません

−−新酒のおすすめの飲み方はなんでしょう?

「やっぱり、新酒はお湯割りで楽しむのがベストかと思います。蒸留したての焼酎を寝かせずに瓶詰めしていますから、新酒独特のガス感や油分、芋くささが感じられる銘柄が多いんです。焼酎の中の油分量が多い場合、冷水ではうまく混ざらないこともある。ですからお湯割りにして、じっくり香りを開かせるような楽しみ方がいいでしょう。もしくは、ロックで楽しむのも手軽でいいかもしれません」

コセド酒店 中央駅店」による、おすすめの新酒3本

知覧醸造〈知覧Tea酎 限定荒濾過〉

「知覧醸造は、お茶農家としての顔も持つ焼酎蔵。お茶のブレンドの知識やノウハウをそのまま焼酎づくりに生かしています。〈知覧Tea酎 限定荒濾過〉は、新酒がもつ独特の油分とガスの感じがうまくお茶の風味と見事に融合した1本。スタンダード版の〈Tea酎〉の醸すお茶の爽やかさや、甘やかさとは一味違い、ほうじ茶のような香ばしさが感じられるのが面白いですね。1杯の満足度がとても高い仕上がりとなっています

知覧醸造 〈知覧Tea酎荒濾過 2022ver.〉
芋焼酎
度数 25度
原材料 さつまいも、緑茶、米麹
蒸留 常圧
容量 500/1800ml
蔵元 知覧醸造 WEB→
所在地 鹿児島県南九州市知覧

西酒造〈初蒸無濾過 吉兆宝山〉

「12月入荷分でいうと、西酒造の〈初蒸無濾過 吉兆宝山〉の味わいはとてもいいですね。西酒造のつくるお酒はどれも酒質設計が緻密に行われ、再現性のあるつくりを大切にしています。新酒独特のガス感や油分の風味が出ることも計算した上で、風味を重ねて酒質を整えているのがすばらしい。すでに代表銘柄の宝山シリーズは飲み慣れている方も多いかもしれませんが、そういう方にこそ新酒を改めて飲んでいただきたいです」

西酒造 〈初蒸無濾過 吉兆宝山
芋焼酎
度数 25度
原材料 さつまいも、米麹
蒸留 常圧
容量 720/1800ml
蔵元 西酒造 WEB→
所在地 鹿児島県日置市

田村合名会社〈二〇二二醸 潮風蔵〉

「番外編ということでご紹介しますが、こちらは田村合名会社とコセド酒店が一緒に取り組んだ1本で、今年は当店のみの取り扱いです(来年以降は、他店でも取扱予定)。この焼酎はその年の仕込みの中で蔵元が一番良いと判断した蒸留の焼酎を瓶詰めする形をとりました。今年は、創業当時からつくり続けている銘柄〈薩摩乃薫〉が選ばれています。山川産のコガネセンガンと白麹を使い、伝統的な和甕仕込みでつくった、ほっこりした味わいが特徴です」

田村合名会社 〈二〇二二醸 潮風蔵〉
芋焼酎
度数 25度
原材料 さつまいも、米麹
蒸留 常圧
容量 720/1800ml
蔵元 田村合名会社 WEB→
所在地 鹿児島県指宿市山川
コセド酒店 中央駅店
住所 鹿児島県鹿児島市中央町23-21 アエールタワー 1F
営業 10:00~19:00(角打ちスペースは14:00~)
休日 第2・4月曜定休
WEB http://kosedosaketen.com/

今なら新酒の各銘柄は、角打ちでも楽しめるそう!これからの寒い季節、ふらっと立ち寄ってお湯割りの焼酎で体を温めるのもいいですね。旅行のお土産に焼酎を買いたい時にもおすすめ。県外の方にも、鹿児島観光の際にはぜひ立ち寄ってほしいお店です! 

2軒目は、ペアリングの相談が頼もしい「地酒とワイン たにもと屋」

代々続く酒屋を、3代目の谷元鉄郎さんが切り盛りする「地酒とワイン たにもと屋」。谷元さんはソムリエ資格保持者で、店内には地酒=焼酎のほか自然派ワインも数多く揃います。特に焼酎は、鹿児島県内の焼酎蔵に足繁く通って、作り手の思いに共感できる蔵元のみをセレクト。蔵元の数を厳選している分、レギュラー銘柄からプレミアムな銘柄まで揃うのは大きな魅力です。それぞれの蔵の“つくり”に思いを馳せることができます。店内には輸入食材や調味料などもあり、谷元さんが、日々の食事とのペアリングにも丁寧に相談に乗ってくれるのもうれしい! 長く通い続ける地元のお客さんが多いというのもうなずけます。

「蔵元に代わって作り手の思いをお客さんに届けることが酒屋の大切な役割。本当においしい焼酎を知って、季節ごとの焼酎の味わいを楽しむ人を1人でも増やしたい」と谷元さん。

−−−今年の新酒、いかがですか?

「今年はおかげさまで、とても売れ行きがいいですよ! 新酒は、現時点で売り切れのものもかなり多いですね。30代~40代の方を中心に、20代から80代の女性まで、本当に多くの方に手にとっていただきました。

そもそもの話なのですが、“ガス感や芋くささこそ新酒らしさだ!”と考える蔵元、酒屋、お客さんが鹿児島にはとても多い印象です。でも、これはわたし個人の考えですが、そういったオフフレーバー(本来その食品・飲料が持つべき風味とは異なるにおい・味のこと)的な要素を果たして消費者に届ける必要があるのか? と以前から疑問を持っていました。確かにガス感などは“新酒ならでは”かもしれない。ただ、それがおいしさにつながっているかと言われるとどうなのか? と。

今年は、そういう思いを超えてきた新酒を仕入れることができました。だからある意味、“新酒’’らしくはないものかもしれませんが、自信を持ってお薦めできますよ! 割らずにストレートで飲んでも、おいしい新酒もある。酒屋としてそのことを多くの人に知ってほしいと考えています。

−−−芋焼酎ファンにここまで“新酒”が定着したのはどうしてなのでしょう?

「理由はさまざまでしょうがが、その時季にしか飲めない限定品であること、そして新酒を飲めばその年の焼酎の出来を想像できるから、だと思います。焼酎は毎年、味が違います。その年の新酒にブレンドを重ねて翌年以降のレギュラー商品が出来上がっていくことを考えると、新酒の仕上がりは、蔵の味を決めるとても重要なファクター。焼酎を選ぶ指標のひとつになるのです。日本酒同様、焼酎にも旬があることを感じてほしいですし、新酒は味わいがどんどん変化するのでそれも楽しんでほしいです。とはいえ、自分で選ぶのは最初はなかなか難しいと思うので、聞いてもらえたらいくらでもご説明します。ぜひお気軽に!」

地酒とワイン たにもと屋」による、おすすめ新酒3本

八千代伝酒造〈2022新焼酎 収穫する者達 Harvester黒〉

「焼酎の原料である米や芋を自社で育て焼酎をつくる八千代伝酒造。『当日収穫・当日仕込み』をモットーに、芋を収穫したその日に焼酎の仕込みに入るのは、ここの蔵だけ。芋は傷むのが早い作物ですから、採れたてのみずみずしい芋で仕込むこの蔵の焼酎は、味わいも別格です。ピュアな甘さの中に、黒麹のキレのよさもあって、ガス臭さはまるでない。本当に鮮度がいい芋で焼酎を作ったらどうなるかを、しっかり体現できている1本だと感じます

八千代伝酒造 〈2022新焼酎 収穫する者達 Harvester黒
芋焼酎
度数 25度
原材料 さつまいも、米麹
蒸留 常圧
容量 720/1800ml
蔵元 八千代伝酒造 WEB→
所在地 鹿児島県垂水市

塩田酒造 〈限定新焼酎 六代目百合〉

「塩田酒造は、流行などに惑わされず、〈六代目百合〉という焼酎がどうあるべきかという基本に、きちんと向き合い続けている蔵だと思います。今回の新酒に関しても新酒のガス感がありますが、少し時間を置くとそれが消える。そこから新酒のやわらかさや、芋を蒸したような香りや黒麹のパワフルな風味が出てくるんです。お湯割りで飲むといろんな香りを楽しめます。店頭でお客さんに試飲していただいたら、次々売れてあっという間に完売! 改めて〈六代目百合〉の人気の高さを感じました」

塩田酒造 〈限定焼酎 六代目百合
芋焼酎
度数 25度
原材料 さつまいも、米麹
蒸留 常圧
容量 1800ml
蔵元 塩田酒造 
所在地 鹿児島県薩摩川内市

大和桜酒造〈大和桜 進取 2022〉

「大和桜酒造は新酒の発売をスタートして以来、『おいしい新酒って、こうなんです!』という提案を一生懸命やっている蔵元だと思います。油分も程よく、濁りもないので、本当に飲みやすい! 鹿児島の郷土菓子“からいも飴”みたいな、芋のホクホクした甘みが楽しめます。新酒はここまでおいしいのだと、この1本で知っていただきたいですね。新酒に限らず、大和桜の焼酎を飲んでもらうと芋焼酎自体に興味をもってくださる方が多いんですよ。この新酒は12月中にもう一度入荷予定です。お湯割りはもちろんストレートでもおいしいのでぜひ!」

大和桜酒造 〈大和桜 進取 2022
芋焼酎
度数 25度
原材料 さつまいも、米麹
蒸留 常圧
容量 1800ml
蔵元 大和桜酒造 WEB→
所在地 鹿児島県いちき串木野市
地酒とワイン たにもと屋
住所 鹿児島県鹿児島市長田町1-6
営業 火~土 10:00~21:00、日・祝 10:00~19:00
定休日 月曜
WEB https://www.tanimotoya.com

蔵元の個性があらわれる新酒の世界、かなり奥が深そうで、次から次に飲んでみたくなってしまいます。今年の芋焼酎の新酒に乗り遅れた! という読者の方も安心してください。今回訪ねた2店では、12月中も引き続きいくつかの蔵元から新酒が届く予定だそう。年の瀬に、新酒を持ち寄って飲み比べながら、来年の焼酎はどれがおいしくなりそうか、語り合うのも楽しそうです!

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