酒類業界で3年間勤務し、ウイスキーやスピリッツの知見を深めてきたHiroさん。実はいま、かつてはむしろ苦手意識すらあったという焼酎が、晩酌の定番なのだそう。ウイスキー好きを振り向かせた焼酎の魅力とは? ウイスキー好きにこそ薦めたい焼酎とは? Hiroさんに寄稿いただきました。
ウイスキーマニア垂涎のトロピカルフレーバーを発見!

私が焼酎に興味を持つ事になったきっかけは、ベタだが雑誌の焼酎特集。日頃から雑誌のお酒にまつわる特集号はよくチェックしていたが、本格焼酎の特集はそのとき読んだのが初めてだった。
普段飲むお酒は職業柄、主にウイスキー。ほかに飲むとしたらジンやラム、テキーラなどの蒸留酒、もちろんビールやワインを飲むことも少なくないが、和酒を飲むとすると日本酒をたまに飲む程度だった私にとって、その時に知った本格焼酎の世界は驚きの連続だった。焼酎の原材料の多様性、麹による味わいの違い、蒸留方法の違い……驚きばかりだったのを覚えている。
焼酎はウイスキーと同じ蒸留酒だから、共通する点は確かにある。ただ、焼酎独自の製法や特徴も多く、そのひとつひとつを知るにつれ、焼酎の深い世界に興味が増していった。
中でも、ウイスキー好きの私が特に魅了された理由の一つは、トロピカルフレーバーの焼酎だ。実は、ウイスキーマニアの間では、ライチ、マンゴー、パッションフルーツなどの南国系フルーツを彷彿とさせるトロピカルフレーバーは、憧れのフレーバーの一つなのである。1960年代のボウモア(スコッチウイスキー、シングルモルト)や、1970年代のベンリアック(スコッチウイスキー、シングルモルト)、1980年代のアイリッシュウイスキーなどで感じることができると言われており、その甘美なフレーバーを求めるウイスキーマニアは多い。
ただ、今ではこれらのウイスキーは、その人気からも非常に高価なボトルとなってしまった。多くのマニアにとって、トロピカルフレーバーは雲の上の存在でもあるのだ。そんなウイスキーマニアの一人である私の目の前に、突如現れたトロピカルフレーバーの蒸留酒。それが焼酎だったのだ。
それまで、居酒屋などで飲んだことのある焼酎には苦手意識さえあったから、イメージを大きく覆す「トロピカルフレーバー焼酎」という言葉は、最初は信じられなかったが、トロピカルフレーバーの代表銘柄である国分酒造の〈フラミンゴオレンジ〉を飲んでみると、その華やかなライチのようなトロピカルフルーツフレーバーに圧倒された。
「こんな焼酎あるのか!」
と、あまりの衝撃に思わず驚きの言葉がもれた。
前述のウイスキーに比べると度数は低く、またボディやアタックは控えめな印象。ただし、そこには間違いなくトロピカルフレーバーが感じられる。ウイスキーファンを魅了しながらも、雲の上の存在であるトロピカルフレーバー。そんな希少な味わいを持つ焼酎との出会いが、ウイスキー好きの私が焼酎にハマったきっかけの大きな一つだ。
飲み方自由。焼酎ならではのお湯割りの悦楽

2つ目に私が焼酎に興味を持ったきっかけは、焼酎ファンのみなさまにはおなじみの飲み方「お湯割り」だ。焼酎のお湯割りと聞くと、どうもオジサンくさい。20代男性の私には、到底縁のないと思えたこの飲み方が、いまでは私の晩酌の定番になっている。
お湯割りとの出会いは、通っていた焼鳥屋の大将からの一言だった。「〈なかむら〉のお湯割り飲んだことある?」焼酎大好きな大将いわく、中村酒造場の〈なかむら〉のお湯割りは格別だ、と。当時、トロピカルフレーバーをきっかけに焼酎への関心が芽生えはじめていた私は、色々な焼酎の飲み比べをロックで楽しむようになっていたがお湯割りはまだ未体験。でも大将に背中を押され、おそるおそる、「なかむら」のお湯割りを注文してみた。
テーブルに届けられたグラスからは、温かい蒸気とともに、芋のホクホクした甘い香りがフワッと鼻の奥へと優しく広がっていく。飲んでみると、温かいお湯とともに、芋の凝縮した旨みがじんわりと五臓六腑に染み渡った。
仕事帰りの疲れた体には、これほど癒してくれる優しいお酒はないと思えた。
以降は、飲食店ではもちろんのこと、家でもお湯割りを頻繁に飲むようになった。お湯割りは、一般的な日本の家庭料理との相性もよく、お湯を温めるだけで楽しめるから、自宅で気楽に飲むにはぴったりだ。夕食の準備が終盤にさしかかるとお湯を温め始めるのが、いつものルーティーンになった。
自分の体調や気分に合わせて、好きな比率で割ることができるのも、焼酎のお湯割りの楽しいポイント。しっかりと焼酎の味わいを楽しみたい時は、5:5でどっしりと。寝る前にお酒を飲んでリラックスしたい時は、2:8なんてのもいい。お湯割りに正解はないので、焼酎の銘柄に合わせて、自分の好みのバランスで楽しめればいい。そんな、自由で楽しいお酒が焼酎なのだと感じている。
焼酎文化が育んだ「お湯割り」という優しい飲み方ができるのも焼酎という蒸留酒の、他の蒸留酒にはない魅力の一つなのだろう。
焼酎とウイスキー。ロック、水割りに加え、ハイボールで食中酒としても楽しめる。そしてどちらも日本を代表する蒸留酒だ。共通点は多いけれど、「焼酎とウイスキーのどちらも好き」という人に出会う機会が少ないのも事実である。ウイスキーや洋酒は好きだけどあまり焼酎は飲んだことないというかつての僕のような方や、いつもとちょっと違う焼酎を楽しみたいという方に、特におすすめの6本を紹介してみたい。
ウイスキーマニアが薦める焼酎はこちら
おすすめ① 〈メローコヅル エクセレンス〉(小正醸造)

話題のジャパニーズウイスキーのルーツを知る
今年、初めてのシングルモルトジャパニーズウイスキーを発売し、話題を集める嘉之助蒸溜所。その第一弾となる〈シングルモルト嘉之助2021 FIRST EDITION〉の熟成に使用された樽が、小正醸造の熟成米焼酎〈メローコヅル エクセレンス〉で使用したアメリカンホワイトオークリチャーカスクだ。この〈メローコヅル エクセレンス〉こそが、シングルモルト嘉之助の味わいのルーツを知る手がかりでもある。
| メローコヅル エクセレンス |
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| 【米焼酎】 貯蔵 6年(オーク樽) 度数 41度 原材料 米・米麹 蒸留 常圧 容量 720ml 蔵元 小正醸造 WEB→ 所在地 鹿児島県日置市 |
おすすめ② 〈尾鈴山 山ねこ 銅釜蒸留〉(尾鈴山蒸留所)

銅製ポットスチル×焼酎
「百年の孤独」などで知られる宮崎県の黒木本店の別蔵として、1998年に創業した尾鈴山蒸留所。ウイスキーやジンも製造するこの蒸留所が作り出した焼酎が、「尾鈴山 山ねこ 銅釜蒸留」だ。こちらは通常の焼酎に使われるステンレス蒸留器ではなく、ウイスキー製造に用いられる銅製ポットスチルを使用して作られた限定品。ステンレス製の通常品との飲み比べも楽しい。
| 尾鈴山 山ねこ 銅釜蒸留 |
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| 【芋焼酎】 貯蔵 2年以上(樽) 度数 25度 原材料 甘藷(ジョイホワイト)・米麹 蒸留 常圧 容量 720ml 蔵元 尾鈴山蒸留所 WEB→ 所在地 宮崎県児湯郡 |
おすすめ③ 〈超古酒とろしかや〉(六調子酒造)

超長期熟成のプレミアム焼酎
熟成焼酎にこだわる六調子酒造の中でも、特に長期熟成した原酒を用いているのが〈超古酒とろしかや〉。30年物、17年物をブレンドして作られる円熟した味わいは、洋酒の長熟品に通ずる陶酔感。貯蔵庫は24時間体制で温度、湿度を管理し、スコットランドのハイランド地方の熟成環境を実現している。
おすすめ④ 〈らんびき LIMITED CASK SMOKE〉(ゑびす酒造)

アイラウイスキー好きにおすすめなスモーキー焼酎
〈らんびき LIMITED CASK SMOKE〉は、その名のとおりスモーキーな焼酎で、アイラウイスキーが好きな方におすすめ。10年以上熟成させた原酒を、スコッチウイスキーの熟成に使用された古樽でさらに1年間後熟。そうすることで、樽由来のピーティでスモーキーな香りをしっかり楽しめる味わいになっている。
| らんびき LIMITED CASK SMOKE |
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| 【麦焼酎】 貯蔵 10年(タンク・オーク樽1年) 度数 42度 原材料 大麦・米麹 蒸留 常圧 容量 720ml 蔵元 ゑびす酒造 WEB→ 所在地 福岡県朝倉市 |
おすすめ⑤ 〈ニッカ・ザ・麦焼酎〉(アサヒビール)

洋酒のプロが造り上げた麦焼酎
ニッカのウイスキー造りの技術を活かして生まれたのが〈ニッカ・ザ・麦焼酎〉。減圧蒸溜・常圧蒸溜の原酒を、それぞれの個性にあった樽で貯蔵して、チーフブレンダーの佐久間氏をはじめとしたブレンダー陣で試行錯誤してブレンディング。同じ麦原料のお酒であるウイスキーの技術を、麦焼酎に注ぎ込んだ逸品で、麦焼酎らしさはありつつも、ウイスキー愛好家にも飲みやすい味わいになっている。
おすすめ⑥ 〈だいやめ~DAIYAME~〉(濵田酒造)

世界が認めたトロピカルフレーバー
世界の酒類品評会「インターナショナル ワイン& スピリッツ コンペティション(IWSC)2019」焼酎部門で最高賞を受賞した芋焼酎。「香熟芋」と呼ばれる、独自の熟成法で香気を引き出したさつまいもを使い、ライチのような甘い香りを生み出している。従来の芋焼酎にはない、華やかなトロピカルフレーバーは、ふだん焼酎を飲まないウイスキー愛好家でも飲みやすく、ソーダ割もおすすめ。
| だいやめ~DAIYAME~ |
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| 【芋焼酎】 度数 25度 原材料 芋・米麹 蒸留 減圧 容量 720ml 蔵元 濱田酒造 WEB→ 所在地 鹿児島県いちき串木野市 |

Hiro/埼玉県生まれ。双子座のO型。大学生からウイスキーの魅力に取りつかれ、酒類業界へ。ウイスキーをメインに様々なスピリッツを取り扱う中で、焼酎にも出会う。晩酌の定番は〈さつま国分〉(国分酒造)のお湯割り。

