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焼酎の熟成の種類

蒸留を終えたばかりの焼酎の原酒は、麦焼酎や米焼酎で43~45度、芋焼酎で38度程度。蒸留したての原酒は固く荒々しく、ガス成分が含まれているため独特のクセが強い状態。ほとんどが6カ月前後の貯蔵・熟成期間を経て、ガス成分の荒さを取り除いてから出荷されますが、その一方で、蒸留したての新酒にはうま味成分である油分が多く含まれるのも事実。新酒ならではの、この濃い風味を好まれるファンも多くいます。ウイスキーをはじめとする世界のほかの蒸留酒が、最低でも数年かからないと出荷できないのを思うと、半年程度の熟成で商品としてのクオリティに仕上がるのは本格焼酎・泡盛のすごみ。

SHOCHU NEXT では、この熟成の初期段階を超えた、中期(半年から3年)~長期(3年以上)の熟成に特に注目しています。

一般的に、熟成期間が長くなればなるほど、アルコールと水が親和してまろやかな味わいになります。つまり「時間」は熟成の大きな要素。もうひとつ、焼酎の味わいを変えていく大切な要素といえるのが、熟成の「容器」です。焼酎の熟成・貯蔵に使われるのは大きく分けて「タンク」「甕(かめ)」「樽」の3種類。それぞれに、焼酎の味わいに異なる変化をもたらす熟成の種類を整理しました。

クリアで焼酎そのものの変化を楽しめる「タンク熟成」

熊本県・六調子酒造のホーロータンク。

ステンレスやホーローのタンクで行う熟成は、現在多くの蔵元が採用している主流。大容量のタンクならば効率的な生産が可能であること、また温度管理が行いやすく、安定した環境で熟成を進められることも大きなメリットです。タンク自身の香りが焼酎に移ることもないので、焼酎そのものの味わいの熟成を楽しむこともできます。ただしタンクそのものの密閉性が高いため、熟成速度はほかの容器に比べて早くはありません。

呼吸する容器で行う伝統的な「甕(かめ)熟成」

甕のサイズもさまざま。熊本県・寿福酒造場の甕は30ℓ が大半。

伝統的な焼酎の熟成は、素焼きの甕によるもの。甕の表面には細かな気孔が無数に空いていて、ここから空気が入り、焼酎から揮発したガスも自然に抜けていきます。つまり焼酎自体が呼吸をするようにして熟成が促進していくというわけ。時間をかけて甕に含まれる成分が焼酎に溶け出すことで、まろやかな風味が生まれる側面もあります。

木の香りが複雑な味の変化をもたらす「樽熟成」

さまざまな樽をもつ熊本県・大石酒造場。ここからどんな熟成焼酎が生まれるか楽しみ!

ウイスキーの熟成と同様に、さまざまな木樽に貯蔵して熟成を行う樽熟成。ウイスキーやシェリー酒などの熟成に用いられたオーク樽を再利用したり、いろんな樹種の新樽を利用したりと、樽の素材自体もバリエーションが豊富です。樽自体がもつ香りが焼酎に移ることで、複雑で独特の風味が生まれます。さらに、樽からは木の色素も溶け出すため、焼酎はうっすらと琥珀色になっていきます。現在は光量規制により、焼酎の色の濃さが制限されているため、色の調整の必要があります。

番外編:おいしいお酒を育て続ける泡盛の「仕次ぎ」

琉球泡盛は、年を重ねて熟成するほどにおいしくなるという認識の強いお酒。古酒(クースー)文化が伝統的にさかんで、すこし前までは、時間をかけてお酒を育てる「仕次ぎ」を行う家族も少なくなかったのだとか。「仕次ぎ」は、年数の異なる3升~1斗甕のうち、いちばん古いもの(親酒)を飲んだ分だけ、次に古いものから足していく方法。常に若々しい泡盛が一定量ブレンドされるので、熟成によって失われる香り成分が保たれたおいしいお酒が飲めるというわけ。

正解はそれぞれ。
だから熟成は楽しい!

どの熟成方法がいちばんいいのか? という問いに対する答えは無数。各蔵元が、それぞれの哲学や意図をもって、さまざまな方法で熟成を行っています。

蔵元、そして銘柄の数だけその回答はあるし、それぞれの蔵元が常に新しい方法に挑み続けてもいます。これからどんな熟成焼酎に出会えるのか。私たちは楽しみにするばかりです。