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熟成焼酎ができるまで

それぞれの原料に特有の風味がよく生きている日本の蒸留酒・焼酎。自然のうま味をいただくことのできるこの酒は、どのようにしてできるのでしょうか。一般的な熟成焼酎・泡盛ができるまでのプロセスを、大まかに追いかけてみてみます。実際には、蔵元の数、銘柄の数だけ、各プロセスについてのこだわりや工夫があるもの。そのこだわりは、これから時間をかけて SHOCHU NEXT の記事内でご紹介していきます。


麹をつくる
(製麹・せいぎく)

焼酎づくりの大切な第一歩 
焼酎や泡盛の麹の原料の大半は米。まずは丁寧に洗い、米の状態に合わせた適切な量の水に浸ける。浸水が終わったら水を切って蒸し上げ、まんべんなく麹菌(種麹)をつける。これを適切な温度と湿度を管理して熟成を進めると、約2日ほどで麹に。この製麹は、麹室(こうじむろ)で麹蓋を使ってすべてを手作業で行う方法のほか、半自動/自動の機械を使う方法などさまざま。また、最近では麦や芋で仕込んだ麹を使う銘柄もある。

② 一次仕込み

発酵の第一段階 
焼酎の発酵は基本的に2回。最初が甕やタンクに、麹と水と酵母を入れて行う発酵過程で、これが一次仕込み。できあがるのが“一次もろみ”だ。麹の酵素が米のデンプンをブドウ糖に変え、酵母がブドウ糖を栄養源にしてアルコールを発生。5日間前後をかけて15度ほどのアルコールになる。泡盛は一次仕込みのもろみをそのまま蒸留する「全麹づくり」なのが焼酎との大きな違い。

③ 二次仕込み

いよいよ主原料を投入
芋・米・麦・黒糖などの焼酎の主原料は、きれいに洗って下処理をしておく。 サツマイモは収穫したての新鮮なものをきれいに洗って傷みや両端を切り落として蒸し、砕く。麦は外皮をむいて胚芽を削って蒸す。黒糖は溶かす……などこの下処理もとても大切。一次もろみに主原料を加えて発酵。ぷつぷつと炭酸ガスが発生してアルコール発酵が進み、主原料の成分が溶けていく。10日~2週間程度発酵させたら“二次もろみ”の完成!

④ 蒸留

原酒が生まれる場
二次もろみを蒸留器へ。加熱すると水より沸点の低いアルコールが先に沸騰して蒸気となるので、これを冷却して原酒をつくる。蒸留器には単式蒸留器と連続式蒸留器があり、本格焼酎と泡盛が使うのは単式蒸留器。蒸留は一回きりの大勝負だ。甲類焼酎やウオッカ、ジンなどは連続式蒸留器でつくる。さらに単式蒸留器の方法は、常圧蒸留と減圧蒸留に大別される。各蔵元が求める酒質に合わせて常圧/減圧を使い分けるほか、蒸留器に細かなカスタムを施している。

⑤ 熟成

時間をかけて求める酒質に
原酒を貯蔵タンクに移して寝かせる。ほとんどの焼酎が出荷前に3~6ケ月程度の貯蔵・熟成を行う。これは蒸留後すぐの刺激臭を揮発させて、酒質を落ち着かせるため。蔵元の考えや銘柄の特性によって、この期間を越えて長く熟成期間をとる焼酎は少なくない。熟成はタンクのほか、樽や甕などで行う蔵も。本格焼酎のうち、3年以上の熟成期間を経た全量の50%以上入っているものは、酒税法上「長期貯蔵」をラベルなどで名乗ることができる。

⑥ ブレンド

最後の味の決め手
蒸留したての原酒は麦焼酎や米焼酎の場合が43~44度、芋焼酎の場合は37~38度ほど。熟成期間が長くなると度数は徐々に下がっていく。これを利き酒して熟成の状況を見極め、ブレンドを行う蔵が多い。水や他の焼酎を一切混ぜず、かつアルコール度数が36度以上で出荷されるのが「原酒」。通常は数種類の原酒をブレンドして、割り水を加えてアルコール度数を25度前後に調整する。酒税法上、焼酎のアルコール度数の上限は45度。

⑦ 瓶詰め & ラベリング

世界に出る前の最終準備
ようやくできあがった焼酎! 大切に瓶詰めし、ラベルを貼って出荷の準備へ。瓶詰めは機械化されていても、検品は人の目で行う蔵が大半。ちなみに焼酎に多い1升瓶は1800ml、“4合瓶”と呼ばれる中くらいの瓶は720ml。伝統的に、元は温度変化や日光に極端に弱い日本酒用につくられた、紫外線を防ぐ茶色の瓶が多く使われてきたが、変化に強い焼酎の場合、透明や赤色などほかの瓶のバリエーションもまだまだ期待できる。

⑧ 出荷!

関わるすべての人の思いを乗せて!
農家の方々が大地に向き合って大切に育てた主原料を丁寧に下処理し、それぞれに工夫したプロセスで酒にして熟成し、瓶詰め・ラベリング……。焼酎が世に出ていく前には、多くの人々の数知れない工夫・希望・労力と愛情が詰まっている。酒づくりに関わる人々のそれらの思いを背負って、焼酎は新たな旅路へ。たくさんの人々のもとへ届きますように!