カクテル素材としての焼酎の可能性は、世界各地で認知を広げつつあります。世界的なクラシックカクテルのブームのなか、バーテンダーたちが独創性あるレシピを開発するときに重要な役割を果たすのが、カクテルの素材。これまでに誰も使っていない味わいや香りの素材を使うことが大きな意味を持つというわけです。原料由来の味わいが生きた本格焼酎・泡盛はそういうニーズに最適な素材。欧米の有名ホテルのバーなどでも、本格焼酎・泡盛を使ったカクテルが定番化したりと、これまでにないかたちでの焼酎需要が、海外でじわじわと増しつつあるのです。
そんなわけで私たちSHOCHU NEXTが力を入れているのが、有名バーテンダーと一緒に開発する「焼酎カクテル」です。今回使うのは鹿児島・田苑酒造の〈田苑 ENVELHECIDA 40%〉。シンガポール拠点で活躍するバーテンダー、金高大輝さんに、2種類のカクテルを考案していただきました。
熟成にこだわりある蔵元の樽熟成芋焼酎
6年連続で“Asia’s 50 Best Bar”にノミネートされたシンガポールのバー「D.Bespoke」にさっそうと現れたオーナーバーテンダーの金高さん。数多くの焼酎の蔵元とも親交が深く、日本の焼酎をテーマにしたバー「RPM by D.Bespoke」も営む、焼酎を世界に伝える一人です。
金高さんが今日手にしているのは鹿児島・田苑酒造の〈田苑 ENVELHECIDA 40%〉。2021年には東京ウイスキー&スピリッツ・コンペティション(TWSC)最高金賞や、インターナショナル ワイン&スピリッツ コンペティション金賞をダブル受賞するなど世界的なコンペでも高い評価を得る銘柄です。
焼酎の蔵元としてはかなり早く樽熟成に乗り出した田苑酒造は、クラシックの名曲を聴かせながら焼酎を育てる「音楽仕込み」や、1985年に日本で初めて樽貯蔵麦焼酎を発売したこともよく知られます。ポルトガル語で「貯蔵」を意味する〈ENVELHECIDA〉(エンヴェレシーダ)を冠したこの銘柄は、そんな蔵元だからこその樽熟成の芋焼酎。全量がホワイトオーク樽で熟成、さらに3年以上の熟成を経ています。
「芋焼酎の樽熟成はなかなか難しい面もあるとされてきましたが、この〈田苑 ENVELHECIDA 40%〉はとてもバランスがいい」と金高さん。
「もとの焼酎は、軽やかなフルーティー系というよりは、昔ながらの芋焼酎に近い、どっしりとした重厚感のある味わい。これが樽熟成を経てさらにまろやかに変化しています。3年以上の熟成ですからさほど樽香は強すぎない。40度という度数は、焼酎にしてみたら高い方ですが、世界のほかのスピリッツと比べれば決して高すぎはしない。ですので飲んだ一口目のアタックは強すぎず、余韻にまろやかな芋らしい香りがふわっと漂ってきます。素直にお湯割りや、水割り、ソーダ割りでも十分に楽しめるお酒ですが(笑)、今日はそんな特徴をいかしたカクテルを2種類、考えてきました」
デザートの一杯になる、フリップスタイルのカクテル
〈田苑 ENVELHECIDA 40%〉を使う最初のカクテルは名づけて「ENVELHECIDA JAPANESE FLIP 」。世界での流行を受けて日本でも見かけるようになった、卵黄と砂糖を使うカクテルです。
「〈田苑 ENVELHECIDA 40%〉の、サツマイモらしいどしっと甘い感じに、卵と砂糖を使うフリップスタイルのカクテルはとても合うなと思ったんです。スイートポテトプリンみたいなイメージですね(笑)。複雑な甘みのある、デザートのような一杯。シガーと一緒に楽しむのもお薦めです」
ENVELHECIDA JAPANESE FLIP |
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【材料(1杯分)】 ・田苑 ENVELHECIDA 40% 50ml ・カネ十農園ほうじ茶リーフ 2g ・卵黄1個分 ・PX SHERRY 10-15ml ① 温めた急須にほうじ茶の葉を入れ、お湯を注いで一煎目を淹れる。 ② 一煎目を注ぎ終わった急須に焼酎を50ml注ぎ、お茶の香りと味わいを抽出する。 ③ ②をシェイカーに入れ、卵黄、シェリーと一緒にハンドブレンダーで混ぜる。 ④ ③に氷を入れ、シェイクをしてストレイナーで濾しながらグラスへ注ぐ。 <カクテルのコツ> 「ほうじ茶は先にお湯で一煎目を淹れて、茶葉を開かせておき、そこに焼酎を入れて茶葉の味をなじませます。一煎目はお客さんに飲んでもらって『このお茶を使います』と説明するプレゼンテーションもいいと思いますね」(金高さん) |
海外で人気のフォーミーなサワーカクテル
金高さんが次に紹介してくれたのは、〈田苑 ENVELHECIDA 40%〉を使ったサワースタイルのカクテル。「卵白のきめ細かな泡がおいしいサワースタイルのカクテルって、けっこう海外では人気なんですよ。だから焼酎をあまり知らない方にも抵抗なく飲める一杯になります」と金高さん。こちらも先ほどと同じく、日本産の茶葉を使ったツイストレシピが金高さんならではの手腕です。
ENVELHECIDA JAPANESE SOUR |
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【材料(1杯分)】 ・田苑 ENVELHECIDA 40% 60ml ・カネ十農園 アールグレイ 2g ・レモンジュース 15ml ・卵白1個分 ・アカシア蜂蜜 10ml ① 温めた急須にアールグレイリーフを入れ、お湯を注ぎ一煎目を淹れる。 ② 一煎目を注ぎ終わった急須に焼酎を60ml注ぎ、お茶の香りと味わいを抽出する。 ③ ②をシェイカーに入れ、卵白、レモンジュース、アカシア蜂蜜と一緒にハンドブレンダーで混ぜる。 ④ ③に氷を入れ、シェイクをしてグラスへ注ぐ。 <カクテルのコツ> 「静岡・カネ十農園のアールグレイは、一般的なアールグレイと違って緑色なんです。カフェインを抑えた一番摘みの茶葉に、ベルガモットから抽出した天然の精油で香りづけしていて、味わいもかなり軽やか。樽香の強すぎない〈田苑 ENVELHECIDA 40%〉と合わせると、さわやかなカクテルになります。この茶葉は特に香りが強いので、一煎目はカクテルに使わず、二煎目でこなれた感じにするのがいいですね。普通のアールグレイを使ってもよし。その場合ウイスキー・サワーのような琥珀色に仕上がります」(金高さん) |
家で気軽に楽しむ〈田苑 ENVELHECIDA 40%〉カクテルのヒント
上質なシェリーを使ったり、シェイカーで細かな泡をつくったりと、2つのカクテルはさすがプロならではの仕上がり。家でつくるのは難しい……かと思いきや、「気軽に道具を代用したり、材料を変えてみたっていいんですよ」と金高さん。
「プロ用のシェイカーの代わりにプロテインシェイカーを使ったって全然かまわない(笑)。僕らプロがつくるカクテルがおいしいのは当然ですが、家で試すなら、もっと気軽に楽しく飲めばいいと思うんです。焼酎は元々日常と一緒にあるお酒なのだから、日常で自由に楽しむことも忘れないでほしいですね」
家で簡単に試せるカクテルとして、「たとえばオールド・ファッションドのツイストはどうですか?」と金高さん。通常のオールド・ファッションドは、ウイスキー、ビターズ、角砂糖でつくりますが、「ロックグラスに氷を入れて、ビターズのかわりにみりんを垂らし、そこに〈田苑 ENVELHECIDA 40%〉を注ぐ。ビターズは常備していなくても、みりんはありますよね(笑)。みりんの代わりに養命酒でもいいです。コクが出ておいしいと思います。家にあるものだけで、いろんなカクテルができそう! 〈田苑 ENVELHECIDA 40%〉はそういう遊び心も受け止めてくれるお酒だと思います」
金高大輝(かねたか・だいき)/ バーテンダー。銀座で修行の後2008年北京で独立。2014年よりシンガポールに拠点を移し「D.Bespoke」を立ち上げ。“日本以上に日本らしいBAR”をコンセプトにして、日本の伝統工芸の職人、レストラン、ファッションブランド、ミュージシャンなどの他業種とのコラボレーションを数々手がけ続ける。「D.Bespoke」は2021年までAsia’s 50 Best Bar にて6年連続ノミネート。2017年にはジャカルタに「D.Classic」を立ち上げる。2018年にはライフワークでもあるレコード収集が高じて“Vinyl × Cocktail × Japanese Shochu ”をコンセプトとした「RPM by D.Bespoke」を開店。コロナ終息後にはまた違った角度から新たなBAR空間を表現する試みとして「Next to Silence 」をオープン予定。
http://dbespoke.sg
田苑 エンヴェレシーダ 40% |
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【芋焼酎】 貯蔵 全量3年以上(オーク樽) 度数 40度 原材料 さつまいも(鹿児島県産)・米麹(国産米、タイ産米) 蒸留 常圧 蔵元 田苑酒造 →WEB 所在地 鹿児島県薩摩川内市 |