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おうちで放置している焼酎はまだ飲める…?|焼酎の賞味期限について調べてみた!

コラム

おうちで放置している焼酎はまだ飲める…?|焼酎の賞味期限について調べてみた!

Text : Taku Itoh (SHOCHU NEXT)

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皆さんの家に、ず〜〜〜っと飲まずに放置している焼酎はありませんか?? 僕の家にも、未開封のもの含めて飲み切れていないボトルが数本置いてあります。買ったはいいけれど、割りながら飲む焼酎はなかなか減らない。飲みきるのが難しい時もあるんですよね。焼酎を放置しがちなズボラな僕ですが、口にするものの賞味期限は気になってしまう面倒な性分。長い間放置してしまった焼酎は、果たして飲めるのだろうか……? ということで今回は、自分の身の安全と、この疑問を晴らすために、焼酎の賞味期限について調べてみました!

焼酎に賞味期限はあるの?

焼酎に賞味期限はあるのか。この疑問に答えるには、まずは焼酎のボトルに聞くのがいちばんですね。さっそくラベルやパッケージを隈なく見てみましたが、賞味期限の記載はどこにも見当たりませんでした

ということは、焼酎に賞味期限の表示義務はないのか?こちらは酒税法と食品表示法を参照したところ、どうやら焼酎や泡盛は焼酎の賞味期限の表示を省略できるようです。なぜ焼酎や泡盛には賞味期限の表示が必要ないのでしょうか?

賞味期限の表記がないのは、アルコール度数が高いから!

私たちは日常生活の中で、アルコールを消毒液として使用しています。それはアルコールに強い殺菌・消毒効果があるから。焼酎など酒類に含まれるアルコールについてもそれは例外ではありません。(念のために言っておきますが、消毒目的のアルコールは決して飲んだり、お酒を消毒液代わりにしてはいけませんよ!)

では、その効果がどれほどのものかというと、アルコール度数10%以上の環境下では、ほとんどの細胞が死滅するほどなのだとか。アルコール度数10%ですら細菌が生存できないのだから、20〜25%の度数が一般的な焼酎は菌にとって繁殖しにくい環境であるといえます。そのため、焼酎は腐敗の心配もほとんどないと考えてよいでしょう。それゆえに、焼酎には安全に飲める期限を示す賞味期限や消費期限の表記が必要ないのです。 

ラベルに印字されている日付はなんだ!?

焼酎には賞味期限がない……はずなのに、ラベルやパッケージに印字されている日付らしきものがあるにはあるんです。あれは一体、何を表しているのでしょうか。

焼酎や泡盛に表記されている日付は「詰口年月日」または「製造年月日」といい、焼酎や泡盛を瓶に詰めて製品として完成した日を表しています。賞味期限がない代わりに詰口年月日を記載することで、その焼酎を瓶に入れてからどれくらい日が経っているかを、確認できるようにしているというわけです。

長期保存ができるからこそ、より味わい深い“熟成焼酎”を楽しめる

アルコール度数の高い焼酎や泡盛は腐敗に強く、それゆえに長期貯蔵ができるお酒でもあります。実は長期貯蔵を行った焼酎は「熟成焼酎」、泡盛は「古酒(クースー)」と呼ばれ、一味違った深みのある味わいと香りが楽しめるジャンルとして確立されています。いわゆる「熟成」というヤツです。

熟成がなぜ味わい深さをもたらすのか? それについてはメカニズムについては、過去の記事で紹介しています! オススメの熟成焼酎についてもふれているので、気になる方はぜひご一読を!

ウイスキーみたいに、熟成するほどおいしくなるの? 焼酎の熟成のメカニズム – クラフトスピリッツを再発見するWEBマガジン

おいしい焼酎づくりにおいて「熟成」は重要な行程のひとつ。ふだん皆さんが飲んでいる本格焼酎は、だいたい熟成しているんです。ほとんどの焼酎は、できたてで瓶詰めされることはなく、最低でも1~3ヶ月の熟成期間を経てから出荷されています。熟成することのメリットって? 熟成期間には、お酒の中でどんなことが起きているの? お酒の味を安定させるための1〜3ヶ月の「初期熟成」と、その期間を越えて熟成する中〜長期熟成に分けて分かりやすく整理してみました。

賞味期限がなくても劣化はする!? 正しい保存方法で、焼酎をおいしく長持ちさせよう!

アルコール度数の高い焼酎は腐敗しにくい!! ……とはいうものの、正しく保存しなければ味わいは劣化してしまいます。せっかく長持ちするならば、おいしさもしっかりとキープしたいですよね。というわけで、焼酎を保管するうえで気をつけたい3つのポイントをご紹介します!

フタはしっかり締める!

まず気をつけなければいけないのは、フタをしっかりと締めること! フタの締まりがゆるいと、空気に触れて酸化がはじまり、少しずつ風味が落ちていくことがあります。さらに長時間フタを開けたままにすることで、焼酎の香り成分がとんでしまう原因となります。酸化防止と本来の香りをキープするために「開けたら締める!」を心がけましょう!
また、焼酎は周りの環境に影響を受けて香りが変わってしまうこともあるため、保管場所に芳香剤や防虫剤といった香りの強いものを置くのも避けましょう

直射日光は避けるべし!

焼酎のボトルって、遮光性の高い茶色や黒色のものが多いですよね。これは焼酎の旨味をキープするうえで、直射日光が大敵だから。焼酎は日光を浴びることで旨味成分が分解され、本来の味わいが損なわれるだけでなく、独特の酸化臭の原因に繋がります。また日光に長時間あたると温度上昇してしまいます。これも焼酎の味わいを損なう原因に繋がるので、保管場所としてなるべく日光の当たらない場所を選びましょう。日光の当たらないところでも、蛍光灯や白熱電球など紫外線が発生する光源も要注意です!焼酎を取り扱う店舗などでは、LED照明を利用するのがよいでしょう。ご自宅での保管には頻繁に飲まないものは、新聞紙などで包んで遮光性を高めるのもおすすめですよ!

③ 高温や激しい温度変化には気をつけて!

2つめのポイントでも触れましたが、温度も焼酎の保管において重要なポイントです。極端な温度の上昇を防ぐために、コンロやオーブンなど熱源の近くからは遠ざけましょう。特に高温の場所に焼酎を放置してしまうと、酸化した油のような不快な香りが生じてしまいやすくなります。また冷蔵庫など極端に温度が低い場所だと、焼酎の成分が固まり、雑味のもととなる「オリ」となって焼酎内に浮き上がってきます。保管場所には温度をある程度一定に保てる冷暗所を選択するのがおすすめです

以上を踏まえると、戸棚や押し入れといった冷暗所にしまっておくのがよさそうですね! ただし、蔵元が冷蔵庫に入れておくことを推奨している〈フラミンゴオレンジ〉のような、保管方法が例外的な銘柄もあります。そういったものは、蔵元推奨の保管方法をとりましょう! 

焼酎以外のお酒にも賞味期限はないの?

さてここまでで焼酎には賞味期限がないことがわかりました。でもこれって焼酎だけが特別なのでしょうか? ……他のお酒の賞味期限についても気になってきましたね。せっかくなので、他のお酒の賞味期限についても調べてみました!焼酎の度数や成分と比べながらそれぞれ見ていきましょう。

日本酒

まずは焼酎と共に日本を代表するお酒として知られる日本酒から。
日本酒はアルコール度数15%前後が一般的で、焼酎と同様に基本的に腐敗することはないので、賞味期限の表記義務はありません。醸造酒である日本酒は、焼酎とは比較したとき、さまざまな成分が含まれているため、酸化や発酵による味わいの変化は少し早かったり、成分の沈澱が起こりやすかったりします。そのため、一般的には未開封のもので1年以内、開封後は2週間以内を目安に飲みきるのがよいとされています。
とはいえ、アルコール度数の高い日本酒はそう簡単に酸化するものではありません。それどころか焼酎のように円熟した味わいを楽しめる長期貯蔵の古酒があるそうですよ。正しい保管は、おいしいお酒を飲むうえでかなり重要なようですね。

ワイン

ワインのアルコール度数はおよそ15%で、焼酎や日本酒同様、賞味期限はありません
ワインが他のお酒と違うのは、製造方法や原料の産地によって飲み頃が大きく変わるところ。中には数十年単位で寝かせて熟成させることで、ようやく飲み頃になるものもあるのだとか。熟成と飲み頃の見極めが重要なんですね。 飲み頃までじっくりと時間をかけることもあるワインですが、日本酒と同じく開栓後は味の変化がかなり早く、少なくとも1週間程度で飲みきることがおすすめなんだそうです。

ビール

ビールのアルコール度数は5%程度で、焼酎に比べるとぐっと度数が低めです。ビールや先にあげた2つのような醸造酒は焼酎のような蒸留酒と違って、度数がそこまで高くなりません。

ちなみに蒸留直後の焼酎の度数はなんと40度! ビールに比べるとかなり度数が高いのがわかります。蒸留直後の焼酎は「原酒」と呼ばれ、濃い香りと味わいを楽しむことができます。これに加水して、一般的な25度の焼酎として販売されています。

ちなみになぜ25度に加水するのかは、過去の記事にまとめています。アルコール飲料が賞味期限に限らず、法律とかなり密接な関わりを持っているのがわかりますよ。

どうして焼酎は25度が多いの?|焼酎のアルコール度数の謎を追う!〈前編〉 – クラフトスピリッツを再発見するWEBマガジン

「アルコール分 25度」「5% ABV.」「AVC 12%」……。表記の仕方は色々ながら、どんなお酒でも、必ずアルコール度数の表記がされていますよね。この度数、お酒選びの判断基準のひとつでもあります。 焼酎好きの皆さんにいちばんなじみのあるアルコール度数は、おそらく25度や20度。この2種類が大半を占めていますよね。いったいこの焼酎のアルコール度数は、いつごろから定着したのでしょう? ……そもそもアルコール度数ってなんだ? 考え出すと次から次に出てくる「焼酎とアルコール度数」に関するさまざまな疑問について調べてみました。

…と、少し話が脱線してしまいましたが、ビールの賞味期限に話を戻しましょう。度数が低いビールは、賞味期限を製造から9ヶ月と定められています。未開封であれば期限を過ぎていても飲めるようですが、おいしく飲むには期限内に飲むのがよさそうです。

ウイスキー

焼酎と同じ蒸留酒であるウイスキーの度数はおよそ40%。焼酎よりもだいぶ高めです。この時点でお察しの通り、ウイスキーにも賞味期限はありません。焼酎やウイスキーに限らず、ジンやウォッカなど、蒸留の過程を経るスピリッツは高いアルコール度数を得られるので、基本的に賞味期限はないと考えてよいでしょう

焼酎をはじめとするこれらのお酒は、蒸留によって発酵や酸化の原因となる成分が醸造酒と比べて少なくなっています。そのため、一度開栓しても保存方法に気をつければ長持ちするのが利点。比較的保存も簡単なので、味の劣化を気にせずに、1年程度は楽しめますよ!

ちなみに度数の高いリキュールも、蒸留酒と同様に賞味期限がないものがほとんど。ただし、卵や牛乳を使っているものは例外です。必ず記載の賞味期限内に飲み切りましょう。

正しく保管して、おいしい焼酎を長く楽しもう!

焼酎と賞味期限のついて調べてみると、賞味期限はないものの、しっかりと保存しなければ、味わいは劣化してしまうことが分かりました。とりあえず家に置きっぱなしにしている焼酎も安心して飲めそうです! とはいえ僕の場合、保管場所にはあまりこだわっていなかったので、再検討してみようかな。皆さんもご自宅で眠っている焼酎があったら保管場所や現在の味わいを一度確かめてみてはいかがでしょうか?

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