クラフトスピリッツを再発見するWEBマガジン

どうして焼酎は25度が多いの?|焼酎のアルコール度数の謎を追う!〈前編〉

トピックス

どうして焼酎は25度が多いの?|焼酎のアルコール度数の謎を追う!〈前編〉

Text & Illustration : SHOCHU NEXT

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • Lineで送る

「アルコール分 25度」「5% ABV.」「AVC 12%」……。表記の仕方は色々ながら、どんなお酒でも、必ずアルコール度数の表記がされていますよね。この度数、お酒選びの判断基準のひとつでもあります。

焼酎好きの皆さんにいちばんなじみのあるアルコール度数は、おそらく25度や20度。この2種類が大半を占めていますよね。いったいこの焼酎のアルコール度数は、いつごろから定着したのでしょう? ……そもそもアルコール度数ってなんだ? 考え出すと次から次に出てくる「焼酎とアルコール度数」に関するさまざまな疑問について調べてみました。

ちゃんと知ってる? アルコール度数の定義

焼酎のアルコール度数の話に入る前に、一体全体“アルコール度数”とは何を表す数字なのかはっきりさせたい! アルコール度数については酒税法のなかで、このように定義づけされています。

アルコール分 温度十五度の時において原容量百分中に含有するエチルアルコールの容量をいう。_第三条の一

酒税法では「アルコール度数」ではなく「アルコール分」と記されているようですね。このふたつは意味としては同じなので、本記事では、なじみのあるアルコール度数という表現を使います。アルコール度数って何なのか、大方の予想はついていたものの、度数を測定するときの温度までしっかりと決まっているのは初めて知りました!

つまり酒税法の定義に基づいて考えると、アルコール度数5度のお酒100ml中に含まれるアルコールは5ml、50度なら50mlというわけですね。

ちなみに、冒頭でもいくつか例にあげたようにアルコール度数の表記にはさまざまなものがありますが、これらは全て表現が異なるだけで意味は同じ。

筆文字がドンッと印刷されているラベルには「アルコール分 十五度」、おしゃれなデザインのものには「ABV. 40%」と英語表記で表記を入っていたりする様子。お酒のデザインや種類に合わせて表現を変えられる自由度があるのはとてもいいことですね。

焼酎の度数はどうやって決まったの?

さて、では焼酎の度数は? 圧倒的多数が25度と20度。それではなぜこの度数のものが多いのでしょう。多数を占めるこの2種類の度数のルーツについて調べてみました。

旧酒税法がルーツ? 王道・25%のワケ

熊本県や鹿児島県でつくられる焼酎に多い度数・25%。いったいどんな意味があるのでしょうか。

いろんな資料にあたって調べてみましたが、どうやら正確な理由はわかっていない様子。

こんなキリのいい数字でつくっておいてよくわからんのかーい! とはいえ、もちろん諸説はあります。いちばんよく出てくるキーワードが「旧酒税法」です。

1940年(昭和15年)に制定された旧酒税法。どうやらこの酒税法で定められていた焼酎の税率が、25度という数字に深く関わっているようなのです。

旧酒税では、焼酎の税率は25%までは一律で同額、それ以降は1%上がるごとに税率が上がっていくと定められていました。税率的にいちばん“コスパ”がよいのが、一律同額の上限である25度というわけ。そんな理由から25度で焼酎をつくる蔵元が増え、これが定着したのではないかといわれています。

ちなみに現行の酒税法は、2003(平成15)年に改正された“新酒税法”。こちらでは20%までが一律同額、それ以降は1%ごとに加算されていくようです。つまり現行法の下では20度で販売するよりもすこし税率が上がってしまうのですが、それでも古くから親しまれて定着した度数でつくる蔵元が多いというわけです。

「ヤミ焼酎」から生まれた20度の焼酎

一方宮崎県では、20度の焼酎銘柄が広く飲まれています。少しだけ度数が低いこの焼酎の誕生には、実は戦後に出回った密造酒が深く関わっているのだそう。

そもそも酒税は古くから、国にとって大事な財源のひとつ。戦後しばらくの間、焼酎はアルコール度数25度以上のものしか製造を許可されておらず、税金の高さに比例して焼酎はかなり高額になっていました。

戦時中、宮崎へは奄美や沖縄から多くの人々が疎開しました。見知らぬ土地で生きていくため、故郷を同じくする彼らは泡盛づくりのノウハウを活かして「ヤミ焼酎」をつくり始め、庶民に広がったのだとか。

大事な収入源を脅かす“ヤミ焼酎”を見逃すわけにはいかない! そこで国は、密造酒への対抗手段として昭和28年に特別措置法を制定し、正規に焼酎をつくる蔵元に、低い税率で20度の焼酎をつくる許可を出したのです。これによってヤミ焼酎とも対抗できる安くて品質のいい焼酎がつくられるようになり、密造酒は衰退していきます。

20度の濃さは、生(き)で飲む人々にも定着し、今も多くの人に飲まれる焼酎として残り続けています。

原酒の度数はどれくらい?

蒸留した焼酎は度数が高いので、25度や20度にするために加水をして度数調整を行います。これに対して、蒸留後に水やその他の添加物を加えていない36度以上の焼酎のことを「原酒」といいます。

二次仕込み後のもろみのアルコール度数は約15~20度。これを蒸留して得られる原酒は、芋で約37~40度、麦や米で約43~45度です。

酒税法上の焼酎の定義は「アルコール分が四十五度以下のもの」ですから、原酒のままでも販売できるということ。焼酎の個性の多様化にともなって、最近では「原酒」をうたった、度数の高い銘柄をよく見かけるようになりましたよね! 加水されていない、それぞれの銘柄の個性が出た味わいを楽しんでみてください。

原酒についてはこちらの記事でさらに詳しく紹介しています!

ブームの兆しあり!「原酒」を知れば焼酎がもっと楽しい – クラフトスピリッツを再発見するWEBマガジン

水で薄めずに、蒸留したお酒そのものをボトリングした「原酒」。原酒でしか味わえない濃密な香りや味わいは、お酒好きにはたまらないですよね。焼酎にも「原酒」銘柄は以前からありますが、今、じわじわとブームの兆しを見せているのをご存知ですか? 大手メーカーからマイクロディスティラリーまで、各地の蔵元がこぞって「原酒」を出し始めています。

飲みやすい低アルコール焼酎

40度前後の原酒の銘柄が増えてきた一方、度数を15度前後とぐっと低めに抑えた低アルコール焼酎も数を増やしています。ワインや日本酒に近い度数なので、割らずに飲めるのは魅力的です。

「家で水割りすればいいんじゃ……?」と一瞬思いますが、あらかじめ加水してあるからこその味わいがあるんです! これらの低アルコール焼酎は、いわば“前割り”をしてある状態。瓶の中で時間をかけてアルコール分子と水分子の親和性がなじんでいるので、通常の水割りよりも口当たりのまろやかな味わいに仕上がっています。

熟成焼酎がまろやかな味わいになるのも、長期の熟成期間を経てこのふたつがしっかりとなじむからなんです。以前記事で紹介しているのでぜひ一読を。

ウイスキーみたいに、熟成するほどおいしくなるの? 焼酎の熟成のメカニズム | 熟成を知る、焼酎を楽しむWEBマガジン 「SHOCHU NEXT」

おいしい焼酎づくりにおいて「熟成」は重要な行程のひとつ。ふだん皆さんが飲んでいる本格焼酎は、だいたい熟成しているんです。ほとんどの焼酎は、できたてで瓶詰めされることはなく、最低でも1~3ヶ月の熟成期間を経てから出荷されています。熟成することのメリットって? 熟成期間には、お酒の中でどんなことが起きているの? お酒の味を安定させるための1〜3ヶ月の「初期熟成」と、その期間を越えて熟成する中〜長期熟成に分けて分かりやすく整理してみました。

過去の記事でおすすめの低アルコール焼酎もご紹介!

9月のおすすめ焼酎|度数低めで飲みやすい&親しみやすい! 低アルコールの熟成焼酎7選   | 熟成を知る、焼酎を楽しむWEBマガジン 「SHOCHU NEXT」

お酒にエキス分2%以上を添加した”リキュール”。梅やゆず、洋梨など、果実やハーブを加えてつくる甘~い味わいのものが多いから、「お酒に弱い人が飲むんでしょ」「若いコだけが飲むんでしょ?」なんて思っていませんか……? その認識、けっこう古いです! ふと気づけばリキュールは相当進化していて、甘いお酒が苦手な人でも楽しめるすっきりとしたリキュールも多数。なかでも、焼酎・泡盛ベースのリキュールは、元のお酒の風味も残る複雑な味わいで、焼酎好きならチェック必須なんです。

度数だけでもこれだけの種類があるとは、焼酎はどこまで奥深いんでしょう。さらにこれらを水やお湯で割ったり、ロックで飲んだり、焼酎には楽しみ方が無数にあるわけです。

あれ、では、実際に僕らがいろんな割り方をして飲むときの焼酎の度数っていったいどれくらいなんだろう? というわけで、焼酎と度数の記事はまだまだ続きます。次回は「検証編」。実際に割材や氷を用いて、焼酎を口にするときの度数を調べていきたいと思います! 


追記:
後編の記事ができましたー。こちらです!

水で割った焼酎の度数ってどれくらいなの?|焼酎のアルコール の謎を追う!<後編> | 熟成を知る、焼酎を楽しむWEBマガジン 「SHOCHU NEXT」

焼酎の度数は25度や20度のものが大半。前編では、その度数の秘密をいろいろに調べてみました。でも実際に飲むときには水やお湯、炭酸にお茶……と、いろんな割り方をすることが多いですよね。と、いうことは。飲むときの度数は変わっているわけだ。実際に僕らが飲むときの焼酎の度数ってどれくらいなんだろう?「焼酎って度数高いんでしょ」って言われたりするけど、それって本当なのかな? ……疑問がふくらんできたので、いろいろな飲み方による、焼酎の度数の変化を徹底的に測定して調べてみようと思います!

Share

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • Lineで送る