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西麻布「兎と寅」でスパイス料理 ✕ 熟成焼酎フルコース!
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すっかり身近になってきたエスニック料理。最近ではレストランも増えたし、ご近所のスーパーでも惣菜や専門的なスパイスを扱っていたりと、触れる機会も増えてきましたよね? 「エスニック料理&スパイスが好き、そしてお酒も好き‼」という人(つまり私がそうなんですが)も少なくない気がします。でも! エスニック料理に合わせるお酒って難しくないですか? なんとなくその土地のビールを合わせたり、せいぜいウーロンハイやハイボール、グラスワインくらいでしょうか。

せっかく好きな料理をいただくならば、お酒もいい方がいいに決まっている! そこで登場するのが熟成焼酎です。原料や麹・酵母などによって味わい無限大の本格焼酎。熟成を経てさらに個性を経たものならばなおさらですし、食事と合わせる歴史の深い焼酎の懐は海より深い! 個性の強いスパイス料理と合わせるのにこれ以上のお酒はありません。

そんな強い思いを胸に、東京都・西麻布にあるお酒のセレクトショップ「兎と寅」に向かいます。


生産者の想いを聞いてセレクトした焼酎たち

西麻布の交差点を入ってすぐ。おしゃれなインテリアショップ? それともスタジオ? と思わせる硬質な印象の入り口を抜けると秘密基地のような空間が広がる「兎と寅」。棚には焼酎好き(のつもり)の私でもちょっとなじみのない、マニアックな本格焼酎の数々と、オーガニックのナッツやドライフルーツの量り売りコーナーも見える。

手ぬぐいなどの雑貨類も並ぶこのお店、店の奥には立派なキッチンがあって角打ちスペースが設けられている。週末や休日にはさまざまなワークショップも開かれるから、お酒好きはもちろん、誰でも入ってみたくなるきっかけがたくさんある店だ。

本格焼酎や清酒、ワインなど各地から選び抜いたお酒が並ぶ「兎と寅」の品揃えはかなり個性的。お店を運営するのは村雲恵美子さんと福元尚香さん。ともに宮崎県出身の友人同士で始めた音楽系のイベント会社の“副業”として「兎と寅」を開いたというが、セレクトにはしっかりとした骨がある。村雲さんが話す。

「つくり手の想いを伝えたいので、基本的に置いてあるお酒の生産者に会ってから仕入れるようにしています」 

海外の自然派スーパーみたいに、完全オーガニックのナッツやドライフルーツを量り売りしてくれるのはうれしい!

1本1本に、村雲さんたちがじかに感じてきたつくり手の想いやストーリーがあるから、説得力がすごい。手にとるすべてを片っ端から買いたくなってしまう、魅力あふれる酒店だ。

棚に並ぶすべてのお酒に深い愛情を持っている村雲さんが、いま特に大切にしている銘柄が〈ユアマイスイートポテト〉。さつま芋をぎゅっと抱きしめる女の子のラベルが印象的なこのボトル、「兎と寅」こと“ウサトラ”のオリジナル焼酎。それもスパイスに合わせることを念頭に置いたオリジナル焼酎だという!

「〈ユアマイスイートポテト〉、略して“ユアポテ”はシナモン、カルダモン、クローブといったスパイスと相性がいい芋焼酎。……というよりスパイス料理に合う焼酎としてつくったオリジナル焼酎なんです」と村雲さん。つくりを手がけるのは鹿児島県・オガタマ酒造。村雲さんたちが方向性を伝え、蔵元と幾度かのやりとりを経て完成したのは、紅はるか芋で仕込み、シェリー樽で貯蔵した原酒をブレンドした1本。紅はるかならではの甘くフルーティーな香りとシェリー樽由来の甘みがバランスよく調和する味わいだ。食中酒として楽しむことを念頭に、度数は24度で仕上げている。

オープンキッチンが気持ちいい角打ちスペース。運営の二人はともにイギリス在住の経験がある。ミックスジャンルで料理やお酒を見渡せるのはこの二人ならでは。
ウサトラオリジナルの芋焼酎〈ユアマイスイートポテト〉。ジャケ買いしたいかわいいラベル、しかも味も最高。

スパイス料理にこそ、飲み方にバリエーションのある本格焼酎が合う!

「エスニック料理と一緒に飲むお酒、けっこう悩みますよね。ビールだとお腹いっぱいになっちゃうし、白ワインとかも合うのはあるけれど、それより絶対焼酎が合うと思います。タイ、カンボジア、インドネシア料理など、東南アジアの暑い国の料理ならば、氷やソーダで割ってさわやかに飲めるのもよいし、インド料理など、より香りの強い辛いスパイスに合わせるならば、お湯割りで芋の甘い香りも楽しむなど、飲み方のバリエーションがあるのもいい」と村雲さん。

ウサトラには、ユアポテのほかにもスパイスに合う熟成焼酎がたくさん揃う。その中からいくつかをピックアップして、エスニック料理と焼酎のペアリング5種を紹介してもらった。

村雲恵美子さん。海外経験などを経て改めて焼酎の魅力を発見したそう。
ウサトラ一推しの焼酎たち。どれも外しなし!

ウイスキー好きもノックアウト間違いなし。
スパイスミックスナッツ〈焼芋焼酎 松〉

「何よりもつくるのが簡単!」と、まず最初の一品は「兎と寅」の量り売りナッツを使用したスパイシーなミックスナッツ。合わせるのは、ウイスキー好きにも激推ししたい、鹿児島・白石酒造渾身の〈焼芋焼酎 松〉だ。さつま芋を焼いたことで生まれる燻した風味や、ラフロイグカスクでの熟成が生むピート感が、燻製塩やスパイス、そしてナッツの焙煎香にピッタリ。

ナッツは樽香がある焼酎との相性がよいので、鹿児島県奄美市の富田酒造場の手がける黒糖焼酎〈龍宮〉の中でも、樽貯蔵酒をブレンドした〈琥珀龍宮〉もオススメ。

スパイスミックスナッツのレシピ
〈材料 2~3人分〉
・皮付き生アーモンド 40g
・生カシューナッツ 40g
・生くるみ 40g
・オリーブオイル 大さじ1
・クミン ひとつまみ
・ガラムマサラ 小さじ1(お好みで適量)
・燻製塩 小さじ1弱(お好みで適量)

〈作り方〉
 フライパンでオリーブオイルを熱しクミンを炒め香りが出たら、ナッツを投入。
 油がナッツ全体に絡まったら、ガラムマサラと燻製塩をお好みでまぶし炒める。
 香りが出てきたら火を止め、キッチンペーパーの上に並べ20分ほど乾かすとカリッと仕上がる。

変わりポテサラの風味が倍増。
パキスタン風ポテサラ〈山猪〉

エスニックらしいココナッツの香りが食欲と焼酎欲を誘う2品目は、カレーイベントの主宰やメディア発信で有名なシャンカール・ノグチ氏のレシピを拝借。本来は、カレーリーフやマンゴーパウダーも使いますが、今回は少し簡単に!

パキスタン風ポテサラにペアリングする焼酎は宮崎県・須木酒造の芋焼酎〈山猪〉

〈山猪〉は、最近人気の飲みやすい芋焼酎とは異なり、むしろ懐かしいほどの濃厚な芋の香りと甘味がある焼酎。パキスタン風ポテサラのクミン、グリーンチリ、コリアンダー、ニンニク、ミント、そしてココナッツの香りに負けない味わいが楽しめる。スパイス料理の産地でも、サツマイモはさかんに食べられているのだなあ……と納得する絶妙なマッチング具合。このペアリングはけっこう発見です!

パキスタン風ポテサラのレシピ
〈材料 4~5人分〉
・ジャガイモ(中) 4~5個(皮を剥き、4等分にして茹でる)
・ココナッツオイル 大さじ1
・クミンシードA 小さじ1
・クミンシードB 小さじ1(焙煎してスパイスクラッシャーで粗挽きに)
・玉ねぎ (中玉1/2) みじん切り
・ニンニク 1片(みじん切り)
・生姜 1片(すりおろし)
・グリーンチリ 1本(種を抜き、みじん切り)
・香菜 20g(みじん切り)
・ターメリック 小さじ1/3
・スペアミント(生) 8g( みじん切り)
・塩小さじ1

〈作り方〉
 切ったジャガイモを茹で、芯まで柔らかくなったらお好みで潰す。
 ココナッツオイルで、クミンシードAを炒めプチプチとしてきたら、ニンニク、生姜、玉ねぎ、グリーンチリを加え、薄い茶色になりふちに焦げ目がついてくるまで、4分ほど炒める。
 ターメリックと香菜を加え、全体を絡めるように炒め、1の潰したポテトを馴染ませる。弱火にしてスペアミントと塩を加えて混ぜ合わせる。
 お好みで適量の塩(分量外)を足し、上からクミンシードBをトッピングで振りかけ、温かいうちにサーブ。

食べる&飲む手が止まらない!
手羽中のカレー炒めと〈春の天狗櫻〉

3品目はおつまみとしても、メインとしても行けそうなお肉のメニュー。福岡のカレーの名店・スパイスロード『手羽中三昧』を使うと簡単にできる、やみつきになること間違いなしの〈手羽中のカレー炒め〉だ。合わせる焼酎は鹿児島県・白石酒造の芋焼酎〈春の天狗櫻〉で! 年に一度だけの限定発売銘柄であるこちらは、芋焼酎の魅力のひとつである“香り”に着目して、通常とは異なる酵母を使うと共に、製造された芋焼酎の中でも、特に香りに特徴のあるものを瓶詰めした一本。スパイスの生み出すカレー風味と、芋の甘味がマッチするペアリングだ。たくさん食べたい人はソーダ割で手羽中の油分を流しながら飲んでもよし、お湯割りで香りを楽しむのもよし。お酒も鶏肉も止まらなくなるのが悩みといえば悩み!

手羽中のカレー炒めのレシピ
〈材料 2~3人分〉
・スパイスロード福岡『手羽中三昧』 適量
・塩 適量
・鳥手羽中  8~10本
・油 適量

〈作り方〉
 スパイスロード『手羽中三昧』スパイスと塩を鳥手羽に揉み込んでおく。
 フライパンを熱し、油をひいて手羽中を並べて焼く。
 両面焼いて、中まで火が通れば出来上がり。

さては最強?!
スパイスカレー✕〈ユアマイスイートポテト

本格的なスパイスカレーは大好きだけど、家でタマネギを炒めるのはけっこう面倒……。そんな人に向けて、福岡のカレーの名店・スパイスロードのカレースパイスを使った、簡単レシピをご紹介。

合わせるのは、ウサトラがスパイス料理のためにつくった〈ユアマイスイートポテト〉。芋の甘い香りが、スパイスの持つ香りや辛みとマッチする1本は、ソーダ割でハイボールにしてももちろんおいしいし、お湯割りにすることで広がる芋ならではの甘い香りをスパイスの効いたカレーと楽しむのも通っぽい。

ちなみにこの「ユアマイスイートポテト」の名づけ親がイギリスのグラミー賞受賞アーティストBASEMENT JAXXのFelix Buxtonという裏話も……。音楽畑の村雲さんたちらしい人脈でできあがった銘柄でもあるのだ。

スパイスカレーのレシピ
〈材料 2人分〉
・スパイスロード福岡『開運カレー』スパイス  1袋
・鶏肉 300g                       
・トマト 150g (中玉1/2個、小口切り)
・ニンニクとショウガ  1かけずつ (すりおろし又はみじん切り)
・塩、砂糖 小さじ 1/2強ずつ(お好みで塩だけでも)
・油 45cc(テーブルスプーン3杯)
・水 300cc

〈作り方〉
 ニンニク、ショウガを中火できつね色になるまで炒める。
 トマトを加え、しっかりジャム状になるまで炒めます。
 鶏肉を加え炒めます。
 スパイスロード『開運カレースパイス』1袋、塩、砂糖を加えて混ぜ合わせます。
 水を加えてお好みの状態になるまで煮詰めれば出来上がりです。

ワンポイントアドバイス!

最初に鶏皮だけをしっかり炒め、鶏皮を取り出した後の油でニンニク、ショウガを炒めると、鶏のコクを引き出してより美味しくなります。

スパイス&焼酎で食後もうっとり。
チャイアイスクリーム✕〈龍宮らんかん〉

辛いものを食べたあとは、やっぱり甘いものも食べたくなる……。そんな欲張りな私たちを見越したように、村雲さんが出してくれたのはチャイの風味が濃厚なアイスクリーム! しかも食後酒のように楽しめるペアリングつきでの提案だ。合わせるのは、同じさとうきびからできる蒸留酒・ラムを彷彿させる黒糖焼酎の〈龍宮 らんかん〉〈琥珀 龍宮〉。〈龍宮〉をつくるのは、鹿児島県奄美市の富田酒造場。1951の年創業以来使い続ける甕壺で、特徴的なキレと芳醇な味わいを生み続ける蔵元だ。

無濾過原酒を2年貯蔵した〈龍宮 らんかん〉はまろやかさと黒糖の甘みのある味わい。樽香やより甘みを強く感じたい方には樽貯蔵の〈琥珀 龍宮〉がオススメ。どちらも40度を超える焼酎だが、その度数を感じさせない、でもインパクトもあって、食後にキュッとひっかけるのにピッタリの本格焼酎だ。

チャイアイスクリームのレシピ
〈材料〉(4~5人分)
・チャイ 300cc (市販、または紅茶にシナモン、カルダモン、クローブを入れて煮出してもOK)
・生クリーム 200cc
・卵黄 5個
・砂糖 80g

〈作り方〉
 出来上がったアイスクリームを入れる容器を冷凍庫で十分に冷やしておく。
 鍋に牛乳、煮出したチャイを入れ沸騰させる。
 別のボウルに卵黄と砂糖を入れ、泡立て器で白っぽくなるまでよくかき混ぜる。
 2が沸騰したら1/2量を3にいれ、よく混ぜて鍋に戻す。
 弱めの中火にし、木べらで絶えず混ぜながらとろみがつくまで火にかける。木べらについたクリームに指で線が描けるくらいまでとろみを出す。
 5を漉し、氷水に当てて冷たくなるまで冷やす。
 ラップをかぶせ、冷凍庫に入れて冷やし固め、1~2時間たったら、固まりかけているところをハンドミキサーで全体をかき混ぜ、再び冷凍庫に入れる。
 この作業を3~4回繰り返し、あとは冷凍庫で完全に冷やし固める。

ウサトラ、九州に上陸!?

はー! お腹いっぱい、ほろ酔いにもなりました! 「兎と寅」の絶品スパイス料理ペアリング、おうちでも試せるレシピなのがとてもうれしい……。読者の皆さんも、本格スパイス料理と本格焼酎、ぜひおうちでも試してみてください。

でもやっぱりお酒はお店で飲むのが好きという方は、ぜひ「兎と寅」へ。毎週木曜日限定で角打ちを営業中。こだわりのセレクトされた焼酎を楽しみに遊びに行ってみてください。

そして、朗報。なんと2021年5月に宮崎市佐土原町に、「兎と寅」2号店がオープンします。東京都西麻布のお店とはまた違った140年の古民家を活用したコンセプトで、空間も焼酎も楽しめること間違いなし。東京で、宮崎で。ぜひ訪れてみてほしいお店です。

兎と寅 
東京都港区西麻布 2-25-11 1F →HP

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