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10月のおすすめ|奄美群島が誇る黒糖焼酎。熟成タイプのおすすめ15本。
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7月26日に世界自然遺産に登録された奄美(正しくは「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」)。そのニュースを受けて、本来ならばバカンスシーズンも賑わったはずでしたが、今年は比較的静かな夏を過ごしたところが多かったのではないでしょうか。島々を訪れたかった(私たちもです!)人々は、恋い焦がれる気持ちをより強くしているはずです。

奄美といえば、焼酎好きにとっては黒糖焼酎が生まれるエリア。黒糖を原料にした焼酎は、奄美群島でしか製造が許可されていないため、焼酎だけでなくあらゆるお酒のなかでも、地域性が特に豊かなお酒といえます。世界自然遺産登録のニュースを聞いて、黒糖焼酎が飲みたくなった、気になったという方も少なくないのではないでしょうか。

さらに黒糖焼酎は、和酒と洋酒をつなぐ可能性に満ちたジャンルでもあります。

「日本のラム酒」ともいわれる黒糖焼酎。ラムとの大きな違いは、黒糖焼酎が麹を使って仕込む点です。麹はお酒に奥行きのある味わいと、焼酎らしい優しさ、丸さをもたらします。一方で、ラムと同様に樽などの熟成と非常に相性がいいのも大きな特徴。実際に、昔から多くの蔵元が熟成焼酎づくりを行っているようです。

というわけで今月は、黒糖焼酎の熟成タイプのおすすめをどどんと15本紹介します。奄美群島には、世界遺産の対象地域以外にも、喜界島や沖永良部島(どちらも美しい島々!)があります。いずれの島でも黒糖焼酎がつくられていますので、今回の記事ではこの2島も含みました(黒糖焼酎の熟成銘柄を手がけている蔵元はほぼ網羅しているはず!)。

今回の世界遺産登録を機に、黒糖焼酎も世界に伝えるべく、ぜひ何本もトライしてみてくださいね。

奄美大島の黒糖焼酎

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 01
〈天孫岳〉 西平本家

奄美大島を創生した2人の神、阿摩弥姑(あまみこ)と志仁礼久(しにれく)が最初に降り立ったとされる、奄美大島の中でも神聖な場所・天孫岳を商品名に冠した黒糖焼酎。黒糖らしいとろりとしたコクと、口に含んだときのパンチのバランスがいい、オーク樽熟成の銘柄です。蔵元の西平本家は1925年に喜界島で創業し、27年から奄美で操業。3つの弁がある特殊な常圧蒸留器を使っていて、天孫岳の景色も合わせて、いつか実際に見てみたいなあ……。奄美の美しい自然に思いを馳せてしまいます。

天孫岳
貯蔵 樽貯蔵(オーク・2年以上)
度数 30度
原材料 黒糖・米麹
蒸留 常圧

蔵元 西平本家 WEB →
所在地 鹿児島県奄美市名瀬

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 02
〈一村〉 町田酒造

TWSCを2年連続金賞受賞した〈里の曙 GOLD〉をフラッグシップに、貯蔵・ブレンドの技術を生かした黒糖焼酎を手がける奄美大島の町田酒造。奄美・鹿児島限定で発売している〈一村〉は、樫樽で3年以上貯蔵した原酒をブレンド。ふくよかな樽香と、黒糖の爽やかな甘みのバランスが絶妙で、ロックやハイボールはもちろん、フルーツサワーのベースとしてもぴったり! どんな飲み方もすんなり受け入れてくれる、懐の深い味わいが印象的な1本です。

一村
貯蔵 樽貯蔵(3年以上)
度数 25度
原材料 黒糖・米麹
蒸留 常圧・減圧のブレンド

蔵元 町田酒造  WEB →
所在地 鹿児島県大島郡龍郷町

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 03
〈らんかん〉 富田酒造場

昔ながらの甕仕込みで、雨量が少なく、潮風の吹く波照間島・多良間島のサトウキビを醸した〈龍宮 30度〉がよく知られる富田酒造場。〈らんかん〉は、その〈龍宮〉の原酒を無濾過の状態で2年間熟成させたもの。年に一度、ごく少量だけ出荷される限定酒です。度数は40度とかなり高いのに、まろやかすぎてするするっと飲んでしまうのが困りものといえば困りもの。いつも気がつけばほろ酔いを超えています(汗)。冷凍庫でとろとろに冷やしてパーシャルショットでクイッとやるのもおすすめ。黒糖の甘みの奥に、海から吹いてくる潮風のきりりとした感じが広がります。

らんかん
貯蔵 タンク貯蔵(2年)
度数 44度(製造年によって異なる)
原材料 黒糖(沖縄産)、米麹(国産米)
蒸留 常圧

蔵元 富田酒造場   オンラインショップ→
所在地 鹿児島県奄美市名瀬

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 04
〈まんこい〉 弥生焼酎醸造所

蔵元の弥生焼酎醸造所は、黒糖焼酎の蔵元としては最古参のひとつで、1922年の創業。千客万来の願いを込めたこちらの〈まんこい〉は、レギュラー酒〈弥生〉をオーク樽で3年熟成した1本。熟成によって黒糖の風味が厚みを増していて、とても飲みやすく仕上がっています。蔵元のお薦めでもあるレモンサワーは確かに抜群! 櫛形に切ったレモンをたっぷりと入れると見た目にもかわいく仕上がります。うま味のぎゅっと詰まった一杯なので、ぜひ試してほしいです!

まんこい
貯蔵 オーク樽貯蔵(3年)
度数 30度
原材料 黒糖、白麹
蒸留 常圧

蔵元 弥生焼酎醸造所 WEB →
所在地 鹿児島県奄美市名瀬

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 05
〈加那〉 西平酒造

奄美の方言で「愛しい人」という意味がこめられたこちら。奄美群島の中でも数少ない女性杜氏で、ミュージシャンとしての顔も持つ杜氏の西平せれなさんが手がけた〈加那〉は、優しい樽の香りとまろやかでさわやかな味わいが特徴。食中酒で水割りやソーダ割りで楽しむなら、香ばしいニンニクの利いた料理や、燻製チーズなどのおつまみにもぴったり。また少量をバニラアイスにかけて香りと一緒に楽しんだり、ストレートをこっくりとした味わいのチョコレートに合わせたりと、食後酒としても楽しめます。

加那
貯蔵 樽貯蔵(1年以上)
度数 30度
原材料 黒糖・米麹
蒸留 常圧

蔵元 西平酒造 WEB →
所在地 鹿児島県奄美市名瀬

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 06
〈紅さんご〉 奄美大島海運酒造

透明なボトルにこっくりとした琥珀色がとても上品な〈紅さんご〉。奄美大島に数年在住経験がある友人に「黒糖飲むなら、これ絶対おすすめ!島の女子がめっちゃ好きなやつ!」と教えてもらい、この銘柄を知りました。樫樽での長期熟成で醸し出された香ばしくも甘いフレーバーが特徴で、度数は40度と高め。でもロックでちびちび飲んでるとそんな度数も忘れてしまう飲み口で、つい飲み過ぎてしまいます。飲み方としてはほかに、キンキンに冷やしたソーダでのハイボールもおすすめ! しゅわしゅわの泡がはじけてふくよかな香りがふわっと香るのがたまりません。黒糖焼酎好きはもちろん、ウイスキーが好きな方にもぜひおすすめしたい1本です。

紅さんご
貯蔵 樽貯蔵(3年)
度数 40度
原材料 黒糖・米麹
蒸留 常圧

蔵元 奄美大島海運酒造 WEB →
所在地 鹿児島県大島郡宇検村

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 07
〈高倉〉 奄美大島酒造

新鮮で濃厚な奄美大島産の純黒糖だけを使用してつくる奄美大島酒造の〈高倉〉。3年以上熟成した原酒を、樫樽で琥珀色になるまで寝かせてできあがるお酒は、黒糖のまろやかな風味とウイスキーを思わせるようなスモーキーさが見事にマッチしています。蔵元が黒糖と同じくらいこだわっているのが、焼酎づくりに欠かせない水! 奄美で一番おいしいとされる龍郷町の「じょうごの川」の水を地下120mから汲み上げ、仕込み水や割り水に使用しているそう。奄美大島の大自然の恩恵をまるごと詰め込んだ1本はロックにして楽しむのはもちろん、水割りやお湯割り、カクテルベースとしても楽しめます!

高倉
貯蔵 樽貯蔵(3年以上)
度数 30度
原材料 黒糖・米麹
蒸留 常圧

蔵元 奄美大島酒造 WEB →
所在地 鹿児島県大島郡龍郷町

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 08
〈あまみ長雲 長期熟成貯蔵〉 山田酒造

奄美大島・龍郷の鬱蒼とした緑の中にある山田酒造。家族4人と職員1人で営む小さな蔵ですが、この10年ほどはサトウキビの自社栽培にも乗り出すなど、独自の黒糖焼酎づくりをコツコツと続けています。レギュラーの〈長雲〉のほか、〈一番橋〉〈山田川(やまだごう)〉など、生み出す黒糖焼酎はどれも個性が強い! なかでも5年以上の長期熟成を行ったこの〈あまみ長雲 長期熟成貯蔵〉は王者の風格。それまで黒糖焼酎といえばすっきりしすぎてつかみどころがない印象だったのですが、鹿児島のとある居酒屋でこちらのお酒に出会い、とてもいい意味で先入観をひっくり返されました。本当に糖分ゼロなの?!と思ってしまうほどの奥深く丸い甘み、余韻の長さ……。以来一升瓶で常備していますが、割るのももったいなくて大切にチビチビと飲んでしまう、そんなお酒です。

あまみ長雲 長期熟成貯蔵
【本格黒糖焼酎】
貯蔵 ステンレスタンク貯蔵(5年以上)
度数 30度
原材料 
米麹(タイ米・白麹)、黒糖(沖縄県産)
蒸留 
常圧

蔵元 山田酒造
所在地 鹿児島県大島郡龍郷町

徳之島の黒糖焼酎

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 09
〈奄美エイジング〉 奄美酒類

徳之島の5つの蔵元の原酒をブレンドし、さまざまな商品化を行う奄美酒類。熟成タイプも昔から多く展開していて、バニラのような香りが特徴のどっしり系樽貯蔵の〈ブラック奄美〉(40度)や、黒糖の香りが豊かに広がるタンク5年貯蔵の〈奄美5年古酒〉(40度)などが知られます。今回ピックアップした〈奄美エイジング〉は、樽貯蔵の3年もの。度数は低めの25度ですが、しっかりした樽の香りと、黒糖焼酎本来の甘みのバランスがとてもよく、黒糖焼酎入門編としてもうってつけ。価格も手頃なので、コーラやジンジャーエールなど割りものも自由に攻めるのもいいかも。日常酒としておすすめです。

奄美エイジング
貯蔵 樽貯蔵(3年以上)
度数 25度
原材料 黒糖・米麹
蒸留 常圧

蔵元 奄美酒類  WEB →
所在地 鹿児島県大島郡徳之島町

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 10
〈あじゃ 黒〉 奄美大島にしかわ酒造

徳之島に2件ある焼酎蔵のうちのひとつ、奄美大島にしかわ酒造は、黒糖焼酎〈島のナポレオン〉でよく知られる蔵元。1990年創業という比較的新しい蔵ながら、甕壺仕込みにこだわるなど伝統的な焼酎づくりを行っています。数ある焼酎のうち、甕熟成ものの〈あじゃ 黒〉は、黒麹のどっしりとしたコクと、熟成によるまろやかな口当たりが印象的。濃いめのお湯割りやロックで、ガツンと黒糖の香りを楽しむのがオススメです。

あじゃ 黒
貯蔵 甕貯蔵(1年以上)
度数 25度
原材料 黒糖・米麹
蒸留 常圧

蔵元 奄美大島にしかわ酒造  WEB →
所在地 鹿児島県大島郡徳之島町

喜界島の黒糖焼酎

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 11
〈神喜の目醒め〉 朝日酒造

奄美群島の中でも最も東に位置し、珊瑚礁が隆起してできた自然豊かな喜界島。1916年の創業以来、奄美群島の蔵元の中でも一番古くから黒糖焼酎づくりをしている朝日酒造による〈神喜の目醒め〉は、バーボン樽やシェリー樽など樽違いで6種も用意された樽熟成好きにはたまらないシリーズ。そのなかから、今回はラム樽熟成の1本をご紹介します。黒糖焼酎の原料となるサトウキビは、有機農法にこだわって自社で育てていて、農薬・除草剤・化学肥料は不使用。〈陽出る國(しま)の銘酒〉をタンクで10年以上熟成させた後、さらにラム樽で2年間熟成した〈神喜の目醒め ラム樽熟成〉はバニラのような甘い香りと風味が特徴。夜の深い時間に、ロックでゆっくり時間をかけて飲みたくなる味わいです。高級感のあるスタイリッシュなボトルなのでプレゼントにも!

神喜の目醒め ラム樽熟成
貯蔵 タンク(10年~17年)、樽(2年)
度数 42度
原材料 黒糖・米麹
蒸留 常圧

蔵元 朝日酒造  WEB →
所在地 鹿児島県大島郡喜界町

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 12
〈三年寝太蔵〉 喜界島酒造

朝日酒造と並び、喜界島の焼酎づくりを支える喜界島酒造。貯蔵・熟成には特にこだわり、レギュラー酒〈喜界島〉を中心としてどの銘柄も熟成やブレンドをしてつくられています。なかでも黒糖焼酎ファンから根強い人気を誇るのが今回取り上げた〈三年寝太蔵〉。3年熟成の原酒をベースに5〜10年熟成の古酒をブレンドしたまろやかな味わいは、30度あることを忘れてしまうほど。一口飲めば黒糖の爽やかな甘みが口いっぱいに広がる、黒糖焼酎界の実力派です。

三年寝太蔵
貯蔵 タンク(3年をベースに5〜10年ものをブレンド)
度数 30度
原材料 黒糖・米麹
蒸留 常圧

蔵元 喜界島酒造  WEB →
所在地 鹿児島県大島郡喜界町

沖永良部島の黒糖焼酎

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 13
〈白ゆり〉 沖永良部島酒造

奄美大島からさらに南に向かい、沖縄とはもう目と鼻の先ほどにある沖永良部島。人口わずか13,000人ほど、春にはフリージアが咲き乱れるのこの島には、焼酎の醸造所がなんと6つもあるのだそう。沖永良部酒造は、島内の4つの蔵元の原酒をベースに、代表銘柄〈稲乃露〉などを製造。こちらの〈白ゆり〉は、そのなかではもっとも重厚な味わい。それでいて華やかさがあるのが特徴。これは、樽熟成とタンク熟成をブレンドしているためで、樽熟成のみだと樽香が全面に出てしまうけど、黒糖焼酎らしい豊かな香りをタンク貯蔵酒が補っています。熟成の異なるブレンドは珍しいため、ぜひ複層的な味わいを堪能してください。

白ゆり
貯蔵 樽貯蔵とタンク貯蔵のブレンド
度数 40度
原材料 黒糖・米麹
蒸留 常圧

蔵元 沖永良部酒造  WEB →
所在地 鹿児島県大島郡和泊町

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 14
〈水連洞 5年貯蔵〉 新納酒造

新納酒造は、創業100年を超える島内屈指の歴史ある蔵元。さらに、扱う商品はどれも個性的。沖永良部島の黒糖焼酎は、奄美大島のものに比べると黒糖の使用量が多いことが昔からの特徴で、代表銘柄の〈天下一〉の香りの強さにそのことを感じられます。また、〈天下無双〉では、もろみに黒糖を直接投入する新しい製造法を導入。また、減圧蒸留によってすっきり飲みやすくした〈をちみず〉も。そんな黒糖焼酎の魅力を多角的に教えてくれる蔵元の代表古酒が、この〈水連洞〉。原酒を仕次ぎ(継ぎ足し)によって、タンクで5年以上寝かせ、深い深い味わいの熟成酒を実現。樽熟成もいいけど、こういった日本の伝統的な熟成の味わいも知ってほしい。そう思わせる銘品です。

水連洞(すいれんどう)
貯蔵 タンク貯蔵(5年以上)
度数 40度
原材料 黒糖・米麹
蒸留 常圧

蔵元 新納酒造
所在地 鹿児島県大島郡知名町

黒糖の熟成焼酎のおすすめ 15
〈昇龍〉 原田酒造

沖伊良部島に蔵を構え、50年ほど前から長期貯蔵酒をつくり続ける原田酒造。蔵の代表銘柄〈昇龍〉は、赤ラベル(30%)、白ラベル(25%)、青ラベル(18%)とアルコール度数の異なる3種類画をラインナップ。どれも5年以上オーク樽で熟成していて、クリーミーなバニラ香と黒糖の甘みがバランス良く広がります。しっかりめの赤ラベルはハイボールに、軽やかな青ラベルはそのまま冷やしてストレートで。飲むシーンや好みの飲み方によって度数を変えられる万能な銘柄です!

昇龍
貯蔵 樽貯蔵(5年以上)
度数 30度(赤ラベル)、25度(白ラベル)、18度(青ラベル)
原材料 黒糖・米麹
蒸留 常圧

蔵元 原田酒造 WEB →
所在地 鹿児島県大島郡知名町

写真協力:公益社団法人 鹿児島県観光連盟(トップ画像)

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