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おうちで簡単オリジナル焼酎!|樽スティックで樽熟焼酎をつくってみた。- 熟成編

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おうちで簡単オリジナル焼酎!|樽スティックで樽熟焼酎をつくってみた。- 熟成編

Text & Photo : SHOCHU NEXT

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お酒に浸しておくだけで樽熟成の風味が楽しめるという、魔法のようなアイテム「樽スティック」。熟練した技術と経験を必要とする樽熟成を自宅で簡単に楽しめるとの触れ込みですが、果たして本当に樽熟成の香りや味になるのでしょうか?

前回はその準備編として、4種類の樽スティック「Taru Flavor」と、焼酎・泡盛の組み合わせを紹介しました。そして今回はついに熟成編! 20日間(プラスα)かけて書き留めたテイスティングノートを一挙公開します。いやあ楽しかった!


樽スティックで樽熟成焼酎づくり:5日目

前回は樽スティックを漬けるところまでを紹介しました。最初のテイスティングは熟成から5日目。2〜3日で樽スティックが水分を吸収し、瓶の底に沈み始めました。液体の色はどんどん濃くなり、あっという間にどの銘柄も琥珀色に。よく見比べると、〈白岳 しろ〉×くりが、若干色が濃く出ています。

熟成5日目の状態。左から〈カリー春雨〉×やまざくら、〈朝日〉×ミズナラ、〈青鹿毛〉×アメリカンホワイトオーク、〈白岳 しろ〉×くり。くりは水分の吸収率が低いせいか、沈むのが遅い。

テイスティングしてみると、全体的にアルコールの刺激が抑えられ、まろやかな口当たり。5日間でもすでに熟成が進んでいることがわかります。肝心の樽香やスモーキーな味わいは、探せばうっすらと感じられるものの、焼酎本来の存在感が依然として強め。樽スティックによる香りや味わいの違いを感じるには、まだまだ熟成が必要そうです。

樽スティックで樽熟成焼酎づくり:10日目

熟成開始から10日経つと、くり以外の樽スティックは完全に瓶底に沈み、色もさらに濃くなりました。色の濃さは〈白岳 しろ〉×くりがやはり一番。初日は色づきが早かった〈朝日〉×ミズナラと〈青鹿毛〉×アメリカンホワイトオークは、変化が緩やかになっています。

5日目にはまだまだだった樽の香りや味わいも、10日目になるとずいぶん変化が感じられるようになりました! なのでここからテイスティングノートをつけてみます。

熟成10日目の状態。左から〈カリー春雨〉×やまざくら、〈朝日〉×ミズナラ、〈青鹿毛〉×アメリカンホワイトオーク、〈白岳 しろ〉×くり。

樽スティック熟成10日目:テイスティングノート

〈カリー春雨〉×やまざくら:燻したような香りが優しく立ち始めた。泡盛の持つ独特な香りはやや控えめ。香ばしい味わいが泡盛のコクも引き出している。

〈朝日〉×ミズナラ:しっかりとしたミズナラの甘い香り。一方で、焼酎のトマト感のあるフレッシュな香りの存在感もあり、香り同士が喧嘩してしまっている

〈青鹿毛〉×アメリカンホワイトオーク:〈青鹿毛〉特有の麦の香りが強烈で、樽の香りはうっすらと感じられる程度。味わいにも大きな変化は見られない。

〈白岳 しろ〉×くり:爽やかな樽香があるものの、樽スティック由来の渋い味わいが浮いている印象。〈白岳 しろ〉の持つ米の甘みとうまくなじんでいない。

「10日もすれば樽香がついた立派な樽熟焼酎になるんじゃないの?」と内心期待していたのとは裏腹に、樽スティックと焼酎・泡盛の香りがなじんでいないものが大半。味も香りも確かに変わってはいるけれど……。樽熟、想像以上に難しい(当たり前です)! しかしまだまだ設定した熟成期間の折り返し地点。ここはグッと我慢して、瓶を撫でてあげてから(だんだんかわいくなってきました)再び寝かせます!

樽スティックで樽熟成焼酎づくり:15日目

熟成開始から15日。色はあまり濃くならず、10日目のものと見比べても、ルックスに大きな変化はありません。

しかし! 10日目に比べて風味は格段に向上しました! 諦めかけるほどバラバラだった樽スティックと焼酎の香りがまとまり始め、これまでになかった香りも出てくるようになります。

熟成15日目の状態。左から〈カリー春雨〉×やまざくら、〈朝日〉×ミズナラ、〈青鹿毛〉×アメリカンホワイトオーク、〈白岳 しろ〉×くり。

樽スティック熟成15日目:テイスティングノート

〈カリー春雨〉×やまざくら:ウイスキーのような芳醇な香りが際立ち、泡盛の香りは影を潜めた。口当たりがやや重くなり、角の立ったアルコール臭もある。

〈朝日〉×ミズナラ:10日目の時点でかなり残っていた黒糖の青っぽさが引っ込み、かわりにミズナラからくるフルーティな香りがふわっと立ち上りはじめた。口当たりはとろっとまろやかで、ほのかに黒糖の旨みも感じられる。

〈青鹿毛〉×アメリカンホワイトオーク:オークの香りが少し出てきたものの、麦の香りがやはり強烈。かすかな樽香が麦麹由来の香ばしさを後押しして、〈青鹿毛〉が本来持つ風味がより強く感じられる。

〈白岳 しろ〉×くり:くり特有のクセのある香りはあまり出ておらず、優しい樽香が鼻を抜ける。渋みがとれて、口当たりはサラッとマイルド。後味に丸みのある米の甘みを感じる。

10日目から15日目の変化は、ちょっと予想もしない劇的なものでした。さて最後の5日間でどんな変化を見せるのでしょうか……!

樽スティックで樽熟成焼酎づくり:20日目

樽スティックを漬け込み始めて約3週間。当初は、焦げ茶色くらいまでいくかなあと予想していたものの、10日目を境に色の変化はほとんどなし。見た目だけでは、どのくらい熟成が進んでいるのかはわからない状態です。よく考えたら樽熟成の焼酎は、大きな樽で何年も寝かされているのですから、3週間では全く比べものにならないのは当然ですね。

とはいえ毎日様子を眺めながらの樽スティック実験は、めちゃくちゃ楽しかった! 最終的な変化はどんなものでしょう。期待と緊張を胸にテイスティングします。

熟成20日目の状態。左から〈カリー春雨〉×やまざくら、〈朝日〉×ミズナラ、〈青鹿毛〉×アメリカンホワイトオーク、〈白岳 しろ〉×くり。

樽スティック熟成20日目:テイスティングノート

〈カリー春雨〉×やまざくらスモーキーさが増し、樽の香りはさらに重厚になった。泡盛のコクをベースに、どっしりとパンチのある味わい。

〈朝日〉×ミズナラ:黒糖の少し青っぽいような独特な香りはほとんど薄れ、青りんごのような甘やかな香りに。ミズナラの香りとの相乗効果で、黒糖のとろっと甘い風味が口いっぱいに感じられる。

〈青鹿毛〉×アメリカンホワイトオーク:かなり樽の香りは移ったが、やはりメインは麦の香ばしさ。むしろ日を増すごとに麦のまったりとした香りが強くなっている印象すらある。焼かれた樽材にも負けない“麦々感”を持つ〈青鹿毛〉、恐るべし……!

〈白岳 しろ〉×くり:くりの生っぽさは最後まで出ず、落ち着いた樽の香りに。〈白岳 しろ〉の包容力の高さによって、ほんのり甘く、全体的にバランスがとれた味わい。

最後の5日間で、どの組み合わせもグッと引き締まった味わいに。日数が経つにつれ、木材ごとの熟成の深みや度合いにも差が見られるようになりました。今回の結果、10日間熟成させるのはまず必須その先に急激に変化が訪れるので、できれば2〜3週間は辛抱強く待ちましょう

なんと90日目に驚きの変化が……!

わずか数週間で全く他のお酒へと変化させる驚きのアイテム「樽スティック」。20日間でひとまず実験は終了……のはずでしたが、熟成自体はその後も続行。実験以降さらに3ヶ月寝かせていた(ていうか放置してました)ところ、色が少し濃くなっている! すかさずテイスティングしてみると、劇的な味わいの変化を見せていました! 僕がのろまでよかった!

熟成90日目の状態。左から〈カリー春雨〉×やまざくら、〈朝日〉×ミズナラ、〈青鹿毛〉×アメリカンホワイトオーク、〈白岳 しろ〉×くり。

樽スティック熟成90日目:テイスティングノート

〈カリー春雨〉×やまざくら:芳醇な樽香とは打って変わり、鼻の奥にギッと刺さる強いセメダイン臭。味わいはどっしりと力強く、アルコール30度とは思えないほど。

〈朝日〉×ミズナラ:一口飲むと、干しぶどうのような風味が広がり、黒糖焼酎というより、ピスコに近い味わい! とろみがさらに増し、アルコールのピリッとした刺激が後味にやってくる。

〈青鹿毛〉×アメリカンホワイトオーク:最後まで残り続けていた強い麦の香りが影を潜め、オークのスモーキーな樽香が前に出てきた。〈青鹿毛〉本来の麦のコク自体はしっかりと残り、樽熟麦焼酎らしい芳醇で力強い味わいに大変身。

〈白岳 しろ〉×くり:うっすらとエタノール臭はあるが、ふくよかな香りはそのまま。舌触りはするりとなめらかで、違和感が全くないまとまりのある味わい。

3ヶ月の熟成を経て、どの銘柄もがらりと様変わり。色の変化もあることを踏まえると、まだまだ変わっていく気配すら感じられます。我慢強い人は半年、1年と寝かせ続けると、さらにオリジナリティのある樽熟焼酎ができるかもしれません!

何度もチャレンジして好みの味に仕上げよう!

簡単に樽熟成が楽しめる反面、一度ハマると奥が深い樽スティック。たった数日でも味や香りが変わるので、定期的にテイスティングノートを書き留めて、ここだ!というタイミングで瓶から取り出すのが重要なポイントです。使い終わった「Taru Flavor」は、熟成の程度は低くなるものの、繰り返し使えるそう。一度で好みの味に仕上げるのは至難の業ですが、何度もチャレンジしてベストな樽熟焼酎をつくってください!

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