クラフトスピリッツを再発見するWEBマガジン

海外に伝えるべき焼酎の魅力って?|英語で本格焼酎・泡盛を語るイベントレポート

トピックス

海外に伝えるべき焼酎の魅力って?|英語で本格焼酎・泡盛を語るイベントレポート

Text & Photo : SHOCHU NEXT

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • Lineで送る

12月1日に北区王子の「旧醸造試験所第一工場(赤レンガ酒造工場)」で開催された『赤レンガ酒造工場お酒講座 外国人に伝える本格焼酎・泡盛の魅力』。焼酎利酒師にして『SHOCHU HANDBOOK』の著者、クリストファー・ペレグリニさんを講師に迎え、各国語の通訳案内士を対象に開催されたこの講座は、本格焼酎を海外へ紹介する際のヒントの宝庫でした。ここではその一部をご紹介します。日本産酒類のインポーター、ディストリビューターの方、海外のお友だちに焼酎の魅力を伝えたい方、お探しのコツはここにあるかも! 


日本に近代的な酒づくりを広めた拠点から、世界へ

渋沢栄一が長く屋敷をかまえた東京・北区の飛鳥山。歴史あるこの公園からもすぐそばにある「旧醸造試験所第一工場(赤レンガ酒造工場)」を知っていますか? 緑の中に現れる赤いレンガ造りのこの建物は、明治末期の1904年に成立した、日本で最初の醸造試験所。当時まだ安定しなかった清酒の品質を改良することや、醸造方法の研究などを目的に設立された国営の研究所です。横浜の赤レンガ倉庫も設計した、日本で最初の近代建築家の一人・妻木頼黄(よりなか)の設計による建物は、国の重要文化財にも指定されています。

1904年に設立した「旧醸造試験所第一工場(赤レンガ酒造工場)」。ドイツのビール工場を手本に設計された明治期のレンガ造りの建築。

日本酒造組合中央会が主催する『赤レンガ酒造工場お酒講座 外国人に伝える本格焼酎・泡盛の魅力』の会場は、なんとこの旧工場のかつてのボイラー室! 日本の酒づくりの近代化に貢献し、日本中に品質のいいお酒づくりを普及した拠点が、今度は日本のお酒づくりを海外に広める拠点になるとは、なかなかロマンがありますよね。

12月1日開催の『外国人に伝える本格焼酎・泡盛の魅力』の受講対象者は通訳案内士。主にインバウンドの観光客に、英語・ドイツ語・フランス語・スペイン語といった各国語で日本の文化や伝統を伝える人々です。

「日本の酒情報館」館長の今田周三さん。日本酒・本格焼酎・泡盛の情報が集まり、テイスティングもできる「日本の酒情報館」も、インバウンドの方の目的地としてぴったり。

この日は虎ノ門の「日本の酒情報館」館長の今田周三さんによる、本格焼酎が現在置かれている状況のお話の後に、以前SHOCHU NEXTでもインタビューした、”焼酎の伝道師”クリストファー・ペレグリニさんが登壇。

『Japan’s Best-kept Secrets: Shochu & Awamori』と題して、本格焼酎・泡盛の基礎知識や、それを海外へと伝えていくための苦労や工夫について、ご自身の経験も交えながら話してくださいました。

日本最後&最高の秘密・焼酎を今こそ世界に伝えよう!

講義のタイトルは、「最後まで守られてきた日本の秘密:焼酎と泡盛」といった意味。国際化が進み、MANGAにSAKE、SUSHI……と日本の文化や伝統が世界で知られるなか、焼酎・泡盛は、まだ知られずに残されている最後の宝物、というわけです。

クリストファー・ペレグリニさん。海外でのイベントに焼酎を出品すると、かつてよりずっと強い興味を持たれ、長い列ができるそう。変化はジワジワと起きはじめている?!

「イギリスはウイスキーの聖地と言われるけれど、いざ日本に目をやると、スコットランドの半分の大きさしかない九州に、焼酎蔵が282、泡盛蔵が47も密集しているんですよ! 九州こそが蒸留酒の聖地です」

「世界的にブームを迎えているテキーラ。つくられている銘柄の65%が海外輸出を行っています。かたや焼酎・泡盛はたった1%。焼酎の風味の豊富さを考えたとき、どれだけ輸出の余地があるかわかりますよね」

「焼酎・泡盛は世界のどんな蒸留酒より繊細につくられます。発酵・蒸留といった過程に込められた技はどんなお酒にも負けない。そのことがきちんと伝わっていないのは大きな課題」

……どうですか? クリストファーさんが次から次に話す、本格焼酎が海外に出ていくべきこれだけの理由! 焼酎贔屓としては、海外の方に全部話してあげたいなあと、そわそわしてきます。講座は、アメリカ各地の酒類イベントなどにも参加して本格焼酎・泡盛を現地の人へ伝えているクリストファーさんが、海外の方に頻繁に聞かれる4つの質問に答えるかたちで続いていきました。

1 焼酎・泡盛って何?

2 清酒・ソジュ・ウォッカ・ラム・ウイスキーといったほか の酒類とどう違うの?

3 焼酎・泡盛はどうやってつくられているの?

4 どうやって飲めばいいの?

芋焼酎の〈小鶴くろ〉、米焼酎の〈減圧豊永蔵〉、麦焼酎の〈壱岐〉、黒糖焼酎の〈朝日25〉、泡盛〈瑞泉〉をテイスティングしながらの講座に、参加者の皆さんも夢中で聞き入った様子。

熱心にメモをとりながら講座に聞き入る受講者の皆さん。
アメリカ、フランス、ドイツなど、参加者によって通訳対象の国が様々なため、各国の蒸留酒と相性のいい本格焼酎に関しての質問が盛んに飛び交った。
参加者の渋谷奈津子さん(英語講師)は、「SAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)」の資格取得の勉強中に本格焼酎に興味を持ち、このイベントを受講したそう。

講義後の質疑応答では、赤レンガ酒造工場の参加者はもちろん、中継会場である福岡会場の参加者からもさまざまな質問が出されました。

なかでも、通訳する国の方によってどんな本格焼酎を薦めるべきかという質問が多かったのは印象的。クリストファーさんの回答の一部をここに紹介しておきましょう。

「どんな人にも、その人の味覚に合う、好きになってもらえる焼酎が必ずある。それは味のバリエーションが豊富な本格焼酎ならではです。確かに、あまりに風味が幅広いことが本格焼酎・泡盛をわかりづらくしているといえるけれど、やはりこれは強みです。海外の方に紹介する際には、その方がいつも何を飲んでいるか、から考えてほしいですね。

万能なのはおそらく黒糖焼酎。ラムとの比較で理解がしやすいと思います。多くのラムと異なり、甘みが足されていない、お酒そのものの味であることはアピールポイントになる。それから意外なところでは、ごま焼酎も、ごまというヘルシーな食材に注目が集まっているなかで強いでしょうね。ほかに、ウイスキーやコニャックが好きな方には樽熟成ものからが入りやすいですし、主にワインを飲まれる方には、紫やオレンジ色のサツマイモを使った焼酎が入り口になるでしょう。通訳士として、海外の方が本当の日本に出会う機会をつくる皆さん、ぜひそれぞれの方においしい一杯を見つけてあげてくださいね!」

赤レンガ酒造工場
https://akarengakouza.jp

日本酒造組合中央会
https://www.japansake.or.jp/

こちらもチェック!
クリストファー・ペレグリニさんに聞く、焼酎を世界に伝えるために必要なこと

世界のバーに焼酎が並ぶ日のために。蒸留酒・焼酎は世界に何を伝えるべきなのか。|クリストファー・ペレグリニ:NEXT焼酎人 #01 | 熟成を知る、焼酎を楽しむWEBマガジン 「SHOCHU NEXT」

アメリカ生まれのクリストファー・ペレグリニさん。2002年から東京に住むこの人は、本格焼酎と泡盛の世界に魅せられて、150の蔵を訪問。外国人では数人しかいない焼酎ソムリエの資格を取得し、国内外で本格焼酎・泡盛関連のイベントを開催。世界に焼酎を伝る彼の目に映る熟成焼酎とは、そして世界に伝える際の秘訣とは?

英語で焼酎の魅力を伝えたい?
こちらのシリーズもおすすめです!

焼酎ってどんな飲み物か英語で説明できる? | ねるの熟成焼酎英会話!#01 | 熟成を知る、焼酎を楽しむWEBマガジン 「SHOCHU NEXT」

博多生まれの29歳、繊維商社に勤める米倉ねるは、超がつくほどお酒好き。これは、さまざまな場所で出会う人々に、英語で熟成焼酎の魅力を猛アピールする彼女の焼酎奮闘劇。第1話目は焼酎とは何かを説明します。英語で伝えるには一体どんな表現が必要なのでしょうか!?

Share

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • Lineで送る