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SHOCHU NEXT的ドリンク・スマートのすすめ!|第2回「お酒の向き不向きってあるの?」

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SHOCHU NEXT的ドリンク・スマートのすすめ!|第2回「お酒の向き不向きってあるの?」

Text : Marina Takajo(SHOCHU NEXT), Taku Itoh(SHOCHU NEXT)
Illustration : Taku Itoh(SHOCHU NEXT)

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新しい時代のお酒との付き合い方を考えるドリンク・スマート連載の第2回。今回はお酒の向き不向きについて考えてみたいと思います。お酒を飲んだ後の身体の反応は人それぞれ。全く様子の変わらない人や、普段とはうってかわって陽気になる人もいます。反面、少量のお酒ですぐ顔が赤くなったり、頭痛や吐き気などの症状に襲われる人も…。みんな同じようにお酒を飲んでいても、どうして反応にこれほどの差が出るのでしょうか?
この疑問の答えを知るべく、第1回に引き続き、Bio Education Laboratory(BEL)の代表でもある木下健司先生にアルコールの体質についてお話を聞きます。

第一回の記事はこちら!

SHOCHU NEXT的ドリンク・スマートのすすめ!|第1回「酔いって何だ?」 | クラフトスピリッツを再発見するWEBマガジン

近年、SDGsやWHOが掲げる「アルコール世界戦略」を受けて、お酒の飲み方が世界的に見直されつつあります。日本の大手酒類メーカーも、「スマートドリンク」「スロードリンク」などのスローガンを掲げ、「お酒を飲む人も飲まない人も、自分の気分や体調、体質に合わせて自由に飲む量や飲むものを選べる」という新しい考え方を提唱しています。お酒を扱うメディアであるSHOCHU NEXTでも「ドリンク・スマート」と称して新時代の焼酎のあり方について考えていくことにしました。

アルコール体質は遺伝子によって決まる!

まずはアルコールの分解についてのおさらい! お酒を飲むと、アルコールは胃や腸で吸収され、血液に乗って肝臓へと運ばれます。

そうしてアルコールは肝臓で分解されますが、分解を行うのは2種類の酵素です。ひとつはアルコールをアセトアルデヒドに分解する「アルコール脱水酵素」。もうひとつはアセトアルデヒドを人体に無害な酢酸に分解する「アセトアルデヒド脱水酵素」。そしてこのふたつの酵素の働きを促す遺伝子の組み合わせがお酒の強さを決定しているのです!

アルコール脱水酵素を活性化させる遺伝子と、アセトアルデヒドを活性化させる遺伝子は、父親と母親のそれぞれから引き継がれる遺伝子の組み合わせによって決まります。この組み合わせを遺伝子型といい、肝臓の酵素の遺伝子型の組み合わせは全部で9通り。私たちはこれを飲酒後の症状を比較して大きく5タイプに分類しています」(木下先生)

遺伝子型からアルコール体質を5タイプに分類!

遺伝子型の組み合わせで分類した5タイプの特徴をそれぞれ見ていきましょう。

Aタイプ(日本人の5%):アルコール脱水酵素低活性・アセトアルデヒト脱水酵素活性

アルコールが身体に長くとどまり、アセトアルデヒドの代謝は早い。酔いやすい反面、不快な症状は出にくいため、楽しくお酒が飲めてしまう! うらやましいような気もしますが、アルコール依存症になりやすいといわれています。またアルコールが体内に残りやすいため、運転する前などには十分注意をするようにしましょう。

Bタイプ(日本人の50%):アルコール脱水酵素活性〜高活性・アセトアルデヒト脱水酵素活性

アルコールとアセトアルデヒドのどちらの分解も早いため、酔いの症状も不快な症状も出にくいタイプ。そのため大量飲酒になることも多く、肝臓や膵臓に大きな負担をかけがちです。節度ある飲酒を心がけましょう!

Cタイプ(日本人の3%):アルコール脱水酵素低活性・アセトアルデヒト脱水酵素低活性

アルコールとアセトアルデヒドの分解がどちらも遅いタイプ。すなわち飲みはじめてすぐに酔っ払った状態になるものの、不快な症状はすぐには出ません。そのかわり、二日酔いにはなりやすく、咽頭がんや食道がんになるリスクも高いので飲み過ぎには要注意です。

Dタイプ(日本人の40%):アルコール脱水酵素活性〜高活性・アセトアルデヒト脱水酵素低活性

アルコールの分解は早いがアセトアルデヒドの分解は遅い。そのため、少量のお酒でも頭痛や吐き気などの不快な症状が出るタイプです。一応アセトアルデヒドの分解は行われるため、不快な反応に慣れれば多少は飲めるようになりますが、ガンやアルコール依存症のリスクには注意しましょう。

Eタイプ(日本人の4%):アセトアルデヒト脱水酵素不活性

アセトアルデヒドの分解ができないため、全くお酒が飲めない体質です。アルコールが含まれる食品や医薬品でも不快な反応を示すこともあり、このタイプの人にとってお酒は毒となります。無理してお酒を飲むことがないように気をつけましょう。

アルコール体質の豆知識

「先ほどの表で記したアルコール体質の割合は日本全国の平均値。東京や大阪など全国各地から人が集まる都会では平均値とほぼ似通った割合になりますが、九州地方や東北地方では割合はガラッと変わります。
鹿児島・熊本・宮崎など、南九州ではBタイプが80%を占めるんです。東北でも仙台より北は同様の割合になる。さらに以南、以北へと進むと、Bタイプの割合がほぼ100%になるんです。
これは古代の日本で生活していた人種と、途中から移住してきた人種との体質の差が現代でも見られるのではないかといわれています。

ちなみに欧米やアフリカの人たちはほぼ100%でAタイプ。飲酒にブレーキがかかりにくいため、海外では日本と比べてアルコール依存症は極めて深刻な問題だったりするんですよね。お酒が楽しく飲める体質だからってそれがいいとは限らない。結局はそれぞれにあった適正な飲み方をすることが重要です」(木下先生)

アルコールの体質を知ろう!おうちでできるアルコールパッチテストのやり方

アルコール体質の5タイプについてわかると、自分がどのタイプに当てはまるのか気になってきませんか?かといってすぐに体質検査を受けるのはなかなか難しいですよね。そこでBELでも紹介している簡易的なアルコール体質チェックのやり方をご紹介します。用意するものは絆創膏とアルコール消毒だけ!15分ほどで簡単にできるので、ぜひお試しください!

絆創膏でのアルコール体質チェックのやり方

①絆創膏の綿の部分に消毒用のアルコールを塗布する。
②腕のできるだけ白い箇所に貼り付けて、7分間待つ。
③7分経過したら、絆創膏を剥がして肌の色の1回目のチェック行う。
④さらに10分後、2回目のチェックを行う。

結果の見方

○…変化なし、×…肌が赤くなった

「1回目、2回目のどちらも変化がなかった人はA・B・Cタイプのうちのいずれかに該当するので、お酒が飲める体質といえます。
1回目は変化があまり見られなくても、2回目のチェックで赤くなっていた人はDタイプである可能性が高く、あまりお酒が強くない体質でしょう。
1回目のチェックから真っ赤な人は全くお酒が飲めないEタイプです。Eタイプにとってお酒は毒ですので、飲酒には十分な注意が必要です」(木下先生)

お酒に向き不向きはあるの?アルコールと体質について色々聞いてみた!

アルコール体質について色々とわかってきたら、我々お酒好きが実際に身をもって体験している様々な飲酒についても、疑問が湧いてきました。せっかくなので木下先生にこの疑問に答えていただきました!

アルコール体質は変わったりするの?

「基本的に遺伝子型が変わることはないので、アルコール体質は生まれた時から変わることはありません。つまり、お酒が飲めない体質の人が無理にお酒を飲んでも強くなることはないですよ!
逆にいえばアルコール体質は出生時にはもう決まっているわけですから、未成年の飲酒に対する考慮は十分に必要になりますが、その時に遺伝子型を調べておいて知っておくのもひとつの手ではないかと思います」

お酒って飲み続けると鍛えられるの?

「先ほども述べましたが、お酒の体質は生まれた時から変わりません。ただ、Dタイプの人は飲酒を続けることで不快症状に慣れて、お酒が飲めるようになるというケースが実はけっこうあったりします。アセトアルデヒドは不快症状を引き起こす成分といわれているのと同時に多幸感を与える物質にもなりうるといわれているので、そういったことも起因しているのではないでしょうか。
だからといって過度な飲酒を続けるとアルコール依存やがんなどの問題が発生するので、無理は禁物です!」

お酒の種類によって向き不向きってあるの?

「『ウイスキーなら気持ちよく酔えるけど、ワインだと飲んだ瞬間から気持ち悪くなっちゃう』というやつですよね。この質問はよく聞かれるんですが、実は私も答えを持っていなんですよ(笑)。
醸造酒に比べて、焼酎をはじめとする蒸留酒は酒中に含まれる成分が少ないため、二日酔いになりにくいとはよく言われますが、アルコールの分解自体は、お酒の種類に関係なく体内で行われますからね。実際のところの原因はわからないんです。こういった現象はアルコール体質というよりは、嗜好性の問題が大きく作用しているのではないでしょうか

アルコール検査はいつ受けるのがベスト?

私は高校を卒業した段階、18歳で受けてほしいと考えています。15年前からの10年間の飲酒事故を追っていたのですが、およそ30人の大学生が急性アルコール中毒で亡くなっているんです。しかも、そのほとんどがまだお酒の飲み方や自分のアルコール体質について知らない1年生と2年生でした。こういった事故が起こらないようにするためにも、飲み会やコンパなどに参加する前に自分のアルコール体質について知ってほしいのです。
BELでは大学や研究機関を中心にアルコール体質検査を行っていますが、こういった検査の結果が、事故を起こす前のブレーキのような役割になればと考えています」(木下先生)

自分の体質にあったお酒の飲み方を!

お酒は飲み過ぎなければ色々な面でいいところがたくさんあります。お酒を飲める人は自分の体質をよく理解して、自分にとって適切な量の範囲でお酒を楽しむことを心がければいいのではないでしょうか。
それからお酒が飲めない人だって飲み会やパーティを楽しんでいいと思うんです。お酒が飲めないなら烏龍茶でハイになればいい(笑)。私自身も実はお酒が飲めないDタイプなんですよ。だから飲み会では甘いお酒をゆっくり時間をかけて飲むようにしています。
お酒を飲める人は飲めない人をちゃんと理解して、みんなが飲み会やパーティを楽しめる文化をつくっていってほしいですね」(木下先生)

理学博士
木下 健司
米国ブラウン大学の研究教授や武庫川女子大学教授を歴任し、2018年に一般社団法人生命科学教育研究所(BEL)を設立。同代表理事に就任。遺伝子診断によるアルコール体質の理解や、飲酒にともなう生活習慣病・事故を防止するための研究・講演活動に熱心に取り組む。
一般社団法人 生命科学教育研究所(BEL:Bio Education Laboratory)について
2018年設立。遺伝子検査によるアルコール体質の理解と、健康増進に役立てる上手なお酒との付き合い方の啓蒙を行う。
公式サイト→

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