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焼酎のライバルってほんと? 韓国の蒸留酒「ソジュ」を知る

コラム

焼酎のライバルってほんと? 韓国の蒸留酒「ソジュ」を知る

Text : Kentaro Wada(SHOCHU NEXT)

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緑の瓶がトレードマークの韓国の蒸留酒「ソジュ」。今や、コンビニやスーパーでは必ず見かける、日本でも人気の蒸留酒です。同じアジアの酒であることから、焼酎のよいライバルともいえる「ソジュ」。ショーチューとちょっと発音が似ていますが、果たして焼酎と類似点はあるのでしょうか? その製法や味わい、人気の秘密について調査してみました。

韓国の蒸留酒「ソジュ」

韓国の蒸留酒「ソジュ」といえば、〈チャミスル〉や〈鏡月〉など、日本でも若者を中心に人気が高いお酒。コンビニやスーパーでも見かけたことがあるはずです。発音の近さから、海外では日本の焼酎と混同されることも少なくないソジュですが、本当に焼酎に似たお酒なのでしょうか? じっくりと解説してまいりましょう!

コンビニでもよく見かける〈チャミスル フレッシュ〉。

ソジュってどんなお酒?

複数の原料を混ぜてつくる「希釈式ソジュ」

1300年頃に、ペルシャから高麗に伝わった蒸留技術を起源とするソジュ。20世紀初頭までは、米を発酵させたもろみを単式蒸留してつくるものが一般的でした。しかし、1965年、全国的な米不足によって、伝統的なソジュを含め、米を原料とした酒づくりが禁止になります。代わってつくられるようになったのが、さつまいもや小麦、タピオカを原料に使ったソジュ。1991年に制限は解除されましたが、現在でも市場に出回るソジュの多くは、複数の原料を混ぜ合わせてできています

また、原料の規制とともに単式蒸留のソジュの数は減少しました。現在まで続く主流は、連続式蒸留による高純度のアルコールを加水して20度ほどに調整した「希釈式ソジュ」です。

日本で流通しているソジュのほとんども、この希釈式ソジュ。現在のソジュは、日本の「本格焼酎」よりも「連続式蒸留焼酎」に近い製法でつくられているというわけです。

韓国で市販されているソジュのほとんどは甘味料が入っているため、日本国内ではリキュール扱いに。日本仕様の〈JINRO 25〉は、甘味料を入れずに焼酎甲類として販売されている。

韓国の伝統蒸留酒「蒸留式ソジュ」

希釈式ソジュとは対照的に、単式蒸留器で蒸留する伝統的なソジュは「蒸留式ソジュ」と呼ばれます。現在、市場の大半は希釈式ソジュですが、蒸留式ソジュが完全になくなったわけではありません。

その代表が、韓国中部、安東(アンドン)地方でつくられる「安東ソジュ」。米を原料に単式蒸留で仕込み、製品化した際の度数は40度前後と希釈式ソジュに比べてアルコール度数も高いようです。1965〜1991年までは生産が途絶えていましたが、規制解禁後に復活。数少ない蒸留式ソジュとして脈々と受け継がれています。

伝統的な蒸留式ソジュの〈安東ソジュ〉。韓国では漢字でソジュ=「焼酒」と表記されますが、「焼酎」と書かれることもしばしば。韓国国内でも混同されているそう。

アメリカでは焼酎がソジュとして売られている⁉︎

焼酎(ショーチュー)と響きが似ていることから、欧米圏ではしばしば混同されることも多いソジュ。海外では、実際にソジュの名前で本格焼酎が売られてしまっているケースも。アメリカ・カリフォルニア州やニューヨーク州では、ソジュがワインの販売免許で販売可能。本格焼酎をソジュと表記して販売していることがあるのだそう。「SHOCHU」と「SOJU」、確かに響きは似ているけれど、中身は別物。同じ蒸留酒として認識されないよう、日本国内でもさまざまな動きが出ています。

国外での焼酎とソジュをめぐる話はこちらでも紹介

【前編】SHOCHUはこれからどこへ進むのか。杉山真さん(前・国税庁酒税課長)との対話 – クラフトスピリッツを再発見するWEBマガジン

2021年の日本の農林水産物・食品の輸出額が悲願の1兆円を突破。その中でアルコール飲料全体の輸出額は、61.4%増の1,146億円を記録しました。焼酎も前年比145%の約17億円。金額的にはまだまだ少ないものの、本格焼酎・泡盛が「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」の重点品目のひとつにも指定されるなど、輸出への追い風が吹いている印象を強く感じます。

お酒大国、韓国ではソジュの人気が根強い!

実は韓国のアルコール消費量は世界的に見てもトップクラス。年間の純アルコール消費量は成人1人あたり10.2ℓ(2018年)と、日本(8ℓ)やアメリカ(9.8ℓ)に比べると多くの量のお酒を消費しています。(「酒と健康についての国際現況報告書2018(WHO)」より)

その飲酒量の多さは、韓国国内ではしばしば問題にもなるほど。アルコール依存を防ぐため、夜間の酒類に関するCMが禁止されたり、パッケージには芸能人を使用してはいけない、などさまざまな施策を打ち出しています。

白酒同様、ソジュもストレートで飲むのが一般的。

そんな韓国で、ソジュはビールに続いて最もよく飲まれているお酒。若者からの人気も根強く、20〜30代のおよそ1/3が、「一番飲むお酒はソジュ」と回答するほど。日本でも2020年から急激に売り上げを伸ばしています。同じアジア圏でも焼酎や白酒では若者離れが課題となっているなかで、なぜソジュは若い世代にも受け入れられる蒸留酒になったのでしょうか?

低アルコール競争がソジュの人気を後押し

1970年代、希釈式ソジュが世に広まってまもない頃は、焼酎同様25度前後のものが一般的でした。その後、2000年代初頭に入ると、ビールや果実酒など低い度数のお酒が人気に。それに合わせてソジュも低アルコール化が進みました。

韓国国内で定番のソジュは、17~19度のものが大半。より飲みやすい味わいになったことで、若い世代にも受け入れられるようになったのです。

「ちょっと待って、日本で買ったソジュはそんなに度数が低くなかったけど……」と思いました? 実は日本国内で流通しているソジュは、日本オリジナルでつくっている銘柄もあり、やや度数は高め。焼酎と同じように水割りやソーダで楽しめるようにローカライズしているんですね。

日本で発売している〈JINRO〉は、本格焼酎に合わせて25度に調整している。

バラエティ豊かなフレーバーがヒット!

日本でも人気の〈チャミスル〉をはじめ、香りや甘みを加えた銘柄も多いソジュ。柑橘系やマスカットなどのフルーツフレーバーを加えたり、炭酸入りにしたりと、より若い世代に呑んでもらえるような工夫が凝らされています。

りんご、イチゴ、マスカットなど、バラエティ豊富なフレーバーが揃うソジュ。

日本の本格焼酎は、その定義上香料や甘味料を添加物を加えることができないため、香りや味わいは原料と製法が鍵。一方で、ソジュは蒸留後でも自由に味わいを変化することができます。日本でいうならば、連続式蒸留焼酎を使ったリキュールによく似た存在なのです。

まとめ:ソジュとは
・タピオカやさつまいもなどの原料を混合してつくる韓国の蒸留酒
・現在流通しているほとんどのソジュは、連続式蒸留でつくる希釈式ソジュ
・本格焼酎と同じ、単式蒸留でつくるソジュもわずかに残っている
・低アルコール&フレーバーで若者にも人気

焼酎とソジュの違いをおさらい!

韓国のソジュと日本の誇る本格焼酎。どこが似ていて、どこが違うのか、よりわかりやすく表にしてみました。名前の響きは似ているけれど、つくりや味わいは全く異なる蒸留酒なのです!

本格焼酎ソジュ(希釈式)
原料さつまいも・麦・米・黒糖などタピオカ・小麦・芋などを混合
麹菌を使った散麹改良した麹菌や糖化酵素
特徴的な製法1回のみの単式蒸留連続式蒸留
度数20~45度(主に25度)17~19度
香り原料ごとに異なる豊富なフレーバーが存在
飲み方水割り・お湯割り・ロック・炭酸割りとさまざまストレートが伝統的。最近は炭酸割りも普及。
若者人気まさにこれから!国内外で人気!

原料の香りや味わいを追求する本格焼酎に比べ、ソジュはとにかく飲みやすくつくられているのがわかります。その土地の風土や文化に合わせてできた製法や味わいは、どれも違ってどれもよい! いつの日か、お互いのよいところがミックスされた銘柄がでてきたら面白いなあ……なんて期待が膨らみます。

そして、焼酎・ソジュと並び、アジアの蒸留酒の代表として知られる中国の「白酒」。日本では紹興酒の人気に押され、馴染みの少ないお酒ですが、実は世界でも類を見ない製法でつくられた蒸留酒だそう。その味わいや焼酎との違いも含め、リサーチしています。アジアの蒸留酒の違いを知りたい方は合わせてチェックしてみてください!

中国の蒸留酒「白酒」の記事はこちら

焼酎のライバルってほんと? 中国の蒸留酒「白酒」を知る – クラフトスピリッツを再発見するWEBマガジン

焼酎と並んで、アジアの蒸留酒として長い歴史を持つ、中国の「白酒(バイジュウ)」。今や中国国内はもとより、世界中にファンのいる人気の蒸留酒です。同じアジアの酒であることから、焼酎のよいライバルともいえるこの蒸留酒。果たして焼酎と類似点はあるのでしょうか? 製法や味のほか、最近の白酒事情も調査してみます!

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