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海外向け焼酎〈DAIYAME 40〉発売。本格焼酎を世界に届ける、濵田酒造の挑戦|取締役・濵田光太郎氏 インタビュー

インタビュー

海外向け焼酎〈DAIYAME 40〉発売。本格焼酎を世界に届ける、濵田酒造の挑戦|取締役・濵田光太郎氏 インタビュー

Text : SHOCHU NEXT

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樽熟成の銘柄がじわりじわりと増えてきたり、度数の高い銘柄も裾野を広げていたり。“従来”の本格焼酎・泡盛から一歩踏み出した試みをする蔵元が増えてきている。その先にあるゴールのひとつは、間違いなく輸出量の拡大だろう。世界的に伸びを見せる高級蒸留酒の消費を狙うのは、蔵元にとって将来のための有効な戦略のひとつになりそうだ。鹿児島県・濵田酒造が7月下旬からの海外展開を発表した〈DAIYAME 40(ダイヤメ フォーティー)〉は、まさにこの潮流を象徴するような銘柄。アルコール度数も高く、バーなどでのカクテルベースとしての需要を企図しているという。同社取締役・濵田光太郎さんに話を聞いた。

バーのシーンにすっとなじむ佇まい。容量は700ml。

手応え十分。40度の焼酎で世界を狙う

編集部 ライチのような香りがすることが大きな話題となり、「全く新しい芋焼酎」として新しい消費者を獲得した本格焼酎〈だいやめ 〜DAIYAME〜〉はアルコール度数25度の銘柄でした。一方で5月のオンラインリリースイベントで世界展開を発表した〈DAIYAME 40〉はその名の通りにアルコール度数40度。海外のカクテル市場を視野に、カクテル作りの可能性を広げる酒質設計を改めて行ったこと、海外のみでの展開となることなど、いくつもの驚きがありました。取材にあたって実際の銘柄を飲ませていただきましたが、ライチの香りがさらに力強く引き立っている! 確かにカクテルベースとして立ち位置を確立できそうだなと感じます。リリースからひと月ほどが経ちますが、手応えはいかがでしょうか?

田酒造取締役・濵田光太郎(以下田) 製品開発にも3年を費やし、イベント自体もかなり準備して緊張感を持って行いましたので、やっとお披露目できたという気持ちが強いです。オンラインリリースイベントには、プレス各社のほか、お取り引きさせていただいている商社、バーテンダーや飲食店の方々などのご参加をいただきました。イベント後にはお問い合わせを多数いただいており、現在、アジアを中心に15カ国ほどと商談が始まっています。特に中国には、かなり強い手応えを感じています。本格焼酎がまだまだ定着していないヨーロッパでは流通先は限られているものの、プレミアムなホテルのバーやミシュランの星つきのレストランなどで好感触を得ていますので、今後にも大きく期待しています。

編集部 〈DAIYAME 40〉は、従来の〈DAIYAME〉からボトルもかなり変わりましたね。すっとまっすぐに立ち上がる黒いボトルで、胴より下の部分には切子グラスのようにカットも入っている。今までの“焼酎”のイメージからは相当かけ離れていると感じました。

田 バックバーに置いたときの見え方を意識しています。下から光が当たると、私たちが“バーニッシュカット”と呼んでいる切子部分から光が放射状にもれて伸びていく。〈DAIYAME 40〉が光り輝いているように見えるはずです。アメリカなどで、お酒のボトルをカットしてグラスや花器に加工していたりするのをよく見かけますが、この〈DAIYAME 40〉もそういうことをしたくなるかもしれないですね(笑)。いろんな演出をしていただければと思っています。

上部(プレーン):下部(カット)を大和比と呼ばれる 1:1.414の比率で構成。また、ボトルシルエットを「バーニッシュカット」と命名。磨きぬかれた繊細なカットを表現。

編集部 つくりに関して2点ほど。〈DAIYAME〉の全ラインナップは黒麹仕込み、減圧蒸留での仕上げですが、それぞれを採用されている理由をもう少し詳しく教えていただけますか。

田 黒麹に関しては、白麹に比べてβ-グルコシダーゼの活性が高いため、サツマイモの特徴香をより多く生成できるからです。白麹だと〈DAIYAME〉のライチ香のインパクトは少し薄れてしまいます。パンチのあるライチ香のために、黒麹は不可欠でした。蒸留に関しては、蒸留の初めと終わり部分をカットしてより均整の取れた香味に仕上げ、ライチのような香りを際立たせています。

カクテルベースとしての焼酎を逆輸入?

編集部 従来の25度の〈DAIYAME〉と、今回の〈DAIYAME 40〉はお互いへのフィードバックなどありますか?

田 〈DAIYAME 40〉は完全にカクテルベースとしての可能性に焦点を当てています。25度は炭酸割りや冷やしてそのままといった飲み方をお薦めしていますが、40度のカクテルベースとなると飲み方もかなり変わってくる。カクテルになったときにも壊れない味わいの奥行き、柔らかいけれど骨太な香味をどのように実現するかは、かなり開発チームが尽力してくれました。40度の開発によって25度のよさも実感できましたね。

ミクロソジスト・南雲主于三さんによるカクテル提案のひとつ「シュプリーム・フィズ」。ジン・フィズの原型とされる“ラモス・ジン・フィズ”のアレンジ。卵白を加えてシェイクした濃厚な味わい。
エスプレッソ・マティーニをアレンジした「カフェ ド プラージュ」。チョコレートやエスプレッソに〈DAIYAME 40〉のライチの香りがマッチする。

編集部 〈DAIYAME 40〉のライバル銘柄はなんでしょう?

 特にない、というのが正直な回答です。スピリッツの中でも未踏の香りを目指していますから、ライバルのいない存在になりえたのではないかと思います。単式蒸留(一度の蒸留)でこの味と香りを実現していることを知っていただき、それが本格焼酎への興味の扉になってほしい、そんな期待をしています。

編集部 〈DAIYAME 40〉は当面海外のみの展開とお聞きしています。一方で、国内でもインバウンド増は見込まれていて、海外の方が日本のバーでこういう焼酎に出会っていただけたら面白いのではないかな? とも思うんです。将来のいずれかのタイミングで国内展開はお考えですか?

 現在のところは考えていません。海外で焼酎をカクテルとして飲むことが広がって、日本にも伝わってきたならば、販売を検討する機会も出てくるのかもしれませんが……。先に海外で市民権を得て、逆輸入で日本へ広がってくる、そんな動きになれば私たちとしても理想的です(笑)。お酒の業界でも前例がないことではなく、テキーラがアメリカなどで著名人のアンバサダーがついて一気に市民権を得たような動きがある。本格焼酎もそういった流れをつくれたらと思っています。我々もやる気は十分。業界を引っ張っていくくらいの心意気で頑張っていきたいと考えています。

○プロフィール
濵田光太郎

Kotaro Hamada/1994年生まれ。成城大学卒業。中学・高校・大学時代を通じて野球部に所属。2017年濵田酒造入社。傳藏院蔵で仕込みの修行から始める。2017年7月同社取締役就任。


海外のバーで〈DAIYAME 40〉に出会う日は近い?!  

DAIYAME 40
【芋焼酎】
度数 40度
原材料 さつまいも(鹿児島県産)・米麹(国産米・黒麹)
蒸留 減圧
蔵元 濵田酒造  ブランドサイト→
所在地 鹿児島県いちき串木野市

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