焼酎×〇〇の組み合わせは無限大。料理とのペアリングはもちろん、カクテル素材としても可能性豊かな焼酎は、どんな飲食店でも本領を発揮するに違いない。そんな焼酎×〇〇をテーマにした面白いお店はないかな……と探しあぐねてると、焼酎×ピスコ(ペルーの蒸留酒)なるお店が東京・浅草にオープンしたという情報をキャッチ。おそらく日本初……ひょっとして世界初?の、焼酎とピスコが楽しめる店「どんまるてぃん」。これまで出会ったことのない陽気な焼酎の世界が広がっていました!
東京イチの観光名所に誕生した焼酎&ピスコバー「どんまるてぃん」
浅草・雷門から徒歩7分ほど。わいわいと賑やかなホッピー通りを横目に、老舗の洋食店や居酒屋が立ち並ぶ小道に入ると見えてくる「どんまるてぃん」。2022年4月、焼酎とピスコが楽しめる場をコンセプトにオープンしたスタンディングバーです。
扉を開けるなり「こんにちは!」と元気よく出迎えてくれたのは、店主の大城アンドレアさんと、彼女と一緒に「どんまるてぃん」を盛り上げる岩田絢音さん。“アンちゃん”と“ぽこちゃん”の愛称で親しまれる二人は、「焼酎最高!」と声を揃える焼酎ラバーです。
アップテンポなラテンミュージックに合わせて、ミラーボールがキラキラと回る陽気な店内のカウンターには、焼酎とピスコの瓶がずらり。なかなか見かけない組み合わせですが、アンさん、どうして焼酎とピスコのお店を始めようと思ったんですか?
生まれがペルーで、大人になるまで日本とペルーを行き来していました。ペルーのお酒といえばブドウの蒸留酒ピスコ。日本ではまだ認知度が低いお酒ですが、「ピスコを広めるのは自分の使命だ!」と思っています。でも個人的に一番好きなお酒は焼酎(笑)。それなら両方楽しめるお店にしようと「どんまるてぃん」を始めました。
自分でお店を開くとなると、知識や経験が必要ですよね。もとからお酒には詳しかったんですか?
実は飲食業界に入る前は、焼酎どころかお酒のことは何も知りませんでした(笑) お酒を飲むことも、みんなで楽しくお酒の場を囲むことも好きだったんですが、自分が飲んでいるものが何なのすら知らなくて……。
ハイボールがウイスキーでできていることも知らなければ、レモンサワーとハイボールの違いすらわからないレベル。焼酎ラバーなんてほど遠い、“超!”初心者でした。
それが今やこんなに焼酎好きに! きっかけはなんだったのでしょう?
飲食業界に入る前はデザイナーとして活動していたんです。でも、何よりお酒の場が好きで、みんなが楽しめる場所を自分でつくりたかった。そんなとき、浅草に一日店長ができるお店があることを知り、そこでお酒を出すようになったのが飲食業界に入った最初でした。
いざ始めたはいいものの、お客さんに教えてもらうほどお酒のことを全くわかっていなくて、水割りを、氷なしで焼酎と水だけで出しちゃったりとか(笑)これはもっとお酒のこと勉強しなきゃ! と、焼酎居酒屋で働き始めたのが焼酎との出会いです。
それを機に焼酎にハマっていったんですね。
はじめは、焼酎のことがわからず失敗だらけでした。
それでもお客さんからは、否が応でも焼酎について質問される。でも焼酎は飲み始めたばかりで、正直味の違いもわからない。せめて味がうまく伝えられないなら、その銘柄や蔵元のことをひたすら調べて、そのストーリーを伝えようと思ったんです。
調べているうちに、どんどん焼酎のことが気になってきてしまって。これはもう実際に蔵を見に行くしかない!と思い立ち、九州へ蔵見学に行きました。
とにかく行動力がすごい! 行った蔵元さんは覚えていますか?
もちろんです!
鹿児島県は八千代伝酒造さん、万膳酒造さん、佐藤酒造さん、宮崎県は柳田酒造さんにお邪魔しました。鹿児島は酒店さんも巡りましたね。自動車免許もなく、一人で行ったのですが、蔵元や酒店のみなさんが本当に優しくて。遠くの蔵から駅まで迎えに来ていただいたり、BBQに誘っていただいたり……。心優しい方々がおいしい焼酎をつくっているんだ、と感激しました。
その後、焼酎関係のイベントにも声をかけてもらえる機会が多くなり、どっぷりと焼酎の世界にハマっちゃいました。ぽこちゃんとは、焼酎好きの集まりで知り合って以来、大の焼酎仲間です!
私は青果店に勤めてから飲食業界に入り、焼酎を好きになりました。きっかけはアンちゃんと同じように、焼酎にそれぞれストーリーがあるからかな。青果店にいた頃から生産者さんの声をお客さんに伝えるのが楽しくて、焼酎も同じように蔵元の思いを伝えたかったんです。
私もアンちゃんも、人とお酒が大好きなんですよね(笑)
楽しいお酒の場ができるのは、つくり手の皆さんが良いお酒をつくってくれるおかげ。自分が好きなお酒でみんなが楽しく飲んでくれることほど嬉しいことはないですよ!
焼酎もピスコも外せない! どんまるてぃんのおすすめはこれ!
焼酎好きたる者、焼酎とピスコのお店でも、やっぱりはじめの1杯は焼酎から始めたい。アンさん、まずはおすすめの焼酎を教えてください!
焼酎はやっぱり行った蔵元のものですね! 自分の足で見て回ったぶん思い入れは強いです!
そう言いいながらアンさんが出してくれたのは、八千代伝酒造の芋焼酎〈八千代伝〉、柳田酒造の麦焼酎〈青鹿毛〉、佐藤酒造の芋焼酎〈佐藤〉、万膳酒造の限定品〈流鶯〉4銘柄。なかでもアンさんのイチ押しは、〈青鹿毛〉だとか。
個人的に一番好きなのが〈青鹿毛〉。麦チョコのような味は、初めて飲んだ時に衝撃を受けました! クオリティはもちろん、柳田酒造の代表・柳田正さんの人柄にも魅了されましたね。つくりにものすごくこだわりがあり、とってもハートフル。柳田さんのあたたかな人柄が詰まっているなあと感じます。
「どんまるてぃん」をオープンする前年には、ぽこちゃんと一緒に八丈島へ東京の島酒巡りもしました! 八丈興発さんの〈情け嶋〉は島酒のなかでも特にお気に入り。オープン記念に、特注の甕のサーバーもプレゼントしていただきました。これに〈麦冠 情け嶋〉を入れたらおいしく熟成することは間違いない! じっくり寝かせていきたいな。
焼酎はもちろん、「どんまるてぃん」に来たら必ず試したいのが、ピスコ。今や南米のみならず世界中で人気を集めているピスコですが、馴染みのない方も多いはず。アンさん、焼酎好きにおすすめなピスコってありますか?
ありますよ!
ピスコはブドウの品種によって、香水のような強い香りの「芳香種」と、香りが控えめな「非芳香種」に分かれます。
焼酎を飲み慣れている方に最初におすすめしているのは「非芳香種」のブドウを使ったピスコです!
芋焼酎が品種によって味が変わるように、ピスコも原料で味が変わるんですね。
アルビージャという非芳香種のブドウを使ったタカマ社の〈デモニオ・デ・ロス・アンデス アルビージャ〉や、芳香種と非芳香種のブドウをブレンドした〈ピスコ ポルトン アチョラード モストベルデ〉は、どちらもすっきりとした味わいが特徴。焼酎の柔らかい香りにも近くて、はじめてのピスコにおすすめしたい銘柄です。
ピスコに慣れてきた人には、芳香種のブドウを使った銘柄もぜひ飲んでほしい! トロンテルという芳香種のブドウを使った〈ヴィニャス・デ・オロ トロンテル〉は、柑橘系のパンチのある香りとシロップのような甘い味わいで、「これぞピスコ!」な1本です。
ペルーのピスコは1回しか蒸留してはいけないルールがあって、つくり方も本格焼酎によく似ているんです。焼酎好きな方には必ずおいしく飲んでもらえるはず!
若い力で焼酎を浅草から発信!「どんまるてぃん」の真の活躍はこれから
浅草に彗星のごとく誕生した「どんまるてぃん」。地元のお客さんをはじめ、SNSを見て訪れる若い女性も多いそう。「やっぱり若い人に焼酎を飲んでもらいたい!」と声を合わせるアンさんとぽこちゃん。焼酎の魅力を発信し続けるお二人に、今後の展開を聞きました!
浅草を中心に焼酎をもっと広めていきたい! 今若い方が浅草にたくさん遊びに来てくれているので、周りの飲食店も巻き込みながら焼酎をアピールできれば、若い世代も焼酎を触れる機会が多くなるはず。「どんまるてぃん」をその発信地にしたいと思っています。
若い人にもっと焼酎を飲んでもらうことは、私たちのような若い焼酎好きにとって最大のミッション。最近はフルーティな香りのものもどんどん増えているので、上手にその良さを伝えていきたいです!
最終的には焼酎もピスコも飲んでもらえるようになるのが目標。どちらの良さも楽しく伝えられるのは、「どんまるてぃん」ならではと感じています。夏になったら夏焼酎×ラテンでパーティーしたいな!
ラテンの陽気さに包まれながらグイッと飲む焼酎は格別! ”Salud(サルー)!”と乾杯すれば、もっと焼酎が楽しくなること間違いなし。愛嬌たっぷりな二人のフレッシュな焼酎人が待つ「どんまるてぃん」、早いうちに行ってみるのをおすすめします!
どんまるてぃん |
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東京都台東区浅草1-41-5 平日:18時~24時 土・祝:15時~24時 日:15時~22時 不定休 https://www.instagram.com/donmartin.asakusa/ |