10月9日(祝)に下北沢にあるBONUS TRACKにて、ちょっと新しい焼酎イベント「SHOCHU ENKAI 2023」が開催されました。あいにくの雨でしたがそんなことは関係なく大盛況だった本イベント。その様子をレポートします!
SHOCHU ENKAI 2023とは?
「SHOCHU ENKAI 2023」は下北沢にあるBONUS TRACKにて開催されたイベントです。
「BONUS TRACK」といえば発酵デザイナーの小倉ヒラクさんがオーナーを務める発酵食品の専門店「発酵デパートメント」がある場所!イベントの主催は神吉佳奈子さん、児島麻理子さん、野口真理子さんと発酵デパートメントです。
参加蔵元は大石酒造、大石酒造場、尾鈴山蒸留所/黒木本店、高田酒造場、富田酒造場、中村酒造場、西平酒造、八丈興発、柳田酒造、大和桜酒造、若潮酒造(五十音順)の11蔵。
イベントは午前と午後の2部に分かれており、それぞれ3,800円のチケットに主催者セレクトの焼酎1本+おつまみが付いていました。その焼酎1瓶を他の参加者にも注いであげて交流する……というからこれまでにあまりない、参加者同士のコミュニケーションがしやすいイベントです。首から下げたカードに、他の参加者の焼酎を飲んだらシール1枚、他の参加者に注いであげたらシール1枚を貼っていく「シールラリー」システムもなんだかワクワクします。
そんな期待感からか、チケットは2部とも事前に完売。当日は雨にもかかわらず開始前から参加者の方の熱気を感じる雰囲気となりました。
主催者チームの1人、児島麻理子さんは「焼酎は、飲み切る自信がないことからなかなか四合瓶を買う機会がない方も多いはず。今回のイベントでまずは1本手に入れるきっかけにしてほしいです。焼酎の銘柄はランダムでのお渡しとなりますが、そこから蔵元のファンになってもらえたら」とこのイベントへの想いを語ってくれました。
さらに発酵デザイナー小倉ヒラクさんもイベント会場で発見!
ヒラクさんといえば、あまり焼酎のイメージはありませんでしたが……実は佐賀県出身ということで、大の焼酎好きなのだそう。
「僕はいま、日本酒の仕事の方が多いんですけど、実は焼酎もずっと大好きで家でもよく飲んでいます!焼酎はここ20年で醸造技術がものすごく上がっています。まだまだ進化していくお酒ということもあり、発展途上の面白さがありますよね。
今回のイベントではジャンルと地域を横断することをテーマにしました。芋も麦も米も、そして宮崎県も鹿児島県も……というのを重視しました。できるだけ飲み手視点でやるべきだと思っていて、飲む人にとってはその焼酎が宮崎だからとか鹿児島だからとかよりも美味しいかどうかが重要なわけで。だから色々飲み比べて面白いとか、かっこいい・かわいくていいなとか、そういうイメージです。発酵デパートメントのお酒の売り場のメインの購買数は20~30代なので、その年代の方が焼酎の幅を広げつつ楽しめるイベントにしたいと思いました」
現在は日本酒がメインの発酵デパートメントのお酒売り場ですが、今後は焼酎のラインナップも増えていく予定とのこと。楽しみです!
蔵の方と話せるブース、参加者同士がわいわいできる仕組み!
イベントがスタートすると、参加者の方はまず氷入りのカップを受け取ります。
その後、指定された蔵のブースへ。ここでまずは自分の焼酎ボトルを受け取るのですが……なんと蔵元さんがその場でサインを入れてくれるんです!
我々SHOCHU NEXTチームは柳田酒造の「青鹿毛」に柳田正さんがサインをしてくださいました!
こんな機会はなかなかありませんよね……。
ほかにも各ブースでは蔵元さんが持参された焼酎の試飲もありました。
西平酒造の西平せれなさんはこのイベントで様々な発見があった様子。
「焼酎イベントといえば年配の方が多く、私たちもハッピを着て……という雰囲気が多かったのですが、今日は若い人が多くておしゃれでカジュアルな雰囲気なのが新鮮ですね。来てくださった方と話していると、私たち蔵元が伝えるべきことってもっとシンプルでいいんだ……という発見がありました。たとえば『黒糖焼酎はなぜ奄美でしかつくれないのか』といった基本的なことでもご存じない方が多いとか。そういうこともまたイチからお伝えしていきたいですね。意外だったのは焼酎のうんちくよりも私たちのパーソナルな部分に興味を持ってくださる方が多いこと。私は元ミュージシャンなのですが、そんな側面も見せていきたいです!」
続いてお話を聞いたのは八丈興発の小宮山善友さん。今回のイベントは今までにない会ということで気合が入っているとのこと!
「これまでの焼酎イベントでは来場者の方の9割近くが常連さんのことが多かったのですが、今回は初めてお会いする方が多いですね。先ほどいらっしゃった方は20年ぶりに焼酎を飲む、とおっしゃっていて、そんな方にも飲んでもらえるのは嬉しいです。そこから『なぜ八丈島で焼酎を作っているのか』『これはどういう味なのか』といったお話が弾んで、興味を持ってもらえたのが新鮮でしたね。今後もこういった草の根活動というか、ゼロからイチを知ってもらえる活動はしていきたいです!」
続いては大石酒造の大石恭介さん。大石さんは実は元々はガンの基礎研究をされていた研究者・博士です。2年前までデンマークに滞在されており、奥様の実家である大石酒造を継ごうと現在修行されています。
「蔵元の方ってみんな優しくて、ライバルのはずなのに色々教えてくれるんです。なので勉強させてもらっているところです。今は学ぶだけで精一杯なんですけど、今後は職人の勘とかだけじゃない、科学的な裏付けを説明していけたらなと思っています。どうしても焼酎って、敷居が高かったりするイメージもあると思いますが、今回のイベントのように気軽に知ってもらうことができたらいいなと思います!」
そこへヒラクさんが登場。「白濁鶴見」を初めて飲んだ感想は……「芋を超えて、長生きしそうなお味噌汁感がある味!麹っぽさを感じますね~」とのこと!なんともヒラクさんらしい感想ですね。
残念ながら会場に来られなかった中村酒造場の中村慎弥さんは、なんとうちわでの参加となりました!
会場はBONUS TRACK内を横断するように各ブースや飲むコーナーが設置されていました。
初対面同士の参加者でしたが、やはり「焼酎好き」という共通点のおかげか、すぐに打ち解けている様子!
「シールラリー」も枠をはみだしこんなにコンプリートされた方も!発酵デパートメントのメルマガで今回のイベントを知ったというこちらの女性は、「こういう焼酎のイベントは初めて参加したけれどすごく楽しかった!コンプリートめざしてたくさん焼酎で交流できました」とのこと。
室内のブースもあり、こちらも大盛況。
今日会ったばかりなのに、まるで数十年来の友人かのように打ち解けている様子が印象的でした。お酒の力ってすごい!
蔵元さんブースの他にも楽しい仕掛けがいっぱい!
ほかにも、会場内にはさらに焼酎を楽しめる仕掛けがたくさんありました。まずは無料のちょい足しコーナー。宮崎県の特産「ひむか農園のへべす」や、調味料などの焼酎へのちょい足しを楽しむことができます。
さらに全国厳選クラフトコーラのお振舞い集団「CRAFT COLA hour」によるクラフトコーラ×焼酎のサワー販売も。
筆者は浅間コーラ×情け嶋の組み合わせを頂いたのですが……かなり焼酎を飲み慣れているはずなのにまるで新しい味わいに思わず「美味しい……!」と叫んでしまいました。クラフトコーラの爽やかさのあとに麦焼酎の香ばしさがグッと追いかけてくるんですよね。これは再現してみたい、と感動です。
BONUS TRACK内の本屋B&Bは、いつもは本とビールが楽しめるお店なのですが、この日は時間ごとに各蔵元さんのお酒を杯売り。蔵元さんとじっくりお話できる立ち飲みバーのようで、常に人が集まっていました。
同日開催のセミナーは36歳の焼酎の造り手の人生を深堀!
BONUS TRACKから徒歩1分の『SHIMOKITA COLLEGE』では、イベント当日、焼酎の作り手のキャリアにフォーカスした焼酎セミナーが開催されました。
今年36歳になる黒木信作さん(尾鈴山蒸留所/黒木本店)、高田恭奈さん(高田酒造場)、 西平せれなさん(西平酒造)、上村曜介さん(若潮酒造)の4人の造り手が、どのような人生を経て焼酎造りをはじめたのかを語るトークショーです。
参加者には入口で4人の「わたしらしい1杯」のいずれかが振舞われました。
高田恭奈さんは保育園の頃からご実家の酒蔵で焼酎造りを手伝うほど、「焼酎造りは生活の一部」だったこともあり、農業大学の「変わり種焼酎とリキュール」の研究などを経て自然と焼酎づくりの道に進まれました。
真逆だったのが西平せれなさんで、もともとは実家の酒蔵を継ぐ予定はなく、ミュージシャンとして活動されていました。しかし、お父様の体調不良を機に2014年から蔵に入り、2017年には杜氏に、2021年には4代目として代表になるというスピード感で跡を継ぎました。
黒木信作さんも次男として生まれたことから、当初は継承する予定はなかったと言います。「自由にやれ」と言われて育った黒木さんは20代ではワインにハマり、フランスへ留学。しかしその後焼酎ブームをきっかけに焼酎にも興味を持ち、結果的に継ぐことになったと言います。
上村曜介さんは農学部卒業後、味の素に就職。研究所で微生物の研究をしていたそうです。その後実家の酒蔵を継承、ジンの開発などにも携わります。現在は味の素の「アジシオ」を使うカクテルレシピなど自身の経験を活かした提案もされています。
同年代の4名ですが、それぞれ全く異なる経歴により焼酎造りをはじめ、今では切磋琢磨しあう仲間に。共通していたのは「焼酎づくりが好き!」「お酒が好き!」という気持ち。そうした想いを感じながら飲む焼酎はいつもよりさらに美味しく感じました。
「SHOCHU ENKAI 2023」はかなり好評だったこともあり、今後第2回、3回と続いていく可能性があるとのこと!今回は参加できなかった方もぜひ発酵デパートメントの情報をチェックし、次回開催の際は参加してみてくださいね!私も次回はプライベートで参加したいと思います!