2019年から開催されれている日本唯一、そしてアジア最大級の蒸留酒の品評会である「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(以下、TWSC)」。第4回となる今年の結果が先日発表されました。
TWSCは各ジャンルから日本人ジャッジを登用し、繊細な味覚でウイスキー、スピリッツ、焼酎の審査を行い、国内外に高品質な蒸留酒の魅力を発信することを目的とした品評会。審査には毎年、全国からさまざまな蒸留酒の専門家たちが参加します。今年もブラインドテイスティングによる公正な審査を経て、最高金賞、金賞、銀賞、銅賞と、特別賞の「Best of the Best」が選ばれました。
焼酎部門としては3度目の開催となった今年の審査結果。上位に選ばれた20種類の銘柄をご紹介します!
東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)は、日本で唯一のウイスキーとスピリッツの品評会です。
多様な視点で審査が行われたTWSC2022焼酎部門
今年が3回めの開催となる焼酎部門。本年度の出品数は281銘柄と、過去最多となりました。これはこれまでの本格焼酎にくわえ、甲類焼酎と混和焼酎も審査対象となったのが大きな理由のひとつかもしれません。
一次審査には83名の審査員が参加。ここから上位得点のついた銘柄に対して18名の特別審査員による二次審査が行われます。今年度の焼酎部門の大きな変更点として注目したいのは、二次審査でアルコール度数25度以下の「UNDER25%部門」と、26度以上の「OVER26%部門」に分かれたこと。これは焼酎の特性や度数帯による特徴の違いなどに注目してのこと。多様な視点から焼酎の可能性を追求し、国内外にその魅力をアピールしていくための手がかりになりそうです!
二次審査では、「UNDER25%部門」に14本、「OVER26%部門」に15本が選出されました。特別賞「Best of the Best」が、各部門で選出されています。さて、本記事ではこの2部門で、1~10位に選ばれた焼酎の銘柄を一挙にご紹介していきます!
TWSC2022焼酎部門<UNDER25%>で選出されたのは?
TWSC2022焼酎部門<UNDER25%>
Best of the Best 第1位
〈じょうご 世界自然遺産ラベル〉奄美大島酒造
UNDER25%部門でベストオブベストに輝いたのは奄美大島酒造の黒糖焼酎〈じょうご〉。口あたり柔らかく、減圧蒸留ならではのさわやかな飲み口が特徴です。奄美大島の地下から湧き出る「じょうごの水」と奄美大島産の黒糖を100%使用しており、地元の恵みを存分に受けた〈じょうご〉が地元の世界遺産を記念したラベルで堂々の1位を獲得しました。
じょうご 世界自然遺産ラベル |
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【黒糖焼酎】 度数 25度 原材料 黒糖(奄美産)、米麹 蒸留 減圧 蔵元 奄美大島酒造 WEB→ 所在地 鹿児島県大島郡 |
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第2位
〈初潮〉西吉田酒造
福岡の穀倉地帯である筑後地方。筑後川の恵みと、国産のはだか麦「イチバンボシ」を原料につくられるのが西吉田酒造の〈初潮〉です。常圧での蒸留と5年熟成の古酒のブレンドによって、どっしりとした味わいと個性的なはだか麦の風味が楽しめる1本になっています。
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第3位
〈知覧Tea酎〉知覧醸造
2020年、2021年と2年連続で最高金賞に輝いた知覧醸造の〈知覧Tea酎〉。知覧町産の「コガネセンガン」と「知覧茶一番茶葉」を同時に仕込んでおり、芋焼酎と爽やかな緑茶の香りが絶妙にマッチした逸品です。海外でも人気の高まるこの1本が、今年も3位を獲得。その味わいの完成度を見せつけました。
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第4位
〈こげん〉鷹正宗
「こげんよか香りのする焼酎はなかっ!」と思わず口にしてしまうような焼酎づくりを目指して生まれたのが鷹正宗の〈こげん〉。仕込みにスパークリングワイン酵母を使用することで、完熟したバナナのような芳醇な甘く華やかな香りと、やわらかな口あたりに仕上がっています。今年で3年連続の最高金賞の受賞となりました。
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第5位
〈八重泉 GOLD〉八重泉酒造
八重泉酒造の伝統の酒づくりを象徴する看板銘柄を、樫樽で長期貯蔵熟成した〈八重泉 GOLD〉。クリーンな樽香と穏やかな泡盛の香りとまろやかな甘味、そして熟成酒ながら飲みやすい25%という度数で、女性からも支持を集める1本です。昨年は銅賞でしたので、今年は味に磨きがかかっているということでしょうか…?! 昨年からの変化を飲み比べてみたくなりました。
TWSC2022焼酎部門<UNDER25%>
第6位
〈浦霞〉浦霞醸造元
〈浦霞〉は本年度初めて最高金賞を獲得した粕取り焼酎です。製造元の浦霞醸造元は宮城県の日本酒蔵であることもとても興味深いですね。純米吟醸酒の酒粕を原料とした1本で、吟醸酒を思わせる華やかな香りとほのかな甘みが楽しめます。日本酒蔵の銘柄が焼酎を知るきっかけになるのもアリなのではないでしょうか。
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第7位
〈常圧 豊永蔵〉豊永酒造
米焼酎発祥の地として知られる球磨地方。豊永酒造の〈常圧 豊永蔵〉は球磨焼酎の代表銘柄です。球磨産の有機米と球磨川の伏流水を使用し、昔ながらの常圧蒸留でつくられており、まろやかでやさしい口あたりと豊かな米の旨味と深いコクは、まさに伝統的な球磨焼酎の味わいそのものです。
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第8位(同率)
〈山ほたる〉高田酒造場
〈常圧 豊永蔵〉に続き、同じ球磨焼酎の高田酒造場の〈山ほたる〉が8位にランクイン。蔵元の所在地である初夏のあさぎり町を飛び交うホタルをイメージした銘柄です。こちらは白麹仕込みと減圧蒸留でつくられており、フルーティで口あたりの優しい仕上がりとなっています。
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第8位(同率)
〈極楽〉林酒造場
〈山ほたる〉と同率で8位となった林酒造場の〈極楽〉。こちらも前のふたつと同じ球磨焼酎です。球磨でも最古の蔵元である林酒造場の〈極楽〉は昔ながらの球磨焼酎の味わいを頑なに守り続けた逸品。常圧、減圧のどちらの蒸留法も行っており、それぞれの味わいの違いも楽しめます。
この結果でぜひ注目してほしいのは、UNDER25%部門のベスト10にランクインした米焼酎は、すべて球磨地方の銘柄ということ! いかに球磨焼酎が味わい深いかがうかがえる結果となりました。
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第10位
〈一刻者〉宝酒造
宝酒造の〈一刻者(いっこもん)〉はトップ10の銘柄の中でも特に入手しやすいアイテムではないしょうか。「一刻者」とは南九州で「頑固者」を表す言葉。芋を100%使用した焼酎づくりに頑ななまでにこだわりつづけることがその名の由来とか。芋100%ならではの甘い香りとすっきりとした味わいが特徴です。25%部門で10位以内にランクインした純粋な芋焼酎は〈一刻者〉だけ。審査員たちのジャッジを聞いてみたい結果です。
TWSC2022焼酎部門<OVER26%>
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Best of the Best第1位
〈紅さんご〉奄美大島開運酒造
昨年から2年連続で、奄美大島開運酒造の〈紅さんご〉がベストオブベストに輝きました。常圧で蒸留した黒糖焼酎を樫樽で5年間熟成することで、黒糖のコクに樫樽の甘い香りとまろやかさが加わった、エキゾチックな味わいを実現しています。黒糖焼酎は小さな諸島でだけ製造が許される蒸留酒ですが、両部門のBest of the Bestや過去の結果からも、洋酒を飲み慣れている人にとって親和性が高いことが、かなり確実になってきましたね。
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第2位
〈浜千鳥乃詩 ゴールド〉奄美大島酒造
UNDER25%で1位に輝いた奄美大島酒造は、原酒銘柄の樫樽貯蔵〈浜千鳥乃詩 ゴールド〉でこちらの高濃度部門でも2位となりました。奄美産の黒糖を100% 使い、2年以上貯蔵した浜千鳥乃詩の原酒をさらに樫樽で熟成した3年以上の熟成古酒です。OVER26%部門は黒糖焼酎のワンツーフィニッシュとなりました。
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第3位
〈天使の誘惑〉西酒造
〈富乃宝山〉で知られる西酒造の熟成芋焼酎〈天使の誘惑〉は、今年で3年連続の最高金賞受賞です。鹿児島県産の黄金千貫を白麹で仕込み、樫樽で7年以上貯蔵熟成を経て瓶詰め。芋のほのかな甘さと上品な味わいで、本来長期貯蔵にはむかないといわれる芋焼酎の可能性を大きく広げた1本です。
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第4位(同率)
〈孤独な天使〉井上酒造
井上酒造の〈孤独な天使〉はめずらしいデーツ(ナツメヤシの実)を原料にした本格焼酎。デーツは中東や北アフリカ地域の蒸留酒づくりに用いられていた、くせのない甘みが特徴の果実です。本格焼酎の49種類の原料のなかで唯一認められた果実でもあります。〈孤独な天使〉は原酒を樫樽で長期貯蔵を行うことで、デーツの甘みにブランデーのような深みが加わった1本。洋酒好きにはぜひ味わっていただきたい逸品です。
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第4位(同率)
〈海乃邦 KOHAKU12年〉沖縄県酒造共同組合
良質な泡盛をつくり、県外に安定した供給をするために沖縄の泡盛蔵が協同して立ち上げた沖縄県酒造協同組合。樫樽で長期熟成した原酒と、12年熟成の海乃邦の古酒をブレンドしています。樽由来の甘い香りと、古酒のまろやかな口あたりで深い味わいです。
海乃邦 KOHAKU12年 |
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【泡盛】 度数 43度 原材料 米麹 貯蔵年数 12年古酒、長期樫樽貯蔵のブレンド 蔵元 沖縄県酒造協同組合 WEB→ 所在地 沖縄県那覇市 |
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第6位(同率)
〈らんびきSHINY GOLD SHERRY CASK〉ゑびす酒造
らんびきSHINY GOLDはゑびす酒造で60年前から始まった樽貯蔵の長期熟成古酒のランナップ。その中から今回TWSCの最高金賞に選ばれたのが〈らんびきSHINY GOLD SHERRY CASK〉です。スペインのシェリー酒の熟成に使われた後、ゑびす酒造で40年以上使い続けている古樽で18年の長期貯蔵を行った熟成古酒です。蜜のようななめらかな甘みと麦焼酎のコクをぜひ堪能したい銘柄です。
らんびきSHINY GOLD SHERRY CASK |
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【麦焼酎】 度数 42度 原材料 麦(九州産二条大麦)、米麹(タイ産米) 貯蔵年数 18年 貯蔵方法 シェリー樽 蔵元 ゑびす酒造 WEB→ 所在地 福岡県朝倉市 |
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第6位(同率)
〈天星宝醇 赤〉天星酒造
〈天星宝醇 赤〉は海外や焼酎に馴染みのなかった人に向けた天星酒造の芋焼酎。ここで樽熟成ではない銘柄がようやくランクインしました。〈天星宝醇〉は「早垂れ蒸留」という独自の蒸留法を導入し、味の良い部分のみを抽出することで出来上がります。仕込みには希少芋である「紅隼人」と白麹を用い、豊かで芳醇な風味の上質な仕上がりとなっています。
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第8位
〈万暦〉西酒造
西酒造がキンキンに冷やしてから飲むことを前提につくった〈万暦〉。44度という高濃度のアルコール度数なので、冷凍庫で冷やすと凍らずにとろりとした口当たりに変化します。ほのかに感じるピーチのような香りと濃厚な飲み口が新鮮! 冷凍を前提としているものの、ブラインドの審査ではおそらく冷凍はしていないはず。さらなるポテンシャルを感じさせる1本です。西酒造は〈天使の誘惑〉に続き、2銘柄でトップ10入りとなりました。
TWSC2022焼酎部門<OVER26%>
第9位
〈マヤンの呟き〉雲海酒造
日本ではじめてそば焼酎の開発に成功した雲海酒造。〈マヤンの呟き〉はその雲海酒造による長期熟成本格焼酎です。厳選されたそばを原料に、丁寧に仕込まれたそば焼酎の原酒を、トンネル貯蔵庫の樫樽の中でじっくりと熟成。深いコクとまろやかな口あたり、樽熟成ならではの香り高い仕上げりとなっています。
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第10位
〈高田のはなたれ〉高田酒造場
焼酎の蒸留で一番初めにとれる蒸留液を「初垂れ(はなたれ)」と呼びます。〈高田のはなたれ〉は初垂れのみを集めてつくった1本。初垂れはとても貴重で、1回の蒸留で四合瓶2、3本分しかとれないのだとか。味も香りもグッと凝縮され、度数も高いことから個性的な仕上がりとなっています。数量限定の商品なことも、焼酎好きをくすぐりますね!
高田のはなたれ |
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【米焼酎】 度数 44度 原材料 米(国産)、米麹(国産) ※数量限定品 蔵元 高田酒造場 WEB→ 所在地 熊本県球磨郡 |