ミクソロジストの南雲主于三さんによる泡盛の古酒を使ったカクテル第2弾。なんと泡盛でコーヒーを淹れるという、大胆な手法を使ったレシピの登場です。コーヒーカクテルは現在、世界でも人気のカテゴリーですが、これは究極の一杯かも! 素材となる泡盛に、銘酒の誉れ高い〈春雨〉を使うところもまさに新時代を感じます。
「春雨コーヒー」のつくり方
【レシピ】春雨コーヒー |
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– 春雨5年 100ml – コーヒー豆 10g – バニラシロップ 適量 〈春雨 5年〉を鍋で60度直前の温度まで温める。予熱で60度になるように。温まった〈春雨 5年〉をお湯の代わりにハンドドリップでコーヒーを淹れる。ロックグラスに大きめの氷を入れて、コーヒーを注ぐ。最後にバニラシロップを適量垂らして完成。 |
COMMENT|レシピについて
「泡盛を使ってコーヒーを淹れるのは、バリスタチャンピオンの石谷貴之さんに考案してもらった方法なんです。蒸留酒にコーヒー豆を漬けることはよくありますがコーヒーを淹れるのは画期的。温めたお酒でコーヒーを淹れると、コーヒー豆の酸やフルーティな部分がよく出るんです。今回は、アルトスというコスタリカのコーヒー豆を使っています。コーヒー豆と泡盛、どちらの良さも保たれた不思議なコーヒーのできあがりです。春雨ならではのナッツやきのこの香りにあわせて、コーヒー豆をいろいろと試すのもいいですね」(南雲さん)
TIPS!|家飲みで楽しみたい人のためのコツ
「ポイントは泡盛を温めすぎないこと。アルコール度数が高いので低い温度でもコーヒーが抽出できるんです。温度は60度がラインかな。65度になるとアルコールが飛んでしまうので、ギリギリを目指すために温度計は必須ですね。鍋は53度くらいで止めてよし。予熱で60度程度まで上がっていきます。また、飲むときにはバニラシロップを少し垂らすのがお薦め。〈春雨 5年〉の香りが際立ちます」
TASTE NOTE |味わい
「本当にいい香りですね。コーヒー豆を泡盛に漬けるのは、泡盛の癖を押さえることになると僕は思っているんです。対して、このカクテルではコーヒーと泡盛の良さを共存させている。ハンドドリップはとても手間がかかりますが、ぜひ試してみてほしいです。ブラックルシアンというカクテルがあるのですけど、その琉球版のような香り豊かな味わいです。生クリームを少し入れてもおいしいかもしれませんね」
主役の熟成焼酎と蔵元のこと
沖縄県那覇市で昔ながらの家屋のような建物で泡盛づくりを続ける宮里酒造所は、創業時から個性的な蔵元として知られてきた。年間生産量が少ないため、桶売りでしか出回ることがなかったにも関わらず、その良質な泡盛の評判が口コミで広がって、入手のできない幻の酒と呼ばれることに。一般販売を始めたのは1997年から。酒販店などからの強い要望に押されるかたちで実現したという。また、現在の代表の宮里徹氏は、「泡盛のエンジニア」「泡盛のマジシャン」とも呼ばれる。
「いまはつくれる人がいない横型の蒸留器を使っていて、宮里さんはネックをご自身でも改造している。細かなデータを積み上げて味を決める人で、とても研究熱心な方。5年熟成の味わいを3年熟成で出すというような研究もずいぶん前からされている。若くても古酒がおいしいのは技術力があるからなんです」(南雲さん)
〈春雨 5年〉
春は希望を、雨は恵みを意味するという〈春雨〉。戦後の沖縄の人の切実な願いが込められたネーミングだ。〈春雨〉は逸話にも事欠かないお酒。沖縄返還から間もない1975年、那覇で国際海洋博覧会が開かれた際には、当時の皇太子夫妻に振るわれて話題となった。この時〈春雨〉が選ばれたのは、沖縄の各蔵元が自慢の古酒を持ち寄った選考会によるもの。ブラインドテイスティングによって蔵元たちが無記名で投票したのだが、見事〈春雨〉が一位になった。2000年の沖縄サミットの晩餐会でも選ばれている。
「ワインやウイスキーでは、液体がグラスなかでどう落ちていくのかを見るのですが、涙みたいに落ちることがある。それが〈春雨 5年〉にもありますね。また、宮里さんは、醤油をなめた後に泡盛のもろみをなめることで、その相性を探るそうです。そうやってつくるから〈春雨〉は、醤油にすごく合う。沖縄の煮込み料理はもちろんいいし、お刺身でもいい。ぜひ料理との相性も試してみてください」(南雲さん)
春雨 5年 古酒 |
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【泡盛】 貯蔵 5年(タンク) 度数 43度 原材料 米、米麹 蒸留 常圧 蔵元 宮里酒造所 所在地 沖縄県那覇市 |