世界では今、蒸留酒がブームの真っ只中。ジンやラム、ウイスキーなどメジャーなものから、メスカル(リュウゼツランを原料にしたメキシコの蒸留酒)やピスコ(ぶどうを原料にしたチリ、ペルーの蒸留酒)まで世界各国の蒸留酒が注目を浴びています。その流れに乗るように、焼酎以外の蒸留酒をつくる焼酎蔵が、増えつつあります。そのどれもが地域の原料や蔵の特徴を生かした個性あふれるものばかり。焼酎だけではない、さまざまな蒸留酒づくりに取り組む蔵元を紹介します。
焼酎以外の蒸留酒づくりに挑戦する蔵①
大山甚七商店
鹿児島県の南端、指宿市に蔵を構える大山甚七商店は、150年近く焼酎づくりを続けてきた老舗の蔵元。代々伝わる甕仕込みに加え、新しい酵母の開発を手がけるなど、伝統と革新を両立した酒づくりが特徴です。2021年には新たな間接加熱蒸留機を導入し、ジンやラム、ビターズなど洋酒づくりも積極的に行っています。
大山甚七商店がつくるジン〈JIN7 series 00〉
大山甚七商店がつくるクラフトジンシリーズ〈JIN7〉の第一弾として誕生した〈JIN7 series 00〉。ベーススピリッツは白麹で仕込んだ芋焼酎。鹿児島にある日本最古のハーブ園「開聞山麓香料園」で採れた希少なハーブ「芳樟(ほうしょう)」や、県内で栽培されている「木頭柚子」など、地元の原料にこだわり抜いたボタニカルを使用しています。味わいはすっきり爽やか。芳樟の柔らかな甘みと、柑橘のみずみずしい香りの奥に、フルーティな芋焼酎を感じる上品な1本です。
JIN7 series 00 | SHOP→ |
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ジン 度数 47度 原材料 芋焼酎(白麹)、フレッシュオーガニックハーブ(芳樟、木頭柚子) 容量 60ml, 700ml |
大山甚七商店がつくるラム〈ACOU RUM WHITE〉
2022年2月に登場した〈ACOU RUM WHITE〉は、鹿児島県本土でつくられた初のクラフトラム。〈JIN7〉と同様、原料は地元産のものにこだわっています。主原料の糖蜜は、鹿児島県指宿市で無農薬のきび砂糖をつくる「うんまかグループ」によるもの。仕込み水は蔵から湧き出る地下天然水を使った、ほんのり甘やかなナチュラルな味わいが魅力です。クセが少ないので、ロックやソーダ割りはもちろん、カクテルベースとしてもぴったり。ラベルのデザインも新鮮で、つい手にとりたくなる新世代の蒸留酒です。
ACOU RUM WHITE | SHOP→ |
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ラム 度数 40度 原材料 糖蜜(オーガニック)、黒糖(鹿児島県産) 容量 500ml |
丁寧な仕込みから生まれる柔らかな口当たりが絶妙。大山甚七商店の定番芋焼酎〈薩摩の誉 白麹〉
南薩摩産の黄金千貫と白麹で仕込んだ芋焼酎〈薩摩の誉 白麹〉。甕を使った伝統的なつくりによって生まれる風味は、ふんわり優しく甘やか。最後の一口まですっきりと飲み飽きないため、食中酒としても大活躍します。飲み方も選ばないオールマイティさも嬉しいポイント。ジンやラムなどチャレンジングな蒸留酒づくりの土台にある、丁寧な酒づくりが垣間見える本格焼酎です。
薩摩の誉 白麹 | SHOP→ |
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芋焼酎 度数 25度 原材料 さつま芋(黄金千貫)、米白麹 蒸留 常圧 容量 900ml, 1800ml 蔵元 大山甚七商店 WEB→ 所在地 〒891-0311 鹿児島県指宿市西方4657 |
焼酎以外の蒸留酒づくりに挑戦する蔵②
小正醸造
1886年に創業した、鹿児島県日置市の小正醸造。代表銘柄〈小鶴〉や、甕仕込み木桶蒸留の〈蔵の師魂〉をはじめとしたクラシックな芋焼酎を多く手がけるこちらは、日本で初めて米焼酎の樽熟成を行った蔵でもあります。チャレンジングな酒づくりが社風として根づいているそんな流れを汲んで、最近ではジンやウイスキーづくりにも挑戦。世界的に評価される蒸留酒を数多く生み出しています。
小正醸造がつくるジン〈KOMASA GIN ほうじ茶〉
焼酎蔵がつくるクラフトジンの先駆けにもなった、小正醸造の〈KOMASA GIN〉シリーズ。その第二弾となる〈KOMASA GIN ほうじ茶〉の魅力は、なんと言ってもたっぷりとしたお茶の香り。ボタニカルは、ジュニパーベリーと鹿児島県産のほうじ茶、ヒノキのわずか3種類。一口含むと、ほうじ茶の香ばしい香りがふわっと鼻に抜けていきます。焼酎のようなホッと落ち着く味わいで、ソーダ割りはもちろん、お湯割りでも楽しめるジンです。
KOMASA GIN ほうじ茶 | SHOP→ |
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ジン 度数 45度 原材料 本格焼酎、ほうじ茶(鹿児島県産)、ジュニパーベリー、ヒノキ 容量 45ml, 500ml |
小正醸造がつくるウイスキー〈シングルモルト嘉之助2021 FIRST EDITION〉
2018年、小正醸造が鹿児島県の吹上浜沿いに設立した、ウイスキー製造所「嘉之助蒸溜所」(現在は嘉之助蒸溜所として分社化)。蒸溜所初のシングルモルトウイスキー〈シングルモルト嘉之助2021 FIRST EDITION〉は、小正醸造の樽熟成焼酎〈メローコヅル〉に使用した樫樽で寝かせた原酒がベース。長年の樽熟成焼酎のノウハウが詰まった、焼酎蔵ならではのジャパニーズウイスキーです。
シングルモルト嘉之助2021 FIRST EDITION | SHOP→ |
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シングルモルトウイスキー 度数 58度 原材料 米焼酎メローコヅルで使用したアメリカンホワイトオークリチャーカスクで熟成した原酒 容量 700ml |
これぞ元祖樽熟成焼酎!小正醸造のロングセラー焼酎〈メローコヅル 35〉
1957年に日本初の樽熟成米焼酎として発売された〈メローコヅル〉。その後継銘柄である〈メローコヅル 35〉は、アルコール度数を35度に下げ、より飲みやすい味わいに。米のまろやかな甘みや濃厚な樽香はどっしりとしながら、口あたりは柔らか。樽熟成焼酎初心者にもおすすめしやすい、小正醸造のロングセラーです。
焼酎以外の蒸留酒づくりに挑戦する蔵③
尾鈴山蒸留所
深い緑と豊かな水脈に囲まれた宮崎県の尾鈴山に建つ尾鈴山蒸留所。宮崎県の焼酎蔵、黒木本店の別蔵として1998年に設立された、比較的新しい酒蔵です。焼酎をはじめ、ジンやウイスキーなど手作業と最先端技術の両立で生まれる蒸留酒の数々は、どれも豊かな味わいを持つものばかり。目が離せない注目蔵のひとつです。
尾鈴山蒸留所がつくるウイスキー〈OSUZU MALT NEW BORN 700ml〉
尾鈴山蒸留所の母体である黒木本店の酒づくりは、原料の栽培から行うのも大きな強み。農業生産法人「甦る大地の会」を運営し、焼酎の原料となる農作物の栽培を行っています。自家栽培した大麦で仕込んだ〈OSUZU MALT NEW BORN〉は、尾鈴山蒸留所の新たな挑戦として誕生したウイスキー。宮崎県産の栗とアメリカンオークを使用した樽で18ヵ月熟成。焼酎づくりで培った技術が、甘やかな樽香とフレッシュな麦の香りを生み出しています。
OSUZU MALT NEW BORN 700ml |
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ウイスキー 度数 59度 原材料 大麦麦芽(宮崎県産)、栗(宮崎県産)・アメリカンオーク樽で熟成(18ヶ月間) 容量 700ml |
尾鈴山蒸留所がつくるジン〈OSUZU GIN〉
尾鈴山蒸留所が2020年に発売した〈OSUZU GIN〉。蔵のレギュラー酒〈尾鈴山 山ねこ〉の原酒をベーススピリッツに、金柑や日向夏、榊(さかき)の葉など、地元で採れたボタニカルを8種類使用した贅沢なクラフトジンです。芋焼酎の持つフルーティさと、ボタニカルのナチュラルな香りが絶妙にマッチして、飲み心地は優しくすっきりめ。炭酸割りはもちろん、カクテルベースとしても使いやすい1本です。
OSUZU GIN | SHOP→ |
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ジン 度数 45度 原材料 本格焼酎(山ねこ)、ジュニパーベリー、山椒、日向夏、金柑、ゆず、生姜、榊(さかき)、椎茸 容量 200ml, 700ml |
爽やかな味わいは食中酒としても抜群。尾鈴山蒸留所がつくる人気芋焼酎〈尾鈴山 山ねこ〉
〈OSUZU GIN〉のベースとしても使われている〈尾鈴山 山ねこ〉は、白芋系のさつまいも「ジョイホワイト」を使用した爽やかな香りの芋焼酎。柑橘のような華やかな香りの奥に、米麹の香ばしさが残る、優しい味わいが魅力です。飲み方を問わず、普段の食中酒として楽しめる万能さも嬉しいポイント。尾鈴山蒸留所の丁寧な仕事が光る本格焼酎です。
尾鈴山 山ねこ | SHOP→ |
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芋焼酎 度数 25度 原材料 甘薯(ジョイホワイト)、米麹(ヒノヒカリ) 蒸留 常圧 容量 720ml, 1800ml 蔵元 尾鈴山蒸留所 WEB→ 所在地 〒884-0104 宮崎県児湯郡木城町石河内656-17 |
焼酎以外の蒸留酒づくりに挑戦する蔵④
佐多宗二商店
鹿児島県の南端、南九州市頴娃町にある佐多宗二商店。1908年創立のこちらの蔵、最大の特徴は、バラエティ豊かな蒸留器の数々。グラッパ用のイタリアの蒸留器や、フランス製のアランビック蒸留器など、焼酎蔵としては珍しい蒸留器を揃え、オリジナリティあふれる焼酎づくりを行っています。2018年には新たに「AKAYANEクラフトスピリッツシリーズ」を展開。焼酎づくりで得たさまざまな知見を生かした蒸留酒を手がけています。
佐多宗二商店がつくるアブサン〈AKAYANE アブサン クスシキ 2020〉
フランスやスイスをはじめとしたヨーロッパ各地でつくられる薬草リキュールのアブサン。ニガヨモギを中心に、ハーブやボタニカル、スパイスを漬けてつくります。佐多宗二商店の〈AKAYANE アブサン クスシキ 2020〉は、自家栽培した無農薬のニガヨモギのほか、45種類ものボタニカルを使用した贅沢なつくりが特徴。ハーブやスパイスはもちろん、果物、野菜から丁寧に香りを引き出した、複雑な味わいが広がります。
AKAYANE アブサン クスシキ 2020 | SHOP→ |
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アブサン 度数 55度 原材料 ニガヨモギ(自社栽培オーガニック) 蒸留 間接加熱蒸留 容量 500ml |
佐多宗二商店がつくるスピリッツ〈AKAYANE 山椒 スピリッツ〉
AKAYANEブランドの定番銘柄としても知られる〈AKAYANE 山椒 スピリッツ〉は、その名前の通り、山椒の香りがほとばしる日本ならではのスピリッツ。ベーススピリッツには蔵の芋焼酎を使用し、国産の山椒をたっぷりと浸漬。抜群にキレのある風味の奥に、芋焼酎のまろやかな甘みがほのかに残ります。
AKAYANE 山椒 スピリッツ | SHOP→ |
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スピリッツ 度数 45度 原材料 芋焼酎、山椒 容量 720ml |
芋と米のブレンドで際立つ甘み。佐多宗二商店がつくる定番焼酎〈XX晴耕雨讀〉
焼酎のつくりにも手間を惜しまない佐多宗二商店。蔵のレギュラー酒〈晴耕雨読〉の姉妹品〈XX晴耕雨読〉は、黄金千貫で仕込んだ芋焼酎に、米焼酎を20%ブレンドした芋米焼酎。口に含むとメロンを思わせる芋のフルーティな香りが広がり、後から米焼酎特有のバニラ香がふわりと鼻を抜ける上品な味わいの1本です。