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ウイスキー好きに飲んでほしい樽熟成の焼酎5選|福岡の人気バー「ライカード」がおすすめ!

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ウイスキー好きに飲んでほしい樽熟成の焼酎5選|福岡の人気バー「ライカード」がおすすめ!

Text & Photo : SHOCHU NEXT

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熟成焼酎の話をしていると、ウイスキー好きの方々からも興味をもらえることも多く、やはりみなさん樽熟成が気になる様子。多くの焼酎蔵元が樽熟成の銘柄を出していますが、ウイスキーにも焼酎にも詳しい人からのおすすめめなら、ウイスキー好きにもかなり説得力がありますよね?

というわけで、福岡市にあるウイスキーバー「ライカード」を訪ねました。こちらの「ライカード」、ウイスキー愛好家にはよく知られたオーセンティックバーです。マスターの住吉祐一郎さんは、ウイスキーの知識はもちろんのこと、近年では焼酎蔵元にも通う生粋の蒸留酒マニア。あらゆる蒸留酒を知るこの方に、ウイスキー好きにも飲んでほしい樽熟成の焼酎を選んでいただきました。


ウイスキーに焼酎に、蒸留酒の魅力を追求するバーテンダーに会いに福岡へ

感度の高い大人の集まるエリアとして、人気の福岡・薬院エリアにある「ライカード」。店内はすっきりと伸びた一枚板のバーカウンターに、テーブル席のほか個室も完備。隠れ家的でありながら店内は心地よい広さがあるため、ひとりで静かに飲むのもいいし、お酒好き仲間数人での利用にも。2012年のオープンから9年を経て、地元のウイスキー好きはもちろん、ジャパニーズウイスキーを求めるインバウンドの外国人も多く訪れる人気店です。

オーナーバーテンダーである住吉祐一郎さんは、オーストラリアへの留学経験も長く、海外からのゲストを連れて行くお店としても重宝されています。研究熱心で文章を書くことも好きな一面もあり、海外で出版されたウイスキーの書籍の翻訳も手がけています。

そんな住吉さんは最近、ウイスキーと同じ蒸留酒である焼酎にも強い興味を持っているそうで、九州の蔵元を数多く回り、ウイスキー専門誌への寄稿も行っています。焼酎業界としてはなんとも頼もしい人材! そんな方がおすすめしてくれる焼酎とは? さっそく聞いていきましょう!

「ライカード」店主・住吉祐一郎さんが選ぶ、樽熟成の焼酎とは?

住吉祐一郎:今回のセレクトは、ウイスキーバーのバーテンダーとしての立場で、洋酒に近いような樽熟成の焼酎を飲みたい方向けに5本を選びました。

本来、焼酎はウイスキーとはまったく違うお酒で、焼酎ならではのよさがあります。昨今のウイスキーの人気に影響されてでしょうか、樽熟成ものなどで洋酒に似せたつくりの銘柄も少なくないのですが、僕自身は焼酎の個性が消えてしまうのはもったいないと思います。今日はなるべく焼酎らしさもある樽熟成を選んでみました。

ウイスキー好きに飲んでほしい樽熟成の焼酎 01

洋酒好きにも響くまろやかな味わい〈二千年の夢〉

住吉:まず1本目。博多からの往来も盛んな長崎県壱岐島でつくられている壱岐焼酎から選びました。〈二千年の夢〉は、麦焼酎をシェリー樽で3年以上寝かせています。味わい的には、麦の味がしっかりしていて、飲みごたえがある。ウイスキーとの共通項も多いので、ウイスキーをお好きな方にもぜひ試してもらいたいですね。

壱岐焼酎は米麹の量が多いため、米由来の独特のまろやかさがありますが、この風味は洋酒好きの方にも響くものだと思います。麦も熟成することでまろやかさが出ますよね、このふたつの熟成の風味がうまく調和した銘柄です。

この焼酎は原酒で42度なのもいい。単式蒸留でつくる焼酎は、芋の場合は原酒で40度を越えるのは難しいですが、麦だと高い度数がとれる。世界の蒸留酒の市場に焼酎が出ていくには、やはり40度以上のほうが受け入れられやすいと思います。

まずは、ストレートで原酒をしっかり味わってほしいです。度数の高い焼酎全般に言えることですが、まずはストレートで試してほしいです。お酒本来の味わい、生産者の味わいをピュアに知ることができると思います。その後で、ロックにしたり、水割りにして、好みの味を探っていく。

個人的には、あえてウイスキーのテイスティンググラスでお出ししたいかな。洋酒に慣れている方からすると、味わいが近く感じられると思います。

二千年の夢
【麦焼酎】
貯蔵 3年以上(樽)
度数 
42度
原材料 
麦・米麹
蒸留 
常圧
容量 720ml

蔵元  壱岐の蔵酒造 WEB→
所在地 長崎県壱岐市

ウイスキー好きに飲んでほしい樽熟成の焼酎 02

樽の香りが深く包む〈夢想仙楽〉

住吉:〈夢想仙楽〉も麦焼酎のシェリー樽熟成ですが、〈二千年の夢〉とはまったく違う個性があります。樽の香りがしっかりしていますね。一口飲んだ時の印象は、ダークラムのような芳醇さ。焼酎と知らずに飲んだら、どこか海外の蒸留酒だと思うでしょうね。芯があるし、とてもはっきりした味わいです。

こちらのボトル、写真だとかなり和風で重厚感があるように見えるでしょうが、実際はむしろころんとしていてかわいらしいんですよね。手にのせて撫でたくなるような……(笑)。外国人のお客さんにも受けると思いますよ。こういう丸いグラスで出すのもいいのではないかな。グラスは”重さ”も重要なんですよ。重いと少しずつ飲みますから、ウイスキーを飲むのと似た感覚で焼酎を飲めば、洋酒っぽさも演出できるんです。

夢想仙楽(むそうせんらく)
【麦焼酎】
貯蔵 5年以上(樽)
度数 
40度
原材料 
麦・麦麹
蒸留 
減圧
容量 720ml

蔵元  光酒造 WEB→
所在地 福岡県糟屋郡粕屋町

ウイスキー好きに飲んでほしい樽熟成の焼酎 03

独特のとろみが癖になる 〈小鶴 THE CASK〉

住吉:芋は樽熟成に向いてないと久しく言われていましたが、実際にやってみたらおいしいじゃないかと。そういうことができる蔵元はそんなに多くはない。鹿児島県の小正醸造はそのひとつ。ウイスキー蒸留所も新設したことも話題になりましたが、焼酎が世界に出られないことが悔しくて、自分たちの酒づくりの技術を伝えるためだと聞いたことがあります。その情熱は本当に素晴らしい。

そういう蔵元による、芋焼酎の樽熟成である〈小鶴 THE CASK〉の意義は大きいと思います。とても深い味わいがあり、度数も高いのでとろみを感じます。水割りやソーダ割りではなく、そのままストレートやロックで楽しめるポテンシャルがあります。芋の臭さも個性と感じられ、慣れてしまえば、これが飲みたいと癖になると思いますよ。

小鶴 THE CASK
【芋焼酎】
貯蔵 1年以上(樽)
度数 
38度
原材料 
さつまいも・米麹
蒸留 
常圧
容量 720ml

蔵元  小正醸造 WEB→
所在地 鹿児島県日置市

ウイスキー好きに飲んでほしい樽熟成の焼酎 04

洋酒のようなフルーティさが個性的 〈田苑 エンヴェレシーダ

住吉:〈田苑 エンヴェレシーダ〉は唯一無二の面白い樽熟成焼酎だと思います。白麹で仕込んだ芋焼酎で、3年熟成ですが、熟成にこだわる蔵元らしい、丁寧な熟成が売りですね。焼酎ではオフフレーバーとされるライチ的な香りをあえて狙っているようなところがあります。焼酎におけるそのオフフレーバーは、洋酒の世界では“フルーティ”として評価される。だから、専門家の立ち位置で評価が分かれるんです。とてもいい意味で異質の焼酎です。似たような焼酎はほかに見当たらない、真の個性派。でも洋酒好きには、するっと受け入れられると思います。

田苑 エンヴェレシーダ
【芋焼酎】
貯蔵 3年(樽)
度数 
40度
原材料 
さつまいも・米麹
蒸留 
常圧
容量 700ml

蔵元  田苑酒造 WEB→
所在地 鹿児島県薩摩川内市

ウイスキー好きに飲んでほしい樽熟成の焼酎 05

深いけれど飲み飽きない絶妙のバランス 〈紅さんご〉

住吉:最後は、黒糖焼酎から〈紅さんご〉を選びました。こちらは、一般的な黒糖焼酎に比べるととても個性的な味わいです。奄美大島の湯湾岳の水質のせいもあるのでしょうか、何しろ深みがある。そして味のバランスがとてもいい。黒糖が原料の蒸留酒であること、南国で作られていることから、黒糖焼酎はよくラムと比較されますが、ラムはべたっとした感じのものも多いんです。それはカテゴリーの定義が曖昧なところがあって、加糖したり廃糖蜜を加えてもいいから。ずっと飲んでいると飽きてくるものも少なくないんですよね。〈紅さんご〉は、そういうものとは一線を画した味。しっかりと芯があるのにすっと後を残さず消えていく、引きのよさが本当に素晴らしいんです。飲み飽きないことはそもそも焼酎のよさですが、それを大切に、この高い度数かつ熟成銘柄で実現できているのはすごいことですよ。

紅さんご
【黒糖焼酎】
貯蔵 
5年(樽)
度数 
40度
原材料 
黒糖・米麹
蒸留 
常圧
容量 720ml

蔵元  奄美大島開運酒造 WEB→
所在地 鹿児島県大島郡宇検村

焼酎をもっと語れる場を

どうですか? 住吉さんのお話を伺っていると、ひとつずつの銘柄をじっくりと飲んでみたくなりますよね! 樽貯蔵をすると、焼酎らしさがなくなってしまうという声もあるにはある。でもそれぞれの銘柄によってきちんと個性があるし、蒸留所の環境やつくり手の思想がきちんと込められていますよね。

「ウイスキーの場合は、バーで飲むというシチュエーションがお酒への理解を深めている側面も大きいですよね。お客さんとバーテンダーは、カウンター越しにこういう会話ができますから。その点、焼酎の場合は飲めるのが居酒屋というケースが多いので、なかなかそういう会話にはなりにくい。今後は、バーテンダーやアンバサダーが話すような場ができてくるといいですね。九州に何百もの蒸留所があるというのは、世界的にすごい事実です。日本の蒸留酒をより広めるために、私たちバーテンダーがやるべきことはまだまだ多いと考えています。焼酎本来の、無色透明なのにフレーバーの多様性や軽やかさがあるお酒だ、という点もしっかり伝えつつ、樽熟成のような洋酒にも負けない個性派もあることをプロモーションできるといいですね」(住吉)

蔵元それぞれがどういう焼酎を理想としているのか、つくりのこだわりや味の秘密……。お酒は、飲むだけでなく、知る楽しみも大きいですよね。住吉さんのような伝え手が増え、焼酎にとってのそんな場がもっとたくさんできるといいなあ! 

ウイスキーやラムなど洋酒好きを自認する方々! みなさんの経験と知識ならではの熟成焼酎の楽しみもぜひ見つけてみてほしいです。

ライカード
住所 福岡県福岡市中央区渡辺通2-2-1 西村ビル 5F
営業時間 19:00~0:00
定休日 月、不定休 
TEL 092-215-1414
INSTAGRAM bar_leichhardt.jp

※新型コロナウイルス感染症対策のため、営業時間に変更のある場合があります。

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