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米の熟成焼酎と「蟹とアボカドのセルクル仕立て」|片岡護シェフのイタリアン&熟成焼酎ペアリング #02

レシピ・飲み方・食

米の熟成焼酎と「蟹とアボカドのセルクル仕立て」|片岡護シェフのイタリアン&熟成焼酎ペアリング #02

Text : Sawako Akune
Photo : Norio Kidera

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日本にイタリアン文化を根づかせた功労者といえば、「リストランテ アルポルト」のオーナーシェフ、片岡護さん。この人がメディアで大活躍し始める1980年代頃までは、“パスタ”の種類なんて誰も気にしたことなかったし、まとめて“スパゲッティ”って呼ばれてたといえば(ナポリタンスパゲティのように!)、その偉大な足跡ががわかってもらえるだろうか? そんな片岡さんによる、熟成焼酎とイタリアンのペアリングの提案の第2回。どんなマリアージュが見られるのでしょうか。


本日の焼酎:熊本・六調子酒造の〈ろくちょうし 赤〉

どっしりとまろやかな味わいが特徴の米の熟成焼酎〈ろくちょうし 赤〉。

2本目のセレクトは球磨焼酎の人気銘柄、六調子酒造の〈ろくちょうし 赤〉。1923年創業の六調子酒造は、熟成に重きを置く蔵元で、熟成焼酎の銘柄が豊富。本格焼酎がラベルで“長期貯蔵酒”(古酒)をうたうには、3年以上熟成の原酒が50%以上含まれていることが条件だが、六調子酒造は100%が古酒にこだわりを持っていることや、ブレンドの銘柄が多いことも特徴だ。

こちらの〈ろくちょうし 赤〉は、常圧蒸留による米焼酎をホワイトオーク樽で13年熟成した銘柄。常圧ならではの米の甘味と、樽の香りがふわっとマッチする一本だ。ちなみにこの〈ろくちょうし 赤〉、ラベルデザインが民芸運動の旗手・芹沢銈介によるものなのも相当かっこいいトリビア!

「樽香があってとってもまろやかでふくよか。イタリアだと、オーク樽で熟成した酒といえばマルサラワイン。ワインにワインから蒸留した酒精強化用のアルコールや、ブドウのアルコール発酵中のミステッラを加えたお酒をオーク樽に寝かせるんです。熟成年数によって味わいも変わるけど、13年物って言ったら相当だよ! 本格焼酎だとこの年数で手頃な価格で手に入るんだね。しっかりとお米の甘さを感じる焼酎なので、よく合いそうなさっぱりとした魚介の前菜を紹介しましょう」

ろくちょうし 赤
貯蔵 13年・オーク樽
度数 28度
原材料 米、米麹
蒸留 減常圧


蔵元 六調子酒造  WEB →
所在地 熊本県球磨郡

本日の料理:蟹とアボカドのセルクル仕立て

崩して食べるのがもったいないほどの美しい一皿。

さて片岡さんが仕上げて持ってきてくださったのは、見るからに美しい一皿! 
「セルクルでアボカド、蟹のサラダ、フルーツトマトをレイヤーに重ね、ラズベリーソースのを敷いたお皿にのせました。仕上げにたっぷりのキャビアとあさつきを散らしました。レイヤーがきれいでしょ?」

「ペアリングにルールはないけれど、たとえば魚介系の生物だと自分は米焼酎が好きだな、火を通したものは麦と合うな、お肉のこってり系だと芋がいいな……と、だいたいの系統を把握しておくようにするといいよ。合う合わないは、あくまでそれぞれの人の好み。本当に合わないときは、口の中でお酒と食べ物がハレーションを起こすから分かると思うよ! 心配せずにチャレンジしてみて。イタリアンとペアリングしなきゃ! っていうのも気負わなくていいんだよ。たとえばお米にはお新香がよく合うでしょう? 白菜のお新香にオリーブオイルをたらっと垂らしてみてごらん。イタリアンと和食の融合で、焼酎にもとっても合うものになると思うよ~!」

さて試食! フルーティーな一皿が、焼酎の甘味とベストマッチ

ストレートをちびちびやりながらゆっくりと前菜を楽しみたい。

アルコール28度と、高すぎず低すぎずの〈ろくちょうし 赤〉。片岡さんのお薦めは、お酒そのものの味わいも楽しめるストレートだ。

「食欲をそそる前菜に、ワインよりちょっと強めのお酒も乙じゃない? ボトルごと冷蔵庫で冷やしておくのがいいんじゃないかな」

カニ、アボカド、フルーツトマト……。フルーティーだけど甘みのある素材と、〈ろくちょうし 赤〉のお米の甘みが出会ってよりふくよかな味わい! わわわ、今日もまた飲み(&食べ)すぎそうです……。

「ふふふ、おいしいでしょう! 焼酎の豊かさが味を引き立てる。僕は、普段から焼酎をよく飲むんだよ。焼酎のよさのひとつは、やっぱり糖質ゼロという点だよね。歳をとると痛風やらコレステロールが高めやら、いろんな健康上の問題が出てくるもの(笑)。健康を気にする人には、プリン体ゼロ・糖質ゼロはやっぱりとてもありがたいよね。

2015年、ミラノで“食”がテーマの国際博覧会が開催されたときに、知り合いのレストランを借り切って、アクアパッツァの日髙良実シェフ、ポンテベッキオの山根大助シェフと、日本酒や日本の食材を伝えるイベントを開催したことがあるんだよ。その頃でさえ、イタリアではまだ日本酒が知られていなかったのだけど、イベントの積み重ねでだんだんとヨーロッパに広がっていったんだ。焼酎も今、世界を目指そうとしているんでしょう? 今回いろんな熟成焼酎を試飲して思うのは、どの蔵元も、その蔵にしか出せない味わいを持っているんだな! ってこと。それを信じて、その味わいを究めていってほしいなあ。それを新しいお客さんや世界に伝えていくのはさ、僕らシェフやメディアの役割。どっちも頑張らなきゃね!」

片岡護
Mamoru Kataoka|「リストランテ アルポルト」オーナーシェフ。1948年東京生まれ。国内外で料理修行の後、73年に帰国。代官山「小川軒」、南麻布「リストランテ マリーエ」料理長を経て83年「リストランテ アルポルト」をオープン。以降、TV・雑誌などで大活躍。日本にイタリアンを根づかせた立役者。

リストランテ アルポルト
東京都港区西麻布3-24-9
https://www.alporto.jp/

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