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女性の声でお酒を後押し! フェミナリーズ ジャポン 友田晶子さんに聞く焼酎のこれから

インタビュー

女性の声でお酒を後押し! フェミナリーズ ジャポン 友田晶子さんに聞く焼酎のこれから

Text : Sawako Akune(SHOCHU NEXT)
Photo : GINGRICH(SHOCHU NEXT)

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映画や、音楽、本……。「あの賞をとった!」は、強い説得力を持ったセールストークになりますよね。それはお酒でも同じ。世界中で開催されるコンテストやコンクールでの評価は、お酒の銘柄の売れ行きを左右するきっかけのひとつになりえます。たとえば、ここのところ海外のコンテストでも散見されるようになった「焼酎」部門での受賞は、その国でのセールスにもつながりうるというわけ。世界に数あるコンテストのなかでも個性的なのが、今年で開催17回を迎えたフランスの「フェミナリーズ 世界ワインコンクール」。最大の特徴は、審査員全員が女性であるという点。世界中から約600名のワイン専門家が集まって評価を行います。日本ワインや日本酒に続いて、2022年から「日本産蒸留酒部門」が新設されたこのコンテストの、日本広報大使を務めるのが友田晶子さん。友田さんといえば、日本のSAKEとWINEを愛する女性の会、通称「SAKE女の会」を率いる、日本のお酒界のパワーレディです。友田さんの目に、焼酎の現在はどう映っているのか? 6月末、今年のフェミナリーズの審査結果が発表されたのをきっかけに、お話を伺ってきました。

--改めて、「フェミナリーズ 世界ワインコンクール」について教えていただけますか。

友田晶子 2007年にスタートしたこのコンクールは、フランス国内でもワインのメッカであるブルゴーニュのボーヌで開催されます。主宰は、30年以上にわたって、各種のワインコンクールを成功させてきたディディエ・マルタンという方。マルタン氏は、女性の声がワイン市場に与える経済的影響力を目の当たりにしてきたんです。女性たちに認められたお酒は広く販売に結びつくと。そこで「フェミナリーズ 世界ワインコンクール」は、女性審査員だけで行うことになりました。審査員の国籍はフランスをはじめとするヨーロッパ圏はもちろんのこと、レバノン、アメリカ、メキシコ、チリ、ブラジル…と世界中にわたります。アジアからは唯一日本から参加しているというわけです。

中央がディディエ・マルタン氏。

--友田さんも日本の方々を率いて審査に出かけていますね。

友田 はい。海外での日本酒への興味の高まりを受けて、2016年に主宰者が日本へ来たのがきっかけです。ワインだけでなく、日本酒やいずれは焼酎もカテゴリーを設けたいという思いがあって、ワイン、日本酒、焼酎までわかる女性を…ということで私に白羽の矢が立ちました。私が「SAKE女の会」を立ち上げたのもちょうどその年だったんですよ。会の目指すもことのひとつに、日本産の酒類を広めるのはもとより、女性の活躍の場を創生するということがありましたから、そのご縁を受けて、2016年からは毎年、審査員を送り出しています。資格を持っている方たちにとって、コンクールの審査はとてもいい経験を積む場になりますから。

--現地の審査会の様子はどのようなものでしょう?

友田 審査はとても厳正で、ブラインドテイスティングであるのはもちろん、審査中にほかの審査員と話すことも許されていません。審査中の会話は、コンテストによって異なるのですけれども、話し合いがあるとどうしても積極的で声の大きい人の意見が通りがちになってしまうので、フェミナリーズではそれはしない。さらに、そもそも隣に座っている方とは審査しているものが違うような仕組みになっています。香りや味わいはもちろん、コメントも細かに書いていきますので、その場にいるだけでワクワクするような審査です。私は、焼酎を含む日本産蒸留酒の部門が新設された昨年の審査会では、主宰者からの依頼で焼酎とはどのようなお酒か、どのように審査すべきか、評価すべきかを審査員たちの前でお話しさせていただきました。

驚いたのは、海外国籍の審査員の皆さんが、焼酎についてもとても詳しいということ。正直なところ、芋焼酎のクセや、焼酎に生きる麹らしさはどのように評価されるんだろう? と気にしていた面もあったのですが、杞憂でしたね。皆さん審査員としてとても博識で能力も高い。

ブルゴーニュの審査会の様子。
希望者を募って日本から審査員を帯同。審査会の前後にはパリのビストロやワイン専門店などを訪ねる満喫の旅。

--フェミナリーズでは、2017年から「日本産ワイン」「日本産リキュール」の出品が始まり、20年には「日本酒」の部門が新設。さらに22年に「日本産蒸留酒」の部門が新設されました。今年の結果についてお聞かせいただけますか。

友田 世界14カ国からの出品があり、総出品数は3812アイテム。350名の審査員によって審査がなされ、日本ワインからは29、日本のリキュールは18、日本酒54、日本産蒸留酒は12銘柄が受賞となりました(審査結果はこちら→)。日本産蒸留酒部門のうち金賞を受賞したもののなかから焼酎をピックアップすると、林酒造場さんの米焼酎〈極楽〉や奄美大島酒造の黒糖焼酎〈高倉〉がありますね。球磨焼酎〈極楽〉は、そもそものお酒がとてもいい。ウイスキー、ブランデーのようなニュアンスが海外の審査員に響いたのではないでしょうか。黒糖焼酎も同じく、洋酒を知っている方々には響きやすい。

フェミナリーズ・ジャポンでは、「日本ワイン」、「日本リキュール」、「日本酒」、「日本蒸留酒」各部門の中で最高評価点を獲得したアイテムに「TOP OF THE BEST」の称号とトロフィーとを授与しています。今年は惜しくも焼酎は「日本蒸留酒」のTOP OF THE BESTを逃しましたが、2022年は芋焼酎〈大隅〈OSUMI〉〉が受賞したんですよ。原料に関わらず、高い評価を得るポテンシャルがあると考えています。

--世界の舞台をご存知の友田さん、焼酎の現在とこれからをどのようにご覧になっていますか。

友田 世界の市場に出たときの戦いづらさは、やはりあるとは思います。25度というアルコール度数が、蒸留酒としてはすこし半端に映るといった点ですね。とはいえ焼酎が培ってきた歴史からして、25度くらいがちょうどいいのだ、という声も理解できる。

個人的には、やはり業界として、提供者を育てることがいちばんの課題ではないかな? と思いますね。どの蔵元さんもおいしいお酒をつくっているし、それこそが本業。私は日本でもソムリエの資格を早くにとった一人として、ワインがソムリエの力で広く深く浸透していったのを見てきていますので、その思いがとても強いんですよ。いつ、どうやって、何を飲んだらいいのか? 焼酎には説明が必要なのに、そういうことを教えられる人たちがとても少ない。世界を見渡すとそれはさらにそうですからね。日本酒の利き酒師の資格は、今、海外の需要が爆発的に伸びていると聞きます。焼酎もそうなっていかないと、と。

--伝道師の不足という課題は、確かにありますよね……。

友田 「私は球磨焼酎大使も拝命していて、一時期はさかんにペアリング提案なども行ったんです。確かに焼酎は、温度や飲み方をかえることで和洋中どんな料理にも合わせやすいですし。ところが、たとえばフランスならば、食中酒としてすでに確立しているワインの牙城を崩すのはかなり難しい。蔵元が頑張ればなんとかなる、というような話でもないだろうな、と思うんです。アメリカにおいてソジュが熱心なロビー活動を行って税制優遇を勝ち取ったようなことを、日本はやっているかな? と。ひとくちにこうすれば売れる! とはいえない大きな課題だとも思っています。活路のひとつを挙げるならば激増するインバウンドですね。焼酎をつくる現地に来てもらうのがいちばん。だってどの蔵元も素晴らしく美しい土地じゃないですか。たとえば球磨焼酎ならば500年の歴史があるといったことも、海外の方には驚くべき価値のあることです。皆さん感動するし、土地のものと一緒に楽しむ焼酎は間違いなくおいしいのですから、積み重ねれば大きな効果になっていくと思いますよ。作り手の思いや技術がきちんと伝わるような観光がもう少し増えていくといいのかもしれません」

--友田さんならば海外の方に焼酎・泡盛をどのように売りますか?

友田 「白カビ系のチーズは、基本的にはワインとは合わないとされています。それはワインの教科書にも載っているくらいに広く知られた常識で、ワインはピュアなぶどうジュースからつくられるので、カビ系の食べ物には合わないと。そこで麹というカビを使う日本酒や焼酎なんですよ! 特に甕で寝かせた米焼酎や泡盛は、白カビとの相性が抜群だと私は思っています。味わいの土っぽさやミネラル感が共通するんです。泡盛や球磨焼酎を温めたものと白カビチーズを合わせると、チーズも溶け出してペアリングは抜群。世界的に浸透している「生牡蠣にはシャブリ」と匹敵するくらいの相性だと思いますよ。「生牡蠣にはシャブリ、白カビチーズには泡盛・米焼酎」!(笑) そのくらいの勢いでセールスしたいですね。

--軽やかに、広い視点で焼酎やお酒のことを考えていらっしゃることに感銘を受けました。今後もフェミナリーズはもちろんのこと、日本の酒類業界にも、より女性の声が反映されていくことを願います。

友田 ちょうどこの6月に著書「美しい女は呑んでいる: 美人をつくる美酒指南」を上梓したんです。これって本当に私の実感でして(笑)。SAKE女会はもちろん、業界の女性たちは実によく食べ飲む人ばかり。それでいて皆、美しくて若々しくて健康なんですよね。アンチエイジング専門医で、ワインスクール校長・ソムリエでもあるドクター、青木晃医師に医療監修を頂いて、お酒好き女子たちが生涯お酒を楽しみながら美しく年齢を重ねられるよう、たくさんのネタを詰め込みました。これまでは“非常識”とされていたような健康・美容ネタもあるのでぜひ読んでいただけたら! 

--常識にとらわれず、にこやかに前へと進んでいく友田さんに元気をいただきました!本日はありがとうございます。

友田晶子 
ともだ・あきこ/トータル飲料コンサルタント(ワイン・日本酒・焼酎・ビール・カクテルなどお酒と食に関する専門家)。J.S.A.認定 ソムリエ/SSI認定 日本酒きき酒師・焼酎きき酒師/日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)SSI INTERNATIONAL 副会長 兼 広報委員/FBO認定 酒学講師/一般社団法人日本のSAKEとWINEを愛する女性の会代表理事/ふくい食のアンバサダー/ふくいブランド大使/球磨焼酎大使。1988年 アンジェ大学、エクサン・プロヴァンス大学、ボルドーにて、語学とワイン醸造を勉強し、帰国後の89年、当時まだめずらしい女性のソムリエ&ワイン・コーディネーターとして独立する。
フェミナリーズ 世界ワインコンクールはこちら

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