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黒糖の熟成焼酎と「豚バラ肉と栗のトマト煮込み」|片岡護シェフのイタリアン&熟成焼酎ペアリング #03

レシピ・飲み方・食

黒糖の熟成焼酎と「豚バラ肉と栗のトマト煮込み」|片岡護シェフのイタリアン&熟成焼酎ペアリング #03

Text : Sawako Akune
Photo : Kosuke Tamura

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日本のイタリアンシェフの最重鎮のお一人「リストランテ アルポルト」のオーナーシェフ片岡護さんに、熟成焼酎とイタリアンをペアリングしていただくこの連載。第3回目に登場したのは黒糖の熟成焼酎。樽熟成ならではのコクに負けない、どっしりと食べ応えのある一皿です!

本日の焼酎:奄美・西平本家の〈天孫岳(アマンディ)〉

蔵の看板銘柄〈天孫岳〉の原酒をさらに厳選して樽熟成。優しげな色とは裏腹のコクとパンチに驚くはず。

片岡さんが今回セレクトした熟成焼酎は、黒糖焼酎〈天孫岳(アマンディ)長期貯蔵40度〉。奄美群島でだけ生産が認められている黒糖焼酎。〈天孫岳〉をつくる西平本家は、1925年に喜界島でスタートした蔵元で、27年から奄美本島の名瀬市で操業している。

黒糖焼酎ならではの3段仕込みや甕仕込み、そして特殊な蒸留器を使った常圧蒸留と、昔ながらの手法にこだわる西平本家。原料となる黒糖や米はすべて国内産だ。

さまざまな熟成も手がけており〈天孫岳〉はオーク樽熟成の銘柄。なかでもこちらの〈天孫岳 長期貯蔵40度〉は、厳選した原酒を長期熟成した、度数も高めのスペシャルな1本!

ちなみに“アマンディ”は、奄美大島を創生した2人の神、阿摩弥姑(あまみこ)と志仁礼久(しにれく)が最初に降り立ったとされる、奄美大島のなかでも神聖な場所。高貴な名前とトロリとコクのある味わい。黄金色の液体が神々しく見えてきます。

「これ、おいしいよね~」とニッコニコの片岡さん。

「実は2019年に初めて奄美に行って、食文化もあたたかで優しい人たちも大好きになっちゃった。黒糖焼酎の蔵元も見せていただいたんですが、ここでしかつくれないお酒というのがとっても素晴らしい。この〈天孫岳 長期貯蔵40度〉は、黒糖焼酎の熟成の可能性を知らせてくれる1本。世界の人が価値に気づいたら大騒ぎになるような気がするね」

本日の料理:豚バラ肉と栗のトマト煮込み

ローズマリーオイルがとてもいい味と香りのアクセントになった一皿。時間をかけて煮込んだ豚肉はホロホロのトロトロ!

大きめのお皿を持って現れた片岡さん。本日のペアリングはトロトロの煮込み!ワイングラスに注いだエレガントな焼酎と一緒にサーブしてくださいました。

「熟成ならではのコクのある黒糖焼酎なので、室温くらいでサーブがいいかな。すこし強いという方は氷を浮かべたり、僕みたいに健康のために酒量を控えている人は水割りで!」

〈材料(4~5人前)〉
・豚バラ肉 400g
・むき栗 200g
・白ワインビネガー 大さじ1.5
・玉ねぎ(みじん切り) 1/2個
・ニンジン(みじん切り) 2cm
・セロリ(みじん切り) 1本
・トマトホール缶 200cc
・白ワイン 50cc
・ブイヨン 100cc
・パセリ(みじん切り) 大さじ1
・オリーブオイル 大さじ2
・ニンニク(みじん切り) 大さじ1/2
・いんげんバターソテー 8本
・ローズマリーオイル (オリーブオイル30ccを小鍋に入れ、ニンニク1/2片とローズマリー1/2本を加えて低温でゆっくりと火を入れたもの)

① 豚バラ肉を角切りにして塩コショウ、小麦粉(分量外)を振り、オリーブオイルをひいたフライパンできつね色になるまでソテーする。

② 別の鍋にオリーブオイルとニンニクのみじん切りを入れ、ニンニクがきつね色になるまでゆっくり炒める。ここにみじん切りにした玉ねぎ、ニンジン、セロリを入れてゆっくりと30~40分炒める。

③ ②の鍋に①の豚バラ肉を加え、白ワインビネガーで香りづけしたら、白ワインを加える。アルコール分を飛ばしたら、トマトホール缶、ブイヨン、栗、ローズマリー1/2本を加え、豚肉が柔らかくなるまで1~2時間煮込む。

④ 大きめのお皿に③の煮込んだ肉、いんげんのバターソテーを盛りつける。ローズマリーオイル、パセリのみじん切りを振りかけてサーブする。

お待ちかね、試食タイム!煮込んだトマトの甘みと黒糖焼酎のマリアージュ

これまでならしっかりめの赤ワインを合わせていたかな?という肉料理。パンチの効いた熟成焼酎とのペアリングも全く引けを取りませんよ!

「奄美大島の食文化にとって、豚肉はとても大切なものじゃない? だから奄美でつくられる焼酎と豚肉が合わないわけがないんだ(笑)! 黒糖焼酎ならではのフルーティーさに寄り添うトマトの煮込みにしました。みじん切りにした玉ねぎ、ニンジン、セロリをオリーブオイルで炒めた“ソフリット”はイタリアンの定番の隠し味。単なるトマト煮にはないコクと食感を与えてくれます」

時間をかけて煮込んだ豚肉はトロットロ、煮込んだむき栗はまったりとした口触り。これがとろりとした飲み心地の、樽熟成の〈天孫岳 長期貯蔵40度〉と口の中で一緒になると、両方の深みが増幅される感じ!

「〈天孫岳 長期貯蔵40度〉はほんの少し水を加えると香りが開くので、グラッパグラスみたいな小さなグラスできゅっとやるのもよさそうだよね。ローズマリーの香りと、樽の香りもよく合うはずです。栗は、今日はイタリア産の冷凍のものを使っています。和栗より濃厚な味わいですね。栗が手に入りづらければ、キノコもいいよ! しいたけ、マッシュルーム、シメジ、エリンギ……何でも合う。その場合、きのこのうま味を楽しむためにトマトホール缶はナシ。お米の熟成焼酎にも合いそうだね。

本格焼酎は確実に世界中から愛される味だと思うけれど、輸出を考えるときにはもっとたくさんつくれ、とかってなるじゃない? それはもちろん一理あるけれど、蔵元ごとのつくりや大切にしていることは違うのだから、それだけが正解とも限らない。そもそも熟成焼酎は、熟成の時間と手間とを考えたら、そんなにいくらでもつくれるものではないからさ。でも、数は少なくても価格をもっと高くすることはできると思います。今、世界の食は、原料にこだわること、ヘルシーなことを大切にする方向へシフトしているでしょう? 優れた熟成焼酎も、素材にこだわり、つくりにこだわり、生産できる数は少ないからプレミアムな価値があると周知していくようなやり方もあると思いますよ」

片岡護
Mamoru Kataoka|「リストランテ アルポルト」オーナーシェフ。1948年東京生まれ。国内外で料理修行の後、73年に帰国。代官山「小川軒」、南麻布「リストランテ マリーエ」料理長を経て83年「リストランテ アルポルト」をオープン。以降、TV・雑誌などで大活躍。日本にイタリアンを根づかせた立役者。

リストランテ アルポルト
東京都港区西麻布3-24-9
https://www.alporto.jp/

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