最近何かと耳にする“多様性”の観点でいうと、焼酎ほど多様性のあるお酒は、なかなかありません。原料・麹・酵母・蒸留・熟成……とつくりの過程からして選択肢がとても多く、かつ組み合わせは無限大! 「お酒は好きだけど焼酎は苦手」と言う人がいるとしたら、それは単に、まだ自分の好みに合う1本に出会えていないからでは? と我々SHOCHU NEXTは思います。
であるならば『あ、この焼酎好き!』と思わせる、それぞれの人に向けた1本を紹介したい! 普段飲むお酒や食事の嗜好などをもとに、最適の銘柄をオススメすれば、きっと焼酎を好きになってくれると思うんです! そんなわけで、SHOCHU NEXTによる「焼酎飲ませ隊」をやってみようと思います。
最初の舞台は焼酎大国・鹿児島。生まれも育ちも鹿児島という女性4人に集まっていただきました。鹿児島は焼酎の最大産地のひとつだし、百発百中で全員が焼酎ラバーなのかと思いきや、全然そうでもなくて……?!
お酒や食の嗜好から、おすすめの1本をセレクト!
皆さんこんばんは! お集まりいただきありがとうございます。今日は皆さんに、焼酎の懐の広さを知っていただき、お好きな銘柄を見つけていただこうと思っています。焼酎のセレクターと講師として、私たちのウェブマガジンにも寄稿いただいている焼酎マイスター・吉満香さんをお招きしました。
まずは最初に、皆さんお一人お一人、普段どんなお酒を飲まれているかと、お好きなごはんの傾向を教えてもらえますか?
わたしはビール党。クラフトビールが好きですね。ここ1年はワインもけっこう飲むようになりました。食事は、最近だんだん洋食より和食が好きになってきたかなあ。
普段からビールと焼酎ばかり飲んでいます。焼酎は家でもほぼ毎晩飲むけれど、好きな銘柄を聞かれても特に答えられないのが悩みといえば悩みです。仕事をしていて忙しいから、手軽にスーパーで買える銘柄中心になる。だからいちばん飲んでいるのは大口酒造〈黒伊佐錦〉ですね。ごはんは焼き鳥と中華が多いかな。
わたしは最近はいつもウイスキー・ハイボールです。少し前は日本酒をよく飲んでいましたけど、焼酎は全然飲まないんですよ……。全く何を飲んでいいのかわからないし、学生のときに焼酎でいい思い出が本当にないから怖くて(笑)。お酒のお供はおつまみ系が多いですね。カマンベールチーズも大好き!
普段ごはんと合わせるのは、辛口の白ワインや果実酒が多いです。SHOCHU NEXTの編集に携わるようになって焼酎はとても好きになり、お気に入りは豊永酒造〈完がこい〉薩摩酒造〈神の河〉 重家酒造〈ちんぐ サブロック〉ですね。お酒と一緒のごはんはイタリアンや、花椒や山椒が効いた中華料理が多いですね。
ワイン好きにはワイン酵母・オレンジ芋の〈yaezakura〉!
では、皆さんの好みをお聞きしたところで最初の一杯をご用意しましょうか。まずワイン好きという麻緒さん、麻莉奈さんは、宮崎・古澤醸造の〈yaezakuraワイン酵母仕込〉をソーダ割りでどうでしょう? こちらは芋焼酎ですが、名前の通りにワインづくりに使う酵母を使っています。度数は25度。約1:2で焼酎→ソーダの順に入れて、最後にふわっと焼酎をまわしかけます。風味が強すぎない焼酎は、こうすることで香りが上がってくるんですよ。
最後にまわしかける? 知らなかった! さっそくいいコツを聞きました。……わ! 確かに今まで知ってる焼酎とは全然違う。すごくフルーティーな香りですね。
〈yaezakuraワイン酵母仕込〉の原料のサツマイモは、ハマコマチというオレンジ色のお芋。このお芋はとてもフルーティーな香りがあるので、ワイン酵母とよく合う。仕上がりはパッションフルーツとかライチとか、トロピカルな香りがするんです。
わたし、実はザ・芋焼酎っていう銘柄があんまり得意ではなくて……。でもこれはおいしい! 聞いていなかったら、芋焼酎だとは分からないかもしれないです。ワインとか日本酒みたいな軽やかさですね。
クラシカルな芋焼酎好きのための〈小松帯刀〉
次に焼酎がお好きで日常的に飲んでいるという好美さんには、いつもの銘柄以外の一本として吹上酒造の〈小松帯刀(たてわき)〉をお薦めしますね。原料は好美さんがよく飲むという〈黒伊佐錦〉と同じで、コガネセンガンというサツマイモ。どちらも黒麹を使っています。蔵元が求めている味が、同じようなポイントなんだろうなと思うんですよね。どちらもとても完成度の高い、クラシカルな芋焼酎です。
うん、おいしいです! 確かに初めて飲むとは思えない、慣れ親しんだ味(笑)
しかもこれ、スーパーでも売っているし、なんと1,016円。
安い! なんせ毎晩のことなので(笑)、とてもありがたいです。
正直なところ、安すぎなんじゃない?って思うこともあるんですよ。世界のお酒のプロからも、焼酎はこんなに質が高い蒸留酒なのに、なぜこんなに安いんだ? という意見を聞いたりします。
ヨーグルトっぽい? 〈宝山 蒸撰綾紫〉の香り
〈yaezakura〉と〈小松帯刀〉はどちらも芋焼酎なんですよね……? ちょっと当惑するくらい香りも味も違うのですが、それはなぜですか?
最近は確かに“芋焼酎”といっても千差万別。サツマイモって白芋、紫芋、オレンジ色の芋……といろいろあるでしょう? 品種によって味の特徴が違うし、各蔵元も芋ごとの味の特徴を引き出すのがどんどん上手になっているんです。芋の違いの話が出てきたのでもう一本、西酒造の〈宝山 蒸撰綾紫〉を飲んでみてください。名前の通り、アヤムラサキという紫芋を使っていて、ちょっとヨーグルトみたいな甘酸っぱい香りがするんです。
本当だ、この〈宝山 蒸撰綾紫〉は華やか! 私、これとても好きです。
〈宝山 蒸撰綾紫〉は香りがいいのでワインのソムリエの方とかもお好きな印象があります。この西酒造の“蒸撰”は原料の芋の違いがわかるシリーズ。玉茜、紅東などほかのサツマイモの品種を使ったものもあって、どれも香り豊かですよ。
ウイスキーハイボールから移行しやすい〈田苑ゴールド〉
さて優希さん、お待たせしました! ウイスキーハイボールに慣れているということなので、麦焼酎の〈田苑 ゴールド〉をソーダ割りはどうですか。樽で3年熟成している銘柄ですが、鹿児島ならばスーパーでも手に入る手近さ。田苑酒造さんの樽熟成の銘柄は、焼酎の大きなコンペティションで最高金賞を取り続けているものもあるんですが、これはそっちの銘柄よりずっとリーズナブルな日常酒版です。ハイボールで気軽に飲むのにもちょうどいいですよ。
いただきます!……これ、焼酎なんですか? 全然私のイメージと違う。ぐわっとアルコールがくる感じがなくて、むしろちょっと甘い香りがするかな?
バニラっぽいでしょう? それが樽の香りですよ!
なるほど! 鹿児島って芋以外の焼酎もあるんですね(笑)。私、恥ずかしいけど米焼酎とか麦焼酎とかの違いもよく知らないです。
単純に原料の違いという以外にも、“本格焼酎”を名乗れるものにはつくり方の決まりがあったりします。ただ、あまり難しいことにとらわれず、いろいろ飲んでもらうのがいちばん。鹿児島でつくられているのは、もちろん芋焼酎がいちばん多いけれど、米や麦もありますし、あと奄美群島だけでつくられる黒糖の焼酎もありますよ!
麦焼酎は長崎の壱岐地方の“壱岐焼酎”のほか大分県や福岡県で多く、米は熊本県の球磨川流域の“球磨焼酎”が有名です。優希さんは、日本酒がお好きなら熊本の鳥飼酒造の〈鳥飼〉を試してみるのもいいかも! 今日は持ってきていないのですが、日本酒っぽい吟醸香のあるとてもさわやかな焼酎ですよ。
鹿児島女子は普段何を飲んでいるの?
皆さん、周囲の方はどういうお酒を飲んでますか?
私はつい最近まで学生だったのですが、学生の飲みは、ハイボールとか酎ハイが圧倒的でした。生ビールや焼酎って人はあまりいなかったかも。私も飲み始めのうちは酎ハイが飲みやすくて好きだったけど、甘すぎて料理に合わないなあと思うようになって。そこから日本酒を経てハイボールに変わったという感じです。
私の周りはあんまりお酒が強くないっていうコも多くて、一杯目からレモンサワーとか、梅酒のソーダ割りが多いですね。仕事で離島にいたときは、焼酎しか選択肢がなくて、それを飲み続けているうちに好きになりました。
私は真逆かも! 同窓会で、いわゆるザ・芋焼酎を飲みすぎて人生初の二日酔いになってしまって……(笑)。それ以来、仕事で焼酎に関わるようになるまで苦手意識の方が強かった。いまは周囲もワインの人が多いけど、この数年でウイスキーハイボールを飲んでいる人は増えた気がします。
私も全く一緒! 先輩に無理矢理飲まされて二日酔いしたのが焼酎でした。
私たち鹿児島のコが、焼酎が苦手という人もいるのは近くに焼酎がありすぎるからかも(笑)。飲み方も知らないうちにガブガブ飲んじゃって失敗して、敬遠する羽目になる。私の場合、大人になり、仕事の都合で奄美に住んでいた時期に黒糖焼酎をよく知る人たちに教えられるうちに好きになっていきました。
確かに、お酒をよく知っている人に教えてもらったお酒は外さないですね。酎ハイなら度数も低いし、飲みすぎて失敗しないから人気だったのかも(笑)
なるほど、鹿児島の人だからって圧倒的に焼酎を飲んでいるというわけではないのですねえ。
でも、仕事を通じて焼酎を飲み始めて知ったのは、焼酎は翌日の身体が楽、っていうこと。……気のせいかな(笑)?
蒸留酒なので確かにそうだと思いますよ。米のもろみを絞った日本酒、ブドウのもろみを絞っただけのワインなどに比べて、もろみを蒸留した焼酎は雑成分が圧倒的に少なく、水とアルコール成分がほとんど。だから体への負担が少ないという側面はあります。それから、プリン体ゼロ・糖質ゼロなのも焼酎のいい側面ですね。
太りづらい! それは魅力的なポイントですね(笑)
ところで、焼酎は水とアルコール成分と言いましたけれど、香り成分となると本当に少なくてたった0.2%なんです。わずか0.2%だけのことで、今ご紹介した焼酎の香りのバリエーションができているってものすごいと思いません?
本当ですか? たった0.2%のなかで香りの質を上げたり、変えたりという努力を重ねているとは……。すでに焼酎にどんどん興味が湧いてきています!
吉満さんの豊富な知識と確かなセレクトで、鹿児島の女性4人の焼酎への探究心に火が着きかけているかも……! 2杯目のラウンドには続編②へと続きます。
鹿児島っ子も焼酎飲んでない?! SHOCHU NEXTと吉満香の「焼酎飲ませ隊」~鹿児島・後編〜はこちら
SHOCHU NEXTと吉満香の「焼酎飲ませ隊」~鹿児島・前編〜で紹介した焼酎はこちら!
yaezakura ワイン酵母仕込み |
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【芋焼酎】 度数 25度 原材料 さつまいも(ハマコマチ)、米麹 蒸留 常圧 蔵元 古澤醸造 →WEB 所在地 宮崎県日南市 |
小松帯刀 鹿児島限定ラベル |
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【芋焼酎】 度数 25度 原材料 さつまいも(コガネセンガン)、米麹 蒸留 常圧 蔵元 吹上焼酎株式会社 →WEB 所在地 鹿児島県南さつま市 |
宝山 蒸撰綾紫 酒精乃雫 |
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【芋焼酎】 度数 25度 原材料 さつまいも(アヤムラサキ)、米麹 蒸留 常圧 蔵元 西酒造 →WEB 所在地 鹿児島県日置市 |