クラフトスピリッツを再発見するWEBマガジン

せっかくの鹿児島。焼酎とうまい飯にありつける「莫逆」へ|クラフト焼酎が飲める店

飲める店・買える店

せっかくの鹿児島。焼酎とうまい飯にありつける「莫逆」へ|クラフト焼酎が飲める店

Text : Sawako Akune(SHOCHU NEXT)
Photo : GINGRICH(SHOCHU NEXT)

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • Lineで送る

出張などで日本各地に行ったとき、なかなか迷うのが晩ごはんの店探し。その土地のうまいお酒とごはんがいいけれど、いわゆる“郷土料理店”だと客層が観光客ばかりでなんとなく物足りないし、Googleのレビューはどこまで頼れるかいま一歩不安。ぜったいに失敗したくないぶん、慎重になりますよね? 焼酎王国鹿児島でもそれは一緒。どこでもいろいろ焼酎飲めるでしょ、と適当な居酒屋に入ってみても、案外なほど似たような銘柄だけを扱っていることが多くて……。焼酎好きとしては「ちょっと当てが外れた」なんてことがあるんです。もちろん、さすが鹿児島! と唸りたくなるような店はいくつもあって、「莫逆(ばくげき)」はそのひとつ。中心市街地からは少しだけ外れた、でもとっても便利な場所にあるこちらで、おすすめ焼酎とごはんのペアリングをお願いしてまいりました! 

店長の白澤拓也さん(右)と焼酎のセレクトを担う原口雄大さん(左)。

地元の人々でにぎわう騎射場エリアへ!

「莫逆」があるのは、鹿児島いちの繁華街として知られる天文館から、路面電車でトコトコ15分ほどの“騎射場・荒田”エリア。県下随一の国立大・鹿児島大学からもすぐのこの辺りは、飲食店も多いエリアで、夜ごと学生や職場帰りの人々でにぎわいます。小さな車輌が一両か、多くて二両編成で、ポーションがかわいい路面電車が停まる「騎射場」駅を降りたらお店はすぐそこ。大通りに面して「莫逆」の看板が見えています。

 どっしりとしたドアを開けて店内へ。奥へ細長い店の右側は広々としたキッチンで、その向かいに、20人は座れそうなほどに立派なカウンターが長く伸びています。その先には座敷席。通りから見るよりずっと大勢入れる店内は、グループはもちろん一人でも来やすい佇まいなのがうれしい。

「長く通ってくださる地元のお客様も多いですが、出張でいらした1~2人連れや、遠方のお客様を連れてのグループが、実はかなりいらっしゃいます」と話すのは、店長の白澤拓也さん。

 21年前にオープンしたこのお店にスタッフとして入り、その後店長となった白澤さん。さらに2018年には前オーナーから経営を引き継いで、お店を守ります。毎朝魚市場まで出かけて仕入れる新鮮な魚介類に、さつまの六白黒豚・出水のさつま赤鶏……。鹿児島ならではのブランド素材を使ったメニューがリーズナブルな価格で揃ってうっとり。さらにうれしいのが焼酎の品揃えで、メニューの載っていないものも含め、カウンターには通好みの銘柄が並ぶのです。

 国分酒造の大人気銘柄〈フラミンゴ〉や知覧醸造の〈Tea酎〉はもちろんのこと、初見の銘柄もチラホラ見える焼酎のセレクトは原口雄大さん。2年半ほど前からお店に加わった原口さんが、大の焼酎好きなことから仕入れを任されたのだそう。県内各地の酒販店や蔵元に足繁く通い、厳選した銘柄を揃えているといいます。

「焼酎の土地とはいうものの、飲食店はどうしても特定の銘柄に偏りがち。だから鹿児島の人でも、あまり焼酎のことがわからないという人は少なくないんです。芋焼酎だけでも2000以上の銘柄がありますし、せっかく飲んでもらうなら、本当においしくて芋焼酎の世界を広げてくれるような銘柄をと思っています」

 それでは白澤さん&原口さん、「莫逆」に行ったらぜひ味わうべき、焼酎と料理のペアリングを教えてください!

本日のお任せ刺盛+〈夢鏡〉のソーダ割

最初にドーンと出てきたのは、白澤さんが仕入れてくるその日ごとの新鮮な魚介の刺し身盛り合わせ!合わせるのは鹿児島県の北西部・薩摩郡さつま町にある植園酒造による〈夢鏡〉。レギュラー銘柄〈園乃露〉が広く親しまれますが、こちらの〈夢鏡〉は、蔵元が10年がかりで完成させたという逸品。白色の外皮と白色の果肉のサツマイモ、ジョイホワイトを黒麹で仕込み、常圧蒸留で仕上げた銘柄で、しっかりしたボディながら、ジョイホワイトらしいフルーティーな香りが漂います。

「炭酸で割って弾ける香りがいいんです」と白澤さん。鯛やカンパチなど地元錦江湾で揚がる魚のうまみを、〈夢鏡〉ハイボールが爽やかに迎えておいしい! 芋の余韻は十分に残しつつ、後味はすっきり。スターターとして申し分のないペアリングです。

「始めのいっぱいはとりあえずビール!もいいですけれど、フルーティーな焼酎ソーダ割りもおすすめ。食欲を刺激してくれます」(原口さん)

自家製つくね串焼き+〈CONTA〉のお湯割り

次に登場したのは香ばしい香りの漂ってくる大きな自家製つくね。とろりとした甘辛ダレがたっぷりかかり、傍らにはぷりっぷりの卵黄。見ているだけでヨダレのでそうなメニューです。合わせるのはいちき串木野市の市来酒造の〈CONTA〉。黄色いラベルがインパクトのあるこちらの銘柄、その色と名前が示すように、なんとトウモロコシ麹を使った芋焼酎なのだとか。

「バーボンをイメージして作ったという変わり種……と思いきや、めちゃくちゃおいしいんですよ!」と原口さん。蒸留後、バーボンと同様にオーク樽で長期熟成するこちらの季節限定商品は確かに芳醇な香り。

鶏と黒豚を使った肉の味わいが強いつくねに、卵黄とタレを絡めたパンチの強い一品に、ばちっとハマります。

「樽の香りも素晴らしいのでロックもお薦めですが、せっかく鹿児島なのでお湯割りで!」と白澤さん。ふわーと漂う甘やかな芋の香り。炙ったつくねのスモーキーさを、優しくも力強い焼酎が流し込んでいく……。鹿児島の美味たちが口の中で競演です。

魚のあら炊き+〈鸞〉のロック 

ペアリングの3品目は大迫力のあら炊き! 新鮮なお魚を仕入れる店だからこそのメニュー。お魚好きにはたまりませんね。合わせる1本は、志布志市・太久保酒造の〈鸞(らん)〉。樽熟成にも挑み、個性的な銘柄の多い太久保酒造によるこちらは、減農薬栽培のコガネセンガンを甕で仕込んだもの。「ひとことでいうときれいな味わい」と原口さん。その言葉の通り、確かに無駄なひっかかりのない、キレのいい甘さ。のど越しがいいのでロックでもするすると流れていきます。ふくよかさとコクはあるのに、魚の脂を流していくような爽快さ。うーんこれまた旨い……! こちらもお湯割りでも楽しめそうな1本です。

しめはごはんで! ”莫逆”の友たちと楽しみたいお店。

ちなみに欄外ながら、たっぷりと食べて飲んだら、ぜひおにぎりなどのごはんものも試してほしい! というのも「莫逆」では、県北部・伊佐地方の有機米を釜炊きしてるんです。ほかほかふっくらのおにぎりやお茶漬け、あるいは地卵をつけた卵ご飯にとどめの焼酎……「合わせた銘柄をご提案しますよ!」と原口さんが笑います。

“莫逆”とは、気を許したとても親密な間柄のこと。夜が更ければ光のなかで一人客もグループ客もワイワイと楽しそうなこの店こそが、莫逆の仲を紡いでくれる場所なのかもしれません。

莫逆
住所 鹿児島県鹿児島市下荒田3-38-18  内村ビル1F
営業時間 18:00~23:00(L.O.22:30)
定休日 日曜日
TEL 099-255-3692

Share

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • Lineで送る