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荻窪の呑兵衛たちを唸らせる、期待の新星と称される酒場が選んだ焼酎とは?

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荻窪の呑兵衛たちを唸らせる、期待の新星と称される酒場が選んだ焼酎とは?

Text & Photo : 酔街草

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SHOCHU NEXT編集部が所在する東京都杉並区荻窪。JR中央線、総武線、地下鉄丸ノ内線、東西線が乗り合う便利な街。その荻窪駅南口より線路沿いを阿佐ヶ谷方向に2分ほど歩くと、軒先に小振りな杉玉が見えてくる。紛うことなき和酒を供する店構えに、日本酒強しの確信はあるが、はてさて、どんな焼酎が楽しめるのだろうか。安堵と一抹の緊張とともに暖簾を潜ってみました。

〈ててて〉の由来は?

店内の手前側には横一文字のカウンターに8席、奥には4人掛けのテーブルが2つ設えられ、濃茶調の木の色合いを抑え気味の照明を当てつつ、和の雰囲気を醸し出している。オープンしたのは2023年5月27日とまだ1年ほど前だ。

ちなみに、以前この場所は『虎林(こりん)』という34年間続いた老舗の中華料理店で、『酒と肴 ててて』に改装するにあたり、前の店の建材をそのまま残した箇所もあるのだそう。

それは、店主の中田浩司さんと妻の女将・成美さんが夫婦二人三脚で営む店へのこだわりの、ほんの序章に過ぎない。

まずは気になる店名だが、「造り”手”、飲み”手”、伝え”手”」の3つの”手”が由来なのだそう。かつて広島『竹鶴酒造』の名杜氏として名を馳せ、3年ほど前に茨城『月の井酒造店』に移った石川達也さんと知人を介して縁が生まれ、名付け親になってもらったのだとか。

最初はどこか戯けたように感じた「ててて」の3文字には、酒をこよなく愛する三位一体の魂が宿っているのだ。

肴の品書きには酒飲みの正鵠を射た品々が並ぶ。その数は決して多くはないものの、独り厨房で賄うには程良い品数だと言えよう。中野や荻窪の日本酒酒場で磨いた店主の腕前も確かで、どの料理も丁寧に供されて旨い。

秋田市出身の女将の実家から送られて来る「あきたこまち」も捨てがたい。〆の親子丼や塩むすび、店主の打つ蕎麦も魅力的なのだが、例によって酔街草はなかなか〆まで到達できない酒癖があるので、横目で眺めつつ捲土重来を期する事にする。

独りカウンターで呑むなら「おひとり様限定 酒肴盛り」(1,200円)がお勧めだ。これぞ酒肴たる日替わりの小鉢が5つ、秋田・大館の「曲げわっぱ」の盆に載せられて登場する。

もちろん、「造り」(一人前3種1,050円、5種1,750円)も欠かせない。この日の3種盛りは、鰹、鯵、フエフキ鯛。魚介類は豊洲のみならず、秋田県の西目漁港からも取り寄せているそうだ。

吾が輩の好物である「鯵フライ」(時価)に遭遇すると思わず小躍したくなる。店によってタルタルソースに違いがあって、酸味役の素材がなんとも興味深い。『ててて』では、普段は「ぬか漬け」を刻んで入れるそうだが、この日は「らっきょう」を入れてみたとの事。これまた酒との相性が抜群だ!

日本酒(グラス550円〜、一合1,000円〜)は、常時50種ほど用意されている。メニューには載っていない銘柄もあるので、女将に遠慮なく尋ねてみよう。

燗酒(一合900円〜)もツボを押さえたラインナップ。女将の燗のつけ加減も絶妙で、肴との相性を引き立たせる。ぜひ、燗酒の妙も楽しんでいただきたい。

酒器にもこだわりが見える。徳利は、京都の鴨川のほとりにある小さな酒器工房『今宵堂』の「白瓷燗徳利」(正一合)を使用。実は、この徳利の本数を揃えるまで開店を遅らせたという噂も聞いている。

ビールは「赤星 中瓶」(700円)と「ハートランド 小瓶」(600円)。生ビールは敢えて置かないという潔さもいい。

さて、お目当ての本格焼酎はというと、「麦」2種類と「芋」2種類の4銘柄が常備されている(各650円)。

「日本酒の苦手な方もいらっしゃいますし、料理に合わせて本格焼酎も楽しみたいという方へと、麦と芋を2種類ずつご用意しています。それぞれ香りの立ったものと飲み口の軽快なものに分けてみました」と、女将の成美さん。

なるほど、どれも希少性の高い蔵元の銘柄であり、あくまで食中向けにこだわりを持ったセレクトは流石と言うしかない。

写真・右から
麦焼酎『泰明(たいめい)』(大分県・藤居醸造合資会社)
風味を引き出す常圧蒸留とクリアでクセのない減圧蒸留のブレンドタイプ。麦を炒ったような香ばしい香りとスッキリ感がほどよく調和し、幅広い料理にマッチ。

麦焼酎『青一髪(せいいっぱつ)』(長崎県・久保酒造場)
微減圧蒸留で抽出し、3年間じっくりと寝かせることで、まろやかな味わいの焼酎に。名前の由来は「海と空は髪の毛一筋でつながっている」という水平線の様を意味だそう。

芋焼酎『田倉(たくら)』(鹿児島県・高良酒造)
芋の力強い味わいを楽しむことができる逸品。さつま芋らしい豊かな香りと、優しくも力強いコクと味わい。余韻に仄かな香ばしさが広がり、焼酎好きの満足度が得られるはず。

芋焼酎『ひとり歩き』(宮崎県・古澤醸造)
女性杜氏 が造る優しい芋焼酎。「ジョイホワイト」という比較的新しい品種の芋を使用し、柑橘系の爽やかな香りでまろやか味わい。古澤醸造の造りの伝統である”酔ってうっとり、醒めてすっきり”を体現する、食中向きの飲み飽きしない焼酎だ。

これらのラインナップを見るだけで、『ててて』が日本酒を主役としながらも、酒場としての矜持を保つ姿勢に感服せざるを得ないはず。

水割り、ロック、お湯割り、ソーダ割りと呑み方は自由自在。吾が輩の場合は、お銚子を2本ほどやってから焼酎ロックへと移行するのが最近のルーティンだ。

”栴檀は双葉より芳し”とは、まさにこの店のためにあるような諺ではあるまいか。開店して1年ほどながら、このまま10年、20年と続いて行ったら間違いなく老舗酒場の仲間入りとなる予感がする。

時には気さくな若夫婦との会話を楽しみながら、美味い日本酒や焼酎に舌鼓を打つ。 酒場ビギナーや女性独りでも安心して通える店として、脳裏に留めておいてほしい。

酒と肴 ててて
住所 東京都杉並区荻窪4-32-8 パインマンション荻窪 1F
電話番号 
03-6279-9016
アクセス JR中央線・地下鉄丸ノ内線荻窪駅南口より徒歩2分 
営業時間 [火~金]17:00~23:00 [土・日・祝]15:00~22:00
定休日 月曜日(不定休有り)
X https://twitter.com/ogikubo_tetete
Instagram https://www.instagram.com/saketosakana_tetete

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