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本格焼酎・日本酒の文化を後世に繋ぎたい!「米」の可能性を追究するユニークなコラボ試飲会をレポート
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2024年9月11日(水)、東京・大手町の「農表・農村ギャラリー ミノーレ」にて、『さけくらべ 兵庫・熊本 in 東京』と銘打った試飲会イベントが開催された。

山田錦を中心とした良質の酒米を擁する兵庫県の日本酒と、米焼酎の代名詞的存在である熊本県の球磨焼酎とのコラボレーションという斬新な組み合わせ。

同じ「米」繋がりを謳っただけではなく、スパイスとのペアリングや新しい飲み方を提案し、販路拡大について情報交換し合う場でもあった。

さっそくレポートしていこう。

酒卸、酒販店、飲食店関係者などプロを対象とした試飲会

酒卸、酒販店、飲食店関係者などプロを対象とした試飲会

”日本酒の海外需要がかつてない盛り上がりを見せる一方、日本国内では需要低下に歯止めがかかりません。日本酒や本格焼酎がもっと愛されるためには、伝統を重んじながらも、酒蔵自らが変化し、形にとらわれない自由な楽しみ方を提案していくべきだと考えています”

この信念を基調として「新しい飲み手の創出」を旗印に掲げつつ、全国各地の蔵元と共に試飲会形式での提案の場を展開しているイベントが、「さけくらべ」(企画・運営:合同会社五穀豊穣)だ。

「コロナ禍での酒販の落ち込みもモチベーションとなりました。何とかして日本酒や本格焼酎の需要を再び盛り立てたいと〜」と語ったのは、会場でお会いした「さけくらべ」実行委員長の河瀬勇輔さん。

「さけくらべ」は、2020年8月の神戸開催を皮切りに、米子、京都、東京、札幌、大阪、長崎などで開催されており、回を重ねるごとに酒卸、酒販店、飲食店関係者からの注目度が高まっている。

「さけくらべ」公式サイトhttps://www.sakekurabe.jp/

酒卸、酒販店、飲食店関係者などプロを対象とした試飲会

会場に入ってまず目を引いたのが、参加蔵の代表銘柄が並べられたテーブル(タイトル画像)。本物の稲穂をあしらったディスプレイが何とも心憎い。

入場して右側に熊本県の球磨焼酎9蔵、左側に兵庫県の日本酒8蔵のブースがそれぞれ等間隔で並び、中央には商談用のテーブル席を設置。

ほどよい数と配置の和やかな空間で、窓から外光が差し込む開放感が居心地良く、訪れた人々が熱心にブースの担当者に語りかけていた。

個性派揃いの蔵元が集結した球磨焼酎のブース

「寿福酒造場」

個性派揃いの蔵元が集結した球磨焼酎のブース
「寿福酒造場」

球磨焼酎蔵元の最初のブースは、1890年創業の「寿福酒造場」だ。
5代目杜氏の吉松良太さんがにこやかに応対している姿に、なるほど、”1番バッター大谷翔平は、やはりこの人だな”と納得する(笑)。
テーブル上には、看板銘柄である米焼酎の〈武者返し〉と麦焼酎の〈寿福絹子〉が1本ずつというシンプルさも小さな蔵らしく潔い。
それぞれを1杯ずつ試飲しながら、「お袋さん(絹子さん)はお元気ですか?」と聞いてみたところ、「元気、元気〜!気力はあるけど体力はもうないってのが口癖だけど(笑)」との答えが返ってきた。

「寿福酒造場」公式サイト https://shochu-next.com/article/2637

「高田酒造場」

個性派揃いの蔵元が集結した球磨焼酎のブース
「高田酒造場」

次なるブースでは、若い女性2人が笑顔でお出迎え。

「女性にも楽しんでいただけるよう、リキュール類にも力を入れています」と語ったのは、「高田酒造場」12代蔵元の娘で蔵人でもある高田恭奈さん(左側)。

ちなみに右側のポコちゃんは、蔵の私設応援団ということで手伝いに参上したとのこと。*ポコちゃんが登場するSHOCHU NEXTの過去記事はこちら*

「山田錦」をなでしこ酵母で醸した〈あさぎりの花〉から試飲しつつ、華やいだ雰囲気に絆されて、ついつい酔街草の地元の居酒屋話で盛り上がってしまった。

「高田酒造場」公式サイト https://www.takata-shuzohjyo.co.jp/

「福田酒造」

個性派揃いの蔵元が集結した球磨焼酎のブース
「福田酒造」
個性派揃いの蔵元が集結した球磨焼酎のブース
「福田酒造」

創業が昭和10年と、球磨焼酎27蔵の中でも最も若い蔵元なのが「福田酒造」。若いと言っても80年近く経っている歴史ある蔵であることに間違いない。

ブースの福田真希さんが手にしているのは、普段は25度のロングセラー〈山河〉の原酒を仕込み水で12度まで前割りした商品。瓶ごと冷やしてストレートで呑むのがお勧めだそう。

「福田酒造」公式サイト https://fukudashuzo.com/

「高橋酒造」

個性派揃いの蔵元が集結した球磨焼酎のブース
「高橋酒造」

都内の飲食店でもよく目にするため、ポピュラーな米焼酎のひとつが「高橋酒造」の〈白岳しろ〉かも知れない。正直、他にもこれだけの種類があるのには驚いた。

とくに、米の蒸留酒にしか出せない吟醸香と旨味を両立させたカクテルベース用だという〈The SG Shochu KOME〉(写真右端)は、出逢えて良かったと思える逸品。

「高橋酒造」公式サイト https://www.takata-shuzohjyo.co.jp

「深野酒造」

個性派揃いの蔵元が集結した球磨焼酎のブース
「深野酒造」

火にかけ燗をして「チョク」と呼ばれる小さな杯で飲む、球磨焼酎ならではの酒器「ガラ」をディスプレイしていたのが「深野酒造」のブース。

昔ながらのラベルを復刻した〈誉の露〉を湯煎して試飲させてもらう。確かに燗にすると、米の旨みがより深く感じられるような味わいだった。

今年の秋冬シーズンは、米焼酎を燗して味わうのも悪くない。

「深野酒造」公式サイト https://www.shop-fukano.jp/

「大和一酒造元」

個性派揃いの蔵元が集結した球磨焼酎のブース
「大和一酒造元」
個性派揃いの蔵元が集結した球磨焼酎のブース
「大和一酒造元」

かつて県立高校で社会科の教師をしていたという代表社員の下田文仁さんが、自らブースに立っていたのが「大和一酒造元」。

すべての焼酎を手造りで行っており、先代の父親が取り組んだ焼酎蔵から湧く温泉を使った焼酎造りを継承しているとのこと。

興味深かったのが〈牛乳焼酎 牧場の夢〉シリーズだ。

「実は熊本県は酪農も盛んな地域なんです。その特色を生かして牛乳と米を発酵させて造る日本唯一の牛乳焼酎です。商品化してかれこれ20年近くなりますが、最初は据えた匂いが出てしまったりと、試行錯誤を繰り返した苦心作です」

〈牛乳焼酎 牧場の夢〉25度を試飲させてもらったが、ほんのり甘くフルーティーな口当たりが女性受けしそうだ。

「大和一酒造元」公式サイト https://www.yamato1.com/

「林酒造場」

個性派揃いの蔵元が集結した球磨焼酎のブース
「林酒造場」

江戸時代(1602年)創業の「林酒造場」。球磨焼酎の蔵元の中でも最古参となる家族経営の小さな蔵元である。

創業当時に掘られた井戸から湧き出る水と伝統の技術を活かした米焼酎には、絶大な信頼が寄せられているようだ。

ブースには3年熟成の定番商品〈極楽〉をはじめ、新たな試みと言うボトラーズブレンドの焼酎がずらりと並び、杜氏・林泰広さんの熱のこもった説明が続いていた。

「林酒造場」公式サイト https://gokuraku-shochu.jp/index.html

「豊永酒造」

個性派揃いの蔵元が集結した球磨焼酎のブース
「豊永酒造」

今年は〈常圧 豊永蔵〉が「熊本国税局鑑評会」で優等賞、「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション」で金賞、フランスでの和酒のコンペティション「Kura Master 2024」では最高賞のプラチナ賞に輝き、勢いに乗る蔵元がSHOCHU NEXTでもおなじみの「豊永酒造」。

今回の「さけくらべ」のサブ・テーマにもなっていたのが”スパイス”で、今やスパイス文化は日本人の食生活に深く浸透しているのは周知の通り。

従来の伝統的な米焼酎を継承しつつ、他に先駆けていち早く本格焼酎にスパイスを取り入れた商品を開発したのも、この「豊永酒造」である。

「大阪にあるスパイスカレー店のオーナーから、スパイスカレーに合う焼酎を造ってみては?との提案をいただいことがきっかけでした。いろいろな種類のスパイスを試してみたのですが、清涼感があってカレーと一番マッチングしたのがカルダモン。〈TAKE 7〉という名称は、7回試作を繰り返したからです」と、法被姿の豊永遼さんが教えてくれた。

「インド原産のスパイスである”ロングペッパー”を合わせたリキュールもお勧めです。甘さのある爽快な香りで、よりスパイスらしい刺激が楽しめますよ」

以前、若者の多く集まるスポーツ・バーで試飲会を行ったところ、「炭酸で割るとクラフトコーラみたいな味わいになる」と、好評だったそうだ。

「豊永酒造」公式サイト https://www.toyonagakura.com/

*SHOCHU NEXTの関連記事はこちら。

「六調子酒造」

個性派揃いの蔵元が集結した球磨焼酎のブース
「六調子酒造」

殿(しんがり)を務めるのは、常圧蒸留と貯蔵熟成でお馴染み、「六調子酒造」のブース。素敵なマダムが終始にこやかに応対されていた。

琺瑯タンクで11年間寝かせたという看板商品の〈特吟 六調子〉を試飲させていただく。しっかりとした米の旨みが感じられて、これぞ熟成焼酎の真髄!

「六調子酒造」公式サイト https://rokuchoshisyuzou.sakura.ne.jp/

*SHOCHU NEXTの関連記事はこちら。

スパイスを使ったフードコーナーに、あの達人の姿が!

スパイスを使ったフードコーナーに、あの達人の姿が!
スパイスを使ったフードコーナーに、あの達人の姿が!

米焼酎と日本酒のブースとの分岐になる一画には、スパイスを使ったフィンガーフードが7種類ほど並べられていた。

この料理を監修したのが、横浜・伊勢佐木にある”スパイス料理+燗酒”をコンセプトにした『Spice Drunker やぶや』のオーナー店主・薮晋伍さんである。

ご存じの方も多いと思うが、薮さんはテレビ局のADを経てプロボクサーになり、引退後に南インド料理をベースにしたスパイス料理に燗酒を合わせるという、唯一無二の酒場を営んでいる異色の存在。

まさかこのイベントで御本人にお会いできるとは思ってもいなかった。

スパイスを使ったフードコーナーに、あの達人の姿が!

「今日は初めて出会う銘柄が多いので、オーソドックスなスパイス系のフードをいくつか用意してみました。基本的にボタニカル同士なので違和感の無いペアリングになると思いますよ」と、薮さん。

確かにどれもが米焼酎にも日本酒にも不思議とマッチングする味わい。酔街草的には、酸味が効いてスパイシーな「茄子のアチャール」が気に入った。

多くの燗酒ファンからも一目を置かれている薮さんに燗酒の極意を伺ってみると、「燗をつける温度よリも化学変化が大事ですね。加熱する”ちろり”の材質によって火の入り方が変わる。例えるなら錫製なら焼きつけるように火を入れるのでフライパン、銅製はじっくり煮込めるので鍋のようなもの。他にも、錫と銀を混ぜ合わせたものやチタン素材、ガラスのビーカーなどを酒質や用途で使い分けています」と。

なるほど燗酒も調理するものなのだと腑に落ちた。

スパイスを使ったフードコーナーに、あの達人の姿が!

「ちょっとコレを試してみませんか?」と薮さんが盃を手渡してくれたのが、メスカルと純米酒をブレンドした燗酒。

”これは異種格闘技、味同士が喧嘩するのでは?”との心配を他所に、まろやかな甘味が口の中に広がる・・・。

振り上げられた拳が握手に変わったとでも言おうか、日本酒の新境地を垣間見たような気分だった。

スパイスを使ったフードコーナーに、あの達人の姿が!

「豊永酒造」の遼さんも、ブースの空いた隙を見計らっては〈ロングペッパー〉とのマッチングを求めて薮さんの元を往復していた。

さすが研究熱心な方だと感心した次第。

『Spice Drunker やぶや』公式Instagram https://www.instagram.com/spicedrunker/

兵庫の隠れた実力派の酒蔵が集結!

「ヤヱガキ酒造」 

兵庫の隠れた実力派の酒蔵が集結!
「ヤヱガキ酒造」 
兵庫の隠れた実力派の酒蔵が集結!
「ヤヱガキ酒造」 

創業350年、兵庫県姫路市にある「ヤヱガキ酒造」のブースには小さな黒板が。

「ぜひ、試してみて下さい」と勧められたのが”日本酒+トニックウォーター”。比率は「1:1/4」にして、大吟醸よりも純米酒のほうが向いているとの事。

辛口の喉ごしが香りを損なわずにマイルドな甘さが増幅され、リキュール感覚に。確かにシンプルな日本酒カクテルとして楽しめそうだ。

ちなみに隣りの米ベースのウォッカ〈Swinging Doors〉(40度)も興味深かった1本。

「ヤヱガキ酒造」公式サイト https://www.yaegaki.co.jp/sake/

「狩場一酒造」 

兵庫の隠れた実力派の酒蔵が集結!
「狩場一酒造」
兵庫の隠れた実力派の酒蔵が集結!
「狩場一酒造」

兵庫・丹波篠山市から出展していた「狩場一酒造」。

8月の『全国燗酒コンテスト2024』における”お値打ち熱燗部門”で〈秀月 上撰酒〉が最高金賞、”プレミアムぬる燗部門”で〈秀月 特別純米酒〉が金賞を受賞されたばかりと満面の笑み。おめでとうございました!

15年貯蔵の長期熟成酒〈秀月 熟成太古酒 時の職人〉は呑みやすく、スパイス料理との相性も良さそうだった。

「狩場一酒造」公式サイト https://syuugetu.jp/

「本田商店」 

兵庫の隠れた実力派の酒蔵が集結!
「本田商店」 

「兵庫県特A地区産山田錦」を40年以上使い続けているという、兵庫・姫路を代表する酒蔵が「本田商店」。

代表銘柄の〈龍力〉は、世界的なコンテストでもグランプリや金賞を受賞する常連だ。活気のあるブース前には、絶え間なく入場者が集まっていた。

”宴JOY日本酒”をコンセプトとした〈ドラゴン〉シリーズに力を入れているとの事で、日本酒ビギナーを対象に食事とのペアリングを重視した酒造りは、本イベントの意図と合致している。

「本田商店」公式サイト https://www.taturiki.com/

「壺坂酒造」 

兵庫の隠れた実力派の酒蔵が集結!
「壺坂酒造」 
兵庫の隠れた実力派の酒蔵が集結!
「壺坂酒造」 

姫路市の夢前町に蔵を構える「壺坂酒造」のブースでは、24代当主の壺坂良昭さんから気さくに声をかけていただいた。

「うちの蔵は山間にあるんでジビエにも良く合う酒ですよ」との一言に、しばしジビエ談義に花が咲く。

実は酔街草もジビエ料理には目がなく、猪や鹿はもちろん、熊でもハクビシンでもウェルカムなのだ。もちろん、酒はできるだけ”ごっつい”奴を合わせたい。

勧められるままに〈純米吟醸 雪彦山〉を生酒と飲み比べ。確かに荒々しさのある辛口の味は、ジビエの脂によく合いそうだ。

「壺坂酒造」公式サイト https://seppiko.shop-pro.jp/

米焼酎の災害からの復興と、これからの未来へ。

兵庫の日本酒は、力強いコクとキレがありつつも、呑みやすい辛口が多いのが特徴。日本酒生産量は全国1位であり、〈剣菱〉、〈菊正宗〉、〈白鶴〉、〈白鷹〉、〈福寿〉など、お馴染みの有名銘柄を多く産出している酒処だ。

今回は日本酒ブース全てをじっくりと廻る時間がなく残念だったが、まだまだ知られざる良質の銘柄や飲み方があることを発見できて嬉しかった。

もちろん、米焼酎も然り。

ただ、忘れてはならないのは、米焼酎の蔵元が集中する熊本県人吉地区が、コロナ禍と共に見舞われた令和2年(2020年)の豪雨災害。

どこの蔵元も少なからず被害に遭い、そこからの復興を果たしての今日がある。ブースでは敢えてこの話題には触れなかったが、「大和一酒造元」の下田さんは、

「醸造していた焼酎の8割が流されて、4人のスタッフも皆、被災。”もう事業は継続できないかもしれない”と弱気な気持ちになっていたところ、球磨焼酎の蔵元仲間や熊本の酒販店の人々が片付けに駆けつけてくれたんです」とホームページに記している。

「お陰様で、もう一度、焼酎を造りたいという前向きな気持ちになることができました。災害をきっかけに、さらに本格焼酎の本質を極めるべく精進しております」と後日、メールをいただいた。

この下田さんの言葉が、今回、出展していた全ての蔵元の内なる声を代弁しているはずだ。

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