定番カクテルからスパイス割り、はたまた醤油や味噌と、数多くの焼酎アレンジレシピを「SHOCHU NEXT」で生み出してきた焼酎マイスター、吉満 SCENT 香さん。その個性的な発想は毎回編集部でも話題になっていましたが、ついに実店舗に登場です! 場所は鹿児島中央駅のそばに店を構える焼酎バー「IMO ROCK」。若者たちが集うブランニューな焼酎バーで、アイスキャンデーを使ったレシピの提供が決定しました。一体どんな経緯で採用されたのか、そしてお客さんの反応はいかに。IMO ROCKの代表、西勇二さんと吉満さんお二人に話を聞きました!
採用されたアイスキャンデーアレンジはこちら!
焼酎×アイスキャンデーアレンジが鹿児島の焼酎バーIMO ROCKに登場!
--2023年8月からアイスキャンデーを使った2種類の焼酎アレンジがIMO ROCKで提供開始されました。どのような経緯だったのでしょう?
吉満 香 きっかけは民間企業による「SNSの力で地域課題を解決する」プロジェクトの一環。県内在住のインフルエンサーの方々に、鹿児島県の名産品を新しい目線で紹介してもらう企画として、焼酎を扱うことになったのがはじまりです。オブザーバーとして参加し、若い人たちにも楽しく焼酎を飲んでもらえる提案をしていくなかで、アイスキャンデーのアレンジに白羽の矢が立ちました。そこで、実際に提供してもらえる飲食店としてIMO ROCKさんに声をかけたところ、代表の西勇二さんに快諾していただき、アレンジの販売が決まりました。
西 勇二 ちょうどIMO ROCKのイメージとも合っているなと。店がオープンしたのは2022年5月、コロナ禍で外で飲む機会が減り、さらに焼酎業界はさつまいも基腐病の拡大によって芋焼酎の生産に大打撃があった頃でした。鹿児島の繁華街を見てもどこか活気が薄れ、若い世代が交流できる場所がない。焼酎を使って、さまざまな人が楽しく出会える場所をつくりたいという気持ちでできたのがIMO ROCKでした。今回のお話をいただいたのがちょうど真夏だったこともあって、即決でしたね。
--アイスアレンジは見た目が楽しげなこともあって、わいわい飲んでもらうにはぴったりです。2種類のアレンジについて、改めて教えてください。
吉満 採用されたのは、黒糖焼酎ハイボールとガリガリ君ソーダ味を合わせた「黒糖ブルーハワイボール」と、芋焼酎ハイボールにパインアイスを入れた「綾紫トロピカルサワー」の2つ。「黒糖ブルーハワイボール」は、ソーダ味の爽快さと、黒糖のとろっとした甘みの組み合わせが絶妙。紫芋を原料にした芋焼酎がベースの「綾紫トロピカルサワー」は、ほのかな焼酎の酸味とパインアイスの甘みで、華やかなフレーバーが際立つアレンジです。
西 「黒糖ブルーハワイボール」に使用しているのは、富田酒造場の〈まーらん舟〉。とろみがありつつ香りは爽やかで、アイスを入れてもさっぱりとした後味が楽しめます。「綾紫トロピカルサワー」には、西酒造の〈宝山 蒸撰綾紫酒 精乃雫〉を使っています。ヨーグルトを思わせる酸味がパインによく合うんです。
--今回のアレンジの提供は、若い世代に向けた飲み方かと思います。焼酎×アイスキャンデーとある意味邪道な組み合わせですが、西さんはどのような印象を受けましたか?
西 IMO ROCKでは基本的にソーダ割りで焼酎を提供していることもあって、邪道とは思わなかったですね。ソーダ割りがスタンダードな飲食店なんて、ひと昔前の鹿児島で考えれば邪道中の邪道。それが今では「ソーダ割りなんてありえない!」と言っていた人たちも積極的にソーダ割りを飲むようになりました。ソーダ割りが市民権を得たのだから、アイスが入っていたって構わない。最終的に一番大事なのは、楽しく美味しく飲めること。そういう意味では若い世代のほうが偏見なしに焼酎を楽しんでいますね。
吉満 これまで調味料やスパイスなどさまざまなアレンジを考えてきましたが、焼酎って本当に懐が深い。合わないものはないんじゃないかと思うくらい、色々な飲み方が楽しめるお酒です。アイスキャンデーとの組み合わせは、そのなかでも比較的万人受けしやすいほうかな。どちらも焼酎を飲み慣れていない人でも気軽に飲める味わいになっています。
本当に「若者は焼酎を飲まない」のか? 鹿児島の若者酒場事情
--実際にインフルエンサーの方々やお客さんの反応はいかがでしたか?
吉満 じつは、アイスキャンデーのアレンジに決まるまでインフルエンサーの皆さんからこんてんぱんだったんです(笑)。まず「焼酎飲まれますか?」と聞くと、「全然飲まないです」と即答されてしまって。理由はストレートに「古くてダサい」。デザインもかっこよくなければ、液体は透明で映えもしない。特にSNSでリール動画を発信している彼らにとっては、見栄えの良さは特に重要でした。ラベルのデザインが良いものや、果実味のある銘柄を紹介しても、ほかのお酒の方が圧倒的に手に取りやすいと消極的。正直全く魅力を感じない、と一刀両断でした。
どうすれば若い世代にも魅力的に映るのだろう……と行き詰まっていた時、ふと思い出したのが「SHOCHU NEXT」の企画で考えたアイスキャンデーのアレンジ。インフルエンサーの方々も「これなら紹介できそう!」と好印象で、無事採用されました。実際に試してもらったところ、焼酎が苦手な人でも飲みやすいと好評をいただいて、内心ほっとしています(笑)。ショックを受けたというよりも、焼酎の作り手や伝え手が考えている「若い世代に向けたもの」よりはるかに高いレベルが求められているのだなと刺激を受けましたね。
--それは、焼酎大国の鹿児島でも若者の焼酎離れが進んでいる証拠なのでしょうか。
西 県内で居酒屋やバーを経営している側からすると、「若者が焼酎を飲んでいない」という感覚はあまりないんです。ハイボールやレモンサワーに引けを取らず飲まれていると感じています。確かに、かつては焼酎ブームのように爆発的人気を誇った時代もありました。それに比べると、みんなが揃って焼酎を飲んでいることは少なくなったかもしれません。でも、昔は昔、今は今。今後ますます酒自体飲む人の母数が減っていくなか、過去の栄光を取り戻そうと躍起になるよりも、地道に焼酎の魅力を伝えていったほうが長い目で見て絶対に良い。そのために若い世代にどんなアピールをしなければならないのか、それを考えるのは僕たち伝え手の役割だと思います。
吉満 今回のプロジェクトで痛感したのは、作り手のこだわりや思いは若い世代に響きにくいということ。丁寧に仕込んだ焼酎と説明したところで、普段焼酎を飲み慣れていない方々には強いメッセージにはなりにくいし、むしろ焼酎の敷居を高くしてしまうんですよね。
西 伝え手としては知ってほしい気持ちはもちろんあるけれど、導入としては難しいかもしれない。はじめはラベルがかわいいとか、フルーツサワーが美味しかったとかそれくらいライトな気持ちだけで十分だと思います。昔のように先輩に飲まされて酒の味を覚えるなんて時代でもない。飲みたいものを自ら選んでいくいま、焼酎に興味を持ってもらうためには、ぐっとハードルを下げた間口を用意することが大事なのではないでしょうか。そういう意味で今回のアレンジは一つの入口になったはず。インフルエンサーの方々が紹介してくれたこともあって、実際に若い世代、特に女性グループの来店が増えました。どんなかたちであれ、焼酎を飲む母数が増えれば、そのうちの数%は焼酎にハマる人が必ずいる。IMO ROCKに来るうちに焼酎にハマって、スタッフより詳しくなった若いお客さまもいます。
--鹿児島県内で16店舗の飲食店を経営されている西さんは、若い世代だけではなく、さまざまな世代に焼酎の魅力を伝えるうえで心がけていることはありますか?
西 心がけているのは常に楽しく発信を続けること。飲食店は性質上、お客さまがいらっしゃるのを待って食事を提供する、と受け身になってしまいがちです。より自由度が高く、さまざまな層の方に発信できるよう、積極的にイベントを開催したり音楽フェスに参加したりしています。こちらが能動的に働きかければ、お客さまにも興味を持ってもらえる。一人ではなかなかできないことでもあるので、チーム一丸となって取り組んでいます。
--最後に吉満さん、今回の取り組みの感想をお聞かせください!
吉満 焼酎を伝えることの難しさ、面白さがわかるプロジェクトでした。焼酎をつくるのが一筋縄ではいかないように、伝えることだってそんなに簡単なことではないなと感じました。それでも「美味しい!」と言ってくれた時の喜びはひとしお。貴重な機会をいただき本当にありがとうございました!
「綾紫トロピカルサワー」は夏限定ですが、「黒糖ブルーハワイボール」は今後も販売継続する予定だそう。西さん、吉満さんともに「これからも新しいアレンジを考えていきたい!」と大張り切り。今後の展開にも要注目です!
IMO ROCK |
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住所 鹿児島県 鹿児島市中央町20−11 ole de solaビル1F (中央バルステーション) 営業時間 金曜〜日曜:11時~03時、火曜〜木曜:11時〜23時 定休日 月曜 公式Instagram → WEB → *焼酎アレンジの提供については、店舗までお問い合わせください。 |