熱狂のサッカーW杯も幕を閉じ、気づけば年の瀬に迫った2022年。思い返せば、SHOCHU NEXTでも蔵元や飲食店、酒店とさまざまな焼酎に出会ってきました。そこで今回は、SHOCHU NEXT編集部が2022年の焼酎界を総ざらい! どんな焼酎がブレイクしたか、焼酎市場に今どんな変化が起きているのか……今年出会った焼酎にまつわる出来事を、編集部6人で振り返ってみました!
香り系から個性派まで、「わかりやすい味わい」の焼酎が人気急上昇!
2022年を振り返ると、焼酎シーンでも色々な出来事がありましたね。みなさんが注目したキーワードはなんでしょう?
どの焼酎にも個性的な香りがあるので、適切な表現ではないのですが、あえてトレンドに合わせて言うならば、やっぱり「香り系」ですかね。国分酒造の〈フラミンゴオレンジ〉を筆頭に以前から人気はありましたが、今年になって急上昇したように感じます。海外輸出の観点からみても、人気が高まっています。中国だと〈だいやめ〉が爆発的に売上を伸ばしているそうです。
今年はあちこちの蔵が香り系の芋焼酎を作り出していたのが印象的でした。ひとえに香り系焼酎といっても、どれも味わいが違って面白い。国内外のコンクールでも、香り系焼酎がトップにランクインしたのがその証拠だと思います。
フランスのコンクール「Kura Master 2022」の最高賞は、さつま無双の〈乙女桜〉、「酒屋が選ぶ焼酎大賞」の芋焼酎部門は、若潮酒造の〈GLOW EP05〉が大賞を受賞しました。どちらもフルーティな香りの芋焼酎ですね。
香り系の芋焼酎が増えた理由は、人気の高まりもあると思いますが、さつまいも基腐病の影響も大きいのではないでしょうか。これまで黄金千貫が主流だったけれど、基腐病の流行で収穫量ががくんと落ちてしまった。他の品種を使った焼酎づくりにチャレンジする蔵が増えたことで、バラエティ豊かな銘柄が増えたのだと思います。
豊永酒造の米焼酎ベースの〈カルダモン TAKE7〉や、知覧醸造の〈知覧Tea酎〉といった、個性的な焼酎が昨年に増して注目されたのも今年のハイライトかな。
飲食店でも見かける回数がぐんと増えましたよね! 香り系も含め、良い意味で焼酎らしくない味わいが、焼酎の間口を広げてくれているのだと思います。
特徴のある焼酎でいえば、天星酒造の麦焼酎〈麦ほっか〉がアメリカで人気が出ているそうです。焙煎麦を使うことで、はっきりした麦チョコ感がある。ウイスキーでも味わえない風味だからこそ支持を得ているのでしょうね。その人気もあってか、鹿児島県内でもなかなか買えないんですよ(笑)
個性的な味わいの銘柄は、海外の方にも届きやすいのがポイントですね。輸出するとどうしても高くならざるをえないので、どうせ飲むならと、特徴のない味わいのものよりはインパクトのあるものが好まれています。
飲み手側からすると、焼酎かどうかはあまり気にせず、自分の好みの味のお酒だから飲むという気持ちのほうが強いのだと思います。SNSの投稿などを見ても、「焼酎が好き」ではなく、「〈カルダモン TAKE7〉が好き」と、特定の銘柄にフォーカスしている人が多い。特徴がはっきりした焼酎がさらに増えていくのではないでしょうか。
2022年のコロナ禍で焼酎業界はどう変化した?
コロナの影響で中止が多かった焼酎関連のイベントも、今年は少しずつ再開し始めました。まだまだコロナ以前と同じようにはいかないけれど、活気が戻ってきたなと。
居酒屋で飲むことも増えましたもんね。海外では何か変化を感じましたか?
しばらくフィリピンに滞在していますが、東アジア圏では、コロナの影響でマーケットが少しずつ変わってきた気がします。変化の一つは、家飲みの増加。コロナを機に国内でも家飲み需要が増えましたが、国外でも同じ現象が起きています。レストランではなかなか手が出ない高級銘柄も、小売りの値段であれば買いやすい。家飲み需要が増えることで、結果的に手頃なものよりも高価格のものの方が売れるようになってきました。
先日韓国に行った時にも感じました。ロックダウンや時短で飲食店で飲む時間が減った結果、短い時間で良いものを飲もうと考える人が増えているそうです。
そういえば、最近はウェブサイトをリニューアルした蔵元が多かったような。ECを運営しているところも増えたのは、やっぱり家飲み需要なのでしょうか。
家飲み需要に対応するために、ECの運営を始めた蔵も多いはず。一方で、焼酎ビギナーの方はなかなか蔵のECまで辿り着かないケースもありますよね。どんな焼酎が飲みたいかわからない時は、やっぱり酒店で聞くのが一番。自社ECと酒販店、それぞれの良さを考えながら焼酎を伝えていくことが求められていると思います。
コロナと直接は関係ないかもしれませんが、ここ数年で健康志向が高まっていることは、焼酎にとって間違いなくアドバンテージ。積極的にアピールするポイントの一つだと思います。
海外では、日本の商品に対するイメージと言えば「ヘルシー」と考える人も多いので、焼酎は確実にフィットすると思うんですよね。
SHOCHU NEXTでも健康に関する話はかなり掘り下げました。やっぱり、糖質・プリン体ゼロでこんなに味が深いってすごいことです!
焼酎を広める一手は、「飲み方を伝えること」にある!
今年はオリジナリティ溢れる飲食店にも多く出会いました。印象的だったのは、どのお店も飲み方を工夫していること。特に若いお客さんが多い場所は、かなり飲み方に気を使っているように思います。
確かに、ワイングラスでハイボールを出したり、コーヒー豆を漬けた焼酎ラテだったり、お店ごとに趣向を凝らしていましたね。共通しているのは、バーで出る本格的なカクテルよりも、お茶割りや炭酸割りなど自宅でトライできるものが多いこと。焼酎を飲み慣れない人でも肩肘張らずに楽しめる。また飲みたいなと思わせてくれる気軽さが、焼酎の裾野を広げる肝になりそうです。
飲食店が試行錯誤している裏には、焼酎が抱える「飲み方がわからない」課題があるのかもしれませんね。鹿児島女子会を開催した時も、鹿児島の若い人たちが焼酎を飲んでいない衝撃もさることながら、好き嫌いの前に、どうやって飲んだらいいか伝わっていないことが大きな壁なのだなと痛感しました。
SHOCHU NEXTでは創刊当初から「熟成焼酎ハイボール連載」を続けているものの、「焼酎は水割りかお湯割り!」のイメージはまだまだ根強いなあと感じます。実際はどれくらい変わってきているのでしょうか?
じつは、炭酸割りが邪道中の邪道だった鹿児島で、焼酎ハイボールが市民権を獲得しているんです。焼酎に力を入れている飲食店はほとんど炭酸割りがメニューにあるんじゃないかな。以前記事でも紹介した熟成焼酎ハイボール缶を筆頭に、RTD(Ready to Drink: すぐに飲めるお酒)商品が出ていることからも、世間でかなり焼酎ハイボールが注目され始めたなと実感しています。
海外でもこれまでハイボールは通用しないとされていましたが、ここ数年で浸透しているそうですよ。今はまだウイスキーのハイボールが認知され始めた段階ですが、焼酎も「炭酸割りに合う蒸留酒」として張り合える可能性は大いにあると思います。これまでタブーとされてきた飲み方が、喜ばれる時代になってきているのだと思います。
一つの飲み方に縛られず、それぞれの焼酎に合う飲み方が提案できるようになるのが理想ですよね。
香り系焼酎や炭酸割りはもちろん飲みやすくて焼酎の導入には最適だけれど、せっかくこんなに味のバラエティがあるのだから、いろんな焼酎を飲んでもらいたい! そのためには、焼酎は自由に飲んでいいお酒だということをこまめに伝えていくのが大事なのだと思います。
圧倒的人気を博した香り系焼酎に、進化する飲み方と、若者から海外の飲み手まで心を掴み始めている焼酎。さあ、2023年は一体どんな焼酎が待っているのか! 来年もますます見逃せません!